大谷翔平に手術を決断させた心境 「一番いいものを選んだ」と前向き

丹羽政善

ダルビッシュを支えた手術の経験

大谷は「高い確率で、今、またはそれ以上の状態にはなれると言われている。そこをイメージしながら、いきたい」とポジティブに手術を受け止めている 【Photo by Masterpress/Getty Images】

 後は、どうリハビリをどう捉えるか。

 そう思い至ったとき、ダルビッシュ有(カブス)の言葉を思い出した。15年3月にトミー・ジョン手術を受けたダルビッシュが、こんな話をしていた。

「自分でやりたいこと、栄養の勉強だとか、体を変えるとか、そういうことが出来る時間。これは自分にとって大きなこと。逆にチャンス」

 1年が経ったとき、こう実感した。

「自分の知識がすごい増えた。あのまま普通に1年間野球をやっていたら、ここまで進めたと思えない」

 そのダルビッシュは今年、不本意なシーズンを送ったが、来季のキャンプには再び万全の状態で臨めるという。あのときの経験は、確実に今のダルビッシュを支えている。もちろん、手術したことに後悔はない。

 では、大谷は、投げられない時間をどう使うか。早ければ来年の開幕から指名打者で出場する可能性もあるので、その分、ダルビッシュら、トミー・ジョン手術を受けた投手とは時間の使い方が異なるが、ダルビッシュも言っていたように、チャンスと捉えられるかどうかは、本人次第。

「高い確率で、今、またはそれ以上の状態にはなれると言われている。そこをイメージしながら、いきたい」

 今の自分を超えてみたい。その先にあるのは、どんな世界なのか――。

 大谷の決断は、ダルビッシュ同様、どこまでもポジティブだ。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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