向上心を忘れない「チーム全員」が強み HCに聞く、○○はうちがNo.1 A東京編

大島和人

「No.1」要素をいくつも持つ優勝チーム

A東京は「No.1」と胸を張れる要素がいくつもある強豪チームだ 【(C)B.LEAGUE】

 アルバルク東京は2017−18シーズンのNo.1クラブだ。

 ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチ(HC)の就任1年目で、A東京はB1リーグのチャンピオンとなっている。強豪ぞろいの東地区に所属しながら、レギュラシーズンの失点数は1試合平均71.1と琉球ゴールデンキングスに次ぐ少なさ。攻撃でも、ターンオーバーの数はB1最小だ。つまり、A東京は「No.1」と胸を張れる要素がいくつもあるチームなのだ。

 ルカHCは言う。「強いてNo.1を選ぶならチーム全員です。オフェンスでもディフェンスでも、しっかり選べる選手をピックアップしました。それが強みだと思っています。向上心の高い選手たちがいて、上を目指す姿勢で日々取り組んでくれている。そのほかにもいっぱいありますけれど、選手のセレクションが最大の売りです」

 A東京には田中大貴、竹内譲次、アレックス・カークと、Bリーグを代表する人材がいる。ただし、ルカHCが言う「チーム全員」「選手のセレクション」にはもう少し深い意味合いがあった。モンテネグロ出身、セルビア国籍の名将は言う。

「(セレクションは)カルチャー、ケミストリーも踏まえてです。ハードワークをこなす集団ですし、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)してシェアもします。それぞれが、チーム優先でやってくれています。そのような文化、チームスピリットは個人個人の選手がいるから出来上がっています」

スタンダードを保ち、最低限の基準レベルを上げる

 今季の新加入選手はミルコ・ビエリツァのみ。ペリメーター陣(ポイントガード=PG、シューティングガード=SG、スモールフォワード=SF)は完全に昨季と同じ陣容だ。指揮官はこう説明する。

「昨年は(安藤)誓哉、(小島)元基、(馬場)雄大が加入して、ザック・バランスキーがパワーフォワード(PF)からSFに移りました。つまり昨年はペリメーター6人のうち4枚がガラッと入れ替わって、残った主力選手は(田中)大貴だけでした。まだ良くなるはずですし、優勝という結果も残しました。HCとしては変える必要がないと思ったし、変えずにレベルを上げようという考えです」

 ただし、連覇に対して楽観はしていない。ルカHCはこう述べる。

「優勝は目標ですけれど、そこに辿り着くことは容易ではありませんし、そこまでのステップが大切です。結果はともあれ、スタンダードを保ち、最低限の基準レベルを上げる。そうすれば必ずチャンスは生まれます。

 現段階はまずそこにこだわってやってほしい。長いシーズンですし、オンザコートのルールも変わりました。新しいルールでは、帰化選手がいるチームにアドバンテージがあると思います。川崎ブレイブサンダース、千葉ジェッツ、琉球ゴールデンキングス、シーホース三河には、優秀な帰化選手がいます」

 日本人ビッグマンの竹内譲次は外国籍選手、帰化選手に引けを取らない能力の持ち主だが、A東京はロースター(登録選手)に帰化選手が不在。昨季は外国籍選手、竹内の計4枚で回していたインサイド(PF、センター)のローテーションを、今季のA東京は3枚で回すことになる。そこが若干の不安材料であることは、彼も認めていた。

「ファンの皆さんもビルドアップしている」

A東京は「チーム全員」と、それを支えるファンが一体になって、Bリーグ連覇へ挑もうとしている 【(C)B.LEAGUE】

 チーム全員で大きな成長を見せているA東京だが、コート外のサポートも進化している。ルカHCにファンへのメッセージをお願いすると、チームについて語っているとき以上に、熱を帯びた言葉が返ってきた。

「昨季、アリーナの移転は大きなチャレンジだったと思いますが、立川のアリーナでもお客さんが入っていますし、良い試合を見せられています。チームと同じように、周りのファンの皆さんもビルドアップしているのは間違いありません。今シーズンも同じように、ファンの方に会場へ足を運んでいただいて、チーム全体で戦っていきたい」

 A東京は「チーム全員」と、それを支えるファンが一体になって、Bリーグ連覇へ挑もうとしている。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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