宇都を筆頭に独自色を持った個性派たち
HCに聞く、○○はうちがNo.1 富山編

「個性的な選手がバランスよく集まっている」

チームの大黒柱である宇都直輝を中心に個性的な選手がそろう
チームの大黒柱である宇都直輝を中心に個性的な選手がそろう【(C)B.LEAGUE】

 過去2シーズン、富山グラウジーズは残留プレーオフを経験。昨季はB2熊本ヴォルターズとの入替戦に88−85で競り勝ち、なんとかB1残留を果たしている。このリーグ下位の状況を抜け出し、チャンピオンシップ(CS)出場を狙えるチームを目指し、このオフは積極的な強化を実施した。大黒柱であるポイントガードの宇都直輝の残留に加え、外国籍選手ではゴール下で圧倒的な存在感を見せる巨漢センターのジョシュア・スミス(京都ハンナリーズ)、阿部友和(千葉ジェッツ)、船生誠也(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)ら、即戦力の補強に成功している。そして、さらに注目したい“新加入”が、指揮官のドナルド・ベックだ。


 昨季途中まで女子WJBLトヨタ自動車のヘッドコーチ(HC)を務めていたベックだが、その前は男子のトヨタ自動車(現・アルバルク東京)で5シーズンにわたって指揮を執っていた。2012ー13シーズンには最優秀コーチ賞を獲得するなど、申し分ない実績の持ち主である。また、ドイツを中心に欧州でのコーチ経験も豊富な名将が、リーグ下位に沈んでいた富山をどう変えていくのか、とても興味深い。


 今回、富山での挑戦を決意した理由として、「男子の世界に戻りたかった。日本でコーチを続けたかった。富山はファンも熱心で、地域もよくサポートしてくれていると聞いている」とベックは言う。


 そして「富山の一番の持ち味を教えてほしい」というこちらの質問に対し、「個性的な選手がバランスよく集まっているところだ」と答える。


「皆さんが知っているように、とても能力の高いポイントガードである宇都、センターのジョシュア(・スミス)は昨季もリーグで素晴らしい活躍をしていて、相手チームにとっては守るのが難しい選手だ。レオ(・ライオンズ)はオールラウンダーで、宇都に加え、水戸(健史)、船生(誠也)と優れたガードがいる」


 このように指揮官は、確固たる武器を持った選手が多い個性豊かなところが、富山の魅力だと強調する。実際、宇都のスピードに乗った高速ドライブは日本人随一の切れ味を誇り、150キロ近い巨漢を生かしたスミスのパワープレーは他にない迫力だ。ライオンズはインサイド、アウトサイドとどこからでも得点できる多才さを持ち、水戸はチームの潤滑油として味方を気持ち良くプレーさせるバランサー。船生は1対1の守備に強さを発揮と、それぞれ独自の色を持っている。

ファンがサポートすることを誇りに思えるチームに

 そして「鍵となるのはいかに賢く、チームとしてプレーできるか」と語るように、この個性をうまく融合させ、質の高いチームプレーを遂行できるかが今季の富山の命運を握る大きなポイントとなる。ただ、指揮官はこうも付け加える。


「多くのチームは、昨年から8人、9人の選手が変わらない。例えばA東京、千葉、川崎(ブレイブサンダース)といった強豪は、基本的にはチームが変わっていない。一緒にプレーする期間が長いのはアドバンテージ。対して富山は8人が新加入選手であり、そこからのチーム作りは簡単なことではない」


 そう語り、新メンバーが多いチームで一体感を作り上げることの難しさも十分に理解している。


 このように、ベックにとって富山でのHCは、Bリーグ誕生以降では初の男子チームの指揮でもあり、いろいろな意味で新しいチャレンジとなる。その中でも、1つ心強い点を挙げるなら、チームの大黒柱である宇都とはトヨタ自動車時代にも師弟関係にあったことだろう。


「トヨタ時代に比べ、宇都は自信を持ち、オフェンスで強気にプレーしている。それに良いリバウンダーであり、守備でも彼のなりたいと思うレベルのディフェンダーにもなれる。オフェンスも引き続き成長してくれるだろう。また、彼はコンディション維持に優れていて、長い時間プレーできる」と厚い信頼を寄せている。


 過去の成績から言って、今季の富山はまず残留プレーオフを回避してのB1残留が第1目標となってくるだろう。その中でもベックは「目標は、可能な限り試合に勝つこと。」と、具体的な目標を設定せず目の前の試合に全力で取り組み、勝利を積み重ねていくことだけに集中する。


 最後に「富山のファンが、サポートしてくれることを誇りに思うチームにしていきたい」と意気込みを語ってくれた指揮官が、個性派集団の富山をどのようにまとめ上げ、旋風を巻き起こせるのか楽しみにしたい。

鈴木栄一

1977年、山梨県生まれ。アメリカ・オレゴン大学ジャーナリズム学部在学中に「NBA新世紀」(ベースボールマガジン社)でライター活動を開始し、現在に到る。毎年、秋から冬にかけて母校オレゴン・ダックスの成績に一喜一憂している。

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