「日本一を目指す思い」なら負けない HCに聞く、○○はうちがNo.1 仙台編
人員の大幅入れ替えで新体制に
金沢から新加入の月野雅人(写真)など大きく選手が入れ替わった仙台 【(C)B.LEAGUE】
まず現状については、「富山戦を経験し、勝つことはそんなに簡単ではないとあらためて感じました。うちは優位に立って戦っている時はすごく力を発揮するものの、劣勢になると気持ちが引けてしまう」と振り返った。
「そんな時こそ自信を持ち、自分たちのプレーをやり続けることが大事。もっと我慢強さが身に付けば、拾えるゲームが増えるはずです」
一方で、完勝したプレシーズンの山形ワイヴァンズ戦(88−60)など、手応えを感じた場面もあったはずだ。
「ディフェンスからの速攻で点を取る勢い、爆発力がチームの持ち味です。足が動く選手が多いので、ディフェンススピードが速く、プレッシャーもしっかりかけられる」
桶谷HCが就任当初から掲げている“堅守速攻”のバスケットが、形になってきたようだ。
フロントからスタッフまで一丸の組織力
「つまりは『組織力』。今はまだ日本一とは言えないだろうけれど、それを目指す熱い思いは負けません」
渡辺太郎社長を中心に、デービッド・ホルトン代表、GMの志村雄彦、シニアGMのマーティー・キーナートらのフロント陣をはじめ、スタッフや選手までが強く団結しようとしているという。
新体制下でのいくつかの新しいチャレンジは、その思いの表れだろう。まず外国籍選手のスカウティングには、短期契約を結んでNBAの現スカウトを加えた。スカウトは選手やゲームの評価法などのレクチャーも受けたという。また日本生活20年以上の経験を持つ、元楽天ゴールデンイーグルスGMのキーナート氏が、外国籍選手のケアにあたるというのも初の試みだ。
さらにチームは8月、創設後初めてのキャンプを3泊4日で敢行。東日本大震災で被害の大きかった南三陸町をキャンプ地に選び、震災の語り部から話を聞くなどして、被災地・宮城県のチームとしての存在意義を確認した。さらには元格闘家の三崎和雄氏を招き、精神修養に関する講話も聞いた。トレーニングや講義に加え、同じ釜の飯を食べて語り合えば、チームの結束力や組織力は自ずと向上していくものだろう。
「この組織を助けてくれる外部の方々もたくさんいるし、社長をはじめ社員がはつらつと仕事をしている。こうしたいい環境でバスケットができるケースはそうありません。選手たちもその一端を担い、誇りを持たなければ……」
クラブは「1年でB1昇格、5年後にリーグ制覇」という大きな目標を掲げた。スローガンは「GRIND(グラインド)」。意訳すると「泥くさくコツコツと努力し続ける」となる。
「僕たちは目標達成のために呼ばれたのだから、成し遂げるのが仕事。スローガン通りにやり続けるしかありません」
それでも現実的に今季を展望すれば、「序盤は簡単には勝てないでしょう。実戦で力をつけながら、中盤からスパートをかけるつもり」だという。開幕直後は強豪との対戦が続くため、戦いながらチーム力を磨こうという狙いだ。そして「観戦した人が、もう1回来たいと思ってくれるようなバスケットを目指します」と続ける。観客の中には初めて来る人、年に1回しか来られない人もいる。
「再度来てもらうためには、常に100パーセントの力を出し切ること。逃げずに、あきらめずにやりきることです。被災地に拠点を持つクラブとして、この『思い』を必ず伝えていきます」
指揮官は、静かな闘志を秘めて言い切った。