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大谷翔平に手術を決断させた心境
「一番いいものを選んだ」と前向き

熱唱から2日後に手術を決断

10月上旬にトミー・ジョン手術を受けることを発表した大谷
10月上旬にトミー・ジョン手術を受けることを発表した大谷【Photo by Masterpress/Getty Images】

 現地時間23日のデーゲームを終え、エンゼルスはヒューストンから地元アナハイムへ戻ることになっていた。


 シーズン最後の移動のときは、新人に仮装をさせるのが悪しき大リーグの慣習。昨年から労使協定によって女装は禁止されたが、仮装そのものが禁止されたわけではない。試合後、大谷翔平もその洗礼を受けるのかと、クラブハウスで様子をうかがっていたが、一向にその気配がなかった。


 通常、ルーキーの私服は試合中に消え、代わりにコスチュームがロッカーにかかっているので、「あぁ、その日か」と分かるが、そもそも他の新人の多くは、すでに私服に着替え、クラブハウスを後にしている。


 慣習とはいえ、パワハラともみなされかねない。昨今の風潮に配慮したかと思われたが――いやいや、形を変え、儀式は健在だった。


 空港へ向かうバスの中、大谷は、ジャスティン・ビーバーもカバーしたヒット曲「デスパシート」を日本語で熱唱した。しかも、一番際どいパートを……。


 そのことは翌日、さまざまな形で報じられ、そこだけを切り取ると、ほのぼのとした大リーグの1シーンが伝わってくるが、ほどなく現実に引き戻されることになる。


 9月4日以降、休むことなくスタメンに名を連ねている大谷は、すっかりそれが日常となっていたものの、「デスパシート」の熱唱から2日後、チームは大谷が痛めている靭帯の再建手術(通称:トミー・ジョン手術)を受けると発表した。


 そう、大谷は9月5日の検査で靭帯に新たな損傷が見つかり、チームドクターからは、手術を勧められていたのだった。


 あれからおよそ3週間。大谷は手術を回避する選択肢も含めてさまざまな検討を重ね、こんな結論に至ったそうだ。


「(手術を)しないならしないに越したことはない。それで自分の100%が出せるならやらない方がいいけど、そうではないと思った。あらゆる可能性を探しながら、一番いいものを選ぼうと思った」

手術に関するメリット、デメリット

 果たして、どんなシナリオが検討されたのか。大谷が具体的に明かすことはなかったものの、以下に想定されるメリットとデメリットをまとめた。


■手術をする場合のメリット


・手術そのものの成功率は高い

・復帰を2020年開幕と想定すれば、18カ月という十分なリハビリ期間がある

・リハビリを通して投球フォームなどの根本的な見直しが可能

・ヒジの不安、痛みからの開放

・無意識にヒジをかばうことで、肩を痛める可能性もあり、そのリスクを回避

・球速が上がるケースあり

・指名打者としては来季開幕から出場可能? 不在が最低限に抑えられる


■手術をする場合のデメリット


・手術後、以前と同じようなパフォーマンスが出来る可能性は67%(1999年〜11年、147投手を対象。米スポーツ有線局『ESPN』調べ)。20%は復帰できず。

・4シームの平均球速は91.2マイルから90.8マイルにわずかにダウン(同ESPN調べ)

・投手としてのリハビリをこなしながら、指名打者として出場できるのか

・手術した靭帯を打撃で痛めることはないのか


■手術を回避した場合のメリット


・高い確率で、来季の登板も可能

・力を入れない投げ方などを模索することで、再発のリスク軽減

・指名打者としての出場に制限はかからない

・フォームの改善にすぐにでも取り組める


■手術を回避した場合のデメリット


・再発のリスクあり。来季途中で手術に踏み切る場合、2020年も棒に振る可能性あり

・仮に靭帯を断裂すれば、その時点で打撃も続けられなくなる

・力を入れなければ球速の低下は避けられない。投球スタイルの変更が求められる?

・無意識にヒジをかばい、肩などに影響も


 さて、まだまだ他にも考えられそうだが、25日の試合後に大谷が語った中では、「ここで1回、リハビリを含めて、もう1度一からやりたいと思っている」と口にしたのが印象的。


 子供の頃から投げ続けてきた。痛みが出たのは今回だけではない。リセットが必要だと考えたのかもしれない。

丹羽政善

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米し、インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行っているほか、NHK BS−1で放送されている「ワールドスポーツMLB」にも出演している。

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