宇都を筆頭に独自色を持った個性派たち HCに聞く、○○はうちがNo.1 富山編
「個性的な選手がバランスよく集まっている」
チームの大黒柱である宇都直輝を中心に個性的な選手がそろう 【(C)B.LEAGUE】
昨季途中まで女子WJBLトヨタ自動車のヘッドコーチ(HC)を務めていたベックだが、その前は男子のトヨタ自動車(現・アルバルク東京)で5シーズンにわたって指揮を執っていた。2012ー13シーズンには最優秀コーチ賞を獲得するなど、申し分ない実績の持ち主である。また、ドイツを中心に欧州でのコーチ経験も豊富な名将が、リーグ下位に沈んでいた富山をどう変えていくのか、とても興味深い。
今回、富山での挑戦を決意した理由として、「男子の世界に戻りたかった。日本でコーチを続けたかった。富山はファンも熱心で、地域もよくサポートしてくれていると聞いている」とベックは言う。
そして「富山の一番の持ち味を教えてほしい」というこちらの質問に対し、「個性的な選手がバランスよく集まっているところだ」と答える。
「皆さんが知っているように、とても能力の高いポイントガードである宇都、センターのジョシュア(・スミス)は昨季もリーグで素晴らしい活躍をしていて、相手チームにとっては守るのが難しい選手だ。レオ(・ライオンズ)はオールラウンダーで、宇都に加え、水戸(健史)、船生(誠也)と優れたガードがいる」
このように指揮官は、確固たる武器を持った選手が多い個性豊かなところが、富山の魅力だと強調する。実際、宇都のスピードに乗った高速ドライブは日本人随一の切れ味を誇り、150キロ近い巨漢を生かしたスミスのパワープレーは他にない迫力だ。ライオンズはインサイド、アウトサイドとどこからでも得点できる多才さを持ち、水戸はチームの潤滑油として味方を気持ち良くプレーさせるバランサー。船生は1対1の守備に強さを発揮と、それぞれ独自の色を持っている。
ファンがサポートすることを誇りに思えるチームに
「多くのチームは、昨年から8人、9人の選手が変わらない。例えばA東京、千葉、川崎(ブレイブサンダース)といった強豪は、基本的にはチームが変わっていない。一緒にプレーする期間が長いのはアドバンテージ。対して富山は8人が新加入選手であり、そこからのチーム作りは簡単なことではない」
そう語り、新メンバーが多いチームで一体感を作り上げることの難しさも十分に理解している。
このように、ベックにとって富山でのHCは、Bリーグ誕生以降では初の男子チームの指揮でもあり、いろいろな意味で新しいチャレンジとなる。その中でも、1つ心強い点を挙げるなら、チームの大黒柱である宇都とはトヨタ自動車時代にも師弟関係にあったことだろう。
「トヨタ時代に比べ、宇都は自信を持ち、オフェンスで強気にプレーしている。それに良いリバウンダーであり、守備でも彼のなりたいと思うレベルのディフェンダーにもなれる。オフェンスも引き続き成長してくれるだろう。また、彼はコンディション維持に優れていて、長い時間プレーできる」と厚い信頼を寄せている。
過去の成績から言って、今季の富山はまず残留プレーオフを回避してのB1残留が第1目標となってくるだろう。その中でもベックは「目標は、可能な限り試合に勝つこと。」と、具体的な目標を設定せず目の前の試合に全力で取り組み、勝利を積み重ねていくことだけに集中する。
最後に「富山のファンが、サポートしてくれることを誇りに思うチームにしていきたい」と意気込みを語ってくれた指揮官が、個性派集団の富山をどのようにまとめ上げ、旋風を巻き起こせるのか楽しみにしたい。