「若さ」という可能性を進化につなげる HCに聞く、○○はうちがNo.1 青森編

大島和人

23歳・門馬のキャプテン就任は「決めていた」

登録選手の全員が20代。青森ワッツの強みは「若さと気持ちの強さ」 【(C)B.LEAGUE】

 青森ワッツにとって、2017−18シーズンは苦しい日々だった。開幕からいきなり8連敗を喫し、2月末には佐藤信長前ヘッドコーチ(HC)の契約が解除された。その後は、やや調子を戻したものの、18勝42敗と東地区5位でシーズンを終えている。

 北谷稔行アソシエイトヘッドコーチ(AHC)は「昨シーズンの悔しさを1日も忘れたことはないし、選手にもずっとそれを言い続けている」と口にする。(※編注:アソシエイトヘッドコーチとは、リクルーティングや戦略構想にも携わり、選手やチームスタッフをまとめる役割)

 指揮官が口にする青森のナンバーワンは「若さと気持ちの強さ」だ。チームの登録選手は全員が20代。PGの會田圭佑は23才で、SG/SFの門馬圭二郎は23歳、SFの菅俊男は24歳と大卒1、2年目の主力も多い。

 北谷AHCはこう述べる。
「単純に自分が欲しい選手、DFが良くて走れる選手を選んだら、たまたま若くなったということです。ベテラン選手にも声を掛けていたんですけれど、断られたり……」

 彼は若手選手特有の経験不足を否定しつつ、そのメリットをこう話す。
「20代後半の選手よりプレータイムはいっぱいもらっているので、経験はそれよりあると思っています。若いメンバーがそろった分、すごく仲が良いし、バチバチやり合っている。ベテランだからと遠慮することもありません」

 門馬は1994年11月生まれの23歳で、昨シーズンは全試合に出場している。チームには年長の選手もいるが、今季のキャプテンに指名された。北谷AHCは選出の理由をこう説明する。

「門馬よりも年上の選手を取ろうともしましたけれど、それでも門馬をキャプテンにしようと決めていました。大学でキャプテンをやっていたこともあります。昨シーズンも別のキャプテンはいましたが、門馬がキャプテンのようにチームを引っ張っていた。『嫌われてもいい』という姿勢で、言うことをちゃんと言うし、(チームに)残ってくれるなら門馬にしようと思っていました」

“反骨心”をもって新シーズンを戦う青森

 チーム戦術では、守備を強調している。

「DFの練習ばかりしています。昨シーズンは(B2の)18チーム中、もっとも失点の多いチームでした。DFとリバウンドをしっかりやれば、点数が入らなくても大差はつきません。DFをしっかりやることでカット、スティールからレイアップに持ち込める。今はヘルプポジションを徹底して練習しています。昨シーズンに比べるとずっといいし、言い続けることで、練習ではできなかった選手が、試合でできているようなこともあります」(北谷AHC)

 しっかりした守備、そしてリバウンドからの速攻が青森の意図する形となる。9月上旬のアーリーカップ東北では、日本人選手がよくリバウンドを取っていたが、それも狙い通り。指揮官は「理想は外国籍選手がしっかりボックスアウトして相手を抑えて、日本人が取ることです。ガードが取ったら、そのままブレイクにつながる」と説明する。

 現時点での最年長選手は28歳のユリアス・ユツィカス。「J」の愛称を持つリトアニア人センターだ。北谷AHCによると「18歳からバスケを始めて、まだ10年しか経っていない」という“のびしろ”を残した選手でもある。地味ながらゴール下で体を張るプレーが持ち味で、青森が目指すスタイルにもフィットするだろう。

 北谷AHCは「ミスしてもすぐ戻るし、そういう選手がすごく欲しかった。点数を取りたい外国籍選手が多いですけれど、彼は文句を言わず、こちらが指示したことをやってくれる」と高く評価している。

 新シーズンに向け、北谷AHCは“反骨心”をこう口にする。

「昨シーズンは結果が出なくて、周りから下に見られている部分もあると思います。でも自分たち自身が変わらないと、他のチームを見返すことができない。まずは、しっかり自分たちのバスケをやることが大切だし、そうすることで勝利が近づく。不安はあるけれど、楽しみの方が多いです」

 若さは「可能性」でもある。守備のテコ入れで、生まれ変わりつつある青森の進化に期待したい。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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