自分たちの「やるべきバスケ」を貫く HCに聞く、○○はうちがNo.1 秋田編

小松田直嗣

今季は強豪ひしめく「東地区」で戦うことに

秋田はペップHCの下、昨年のB2で勝率9割という驚異的な成績を残した 【(C)B.LEAGUE】

 秋田ノーザンハピネッツのジョゼップ・クラロスヘッドコーチ(HC)は「ペップ」の愛称でブースターに親しまれている。降格から1年でB1復帰を果たした指揮官が「リーグNo.1」だと挙げたのは、「アグレッシブさ」。B2で戦った昨シーズンは、1試合を通してオールコートのマンツーマンディフェンスを展開、相手に激しく詰め寄ってボールを奪い、速攻につなげるスタイルで、54勝6敗、勝率9割という驚異的な成績を残した。

 1人1人が常に手足を動かし続け、チームとして連動するような特徴的なディフェンスは、昨季B2で断トツのスティール数と、相手チームのターンオーバー数に表れた。今シーズンも「アグレッシブさで負けてはいけないと思っている」と言葉に力を込める。

 就任2年目の今季は、B1の中でも強豪ひしめく東地区で戦う。

 昨季と今季のチャンピオンシップを制した栃木ブレックスとアルバルク東京、天皇杯を連覇中の千葉ジェッツなど、日本代表クラスの選手を複数擁する格上クラブと幾度もぶつかることになるが、ペップHCは「相手がどこでも、自分たちのやるべきバスケットをし続け、向こうに合わせるようなことはしない。どんな試合も1つのコート、1つのボール、2つのゴール、そして5人の選手で行われる。何も変える必要はない」と言い切る。

中2日の過密日程が予想されるが……

 今シーズンは、さまざまなレギュレーション変更の下で迎える。特に外国籍選手のオンザコートルール変更は影響が大きいとみられる。ベンチ登録は2人まで、出場は全クオーターを通じて2人まで可能となった。ペップHCは「ほぼ全てのチームが外国籍選手2人を先発で使うだろう。試合の進み方が変わる」と話す。

 昨シーズンは、オンザコート2の時間帯で外国籍選手は1人、または0人で戦うこともあった。「日本人も外国人も同じ選手。平等に扱う」というポリシーを実践し、ミスマッチを恐れない采配は、外国籍選手を日本人選手が守る場面を増やした。昨季は白濱僚祐や中山拓哉が20センチ以上身長の高い相手をアグレッシブなディフェンスで苦しめ、ホームゲーム会場を沸かせた。今季もこの方針を貫く。

 また、試合日程では平日開催が増えた。中2日で多くのゲームをこなすことになり、特にディフェンスで高い運動量と強度を求める秋田のスタイルでは、選手の負担増が見込まれる。しかしペップHCは、ベンチ登録の選手を毎試合ほぼ全員出場させる分、各選手のプレータイムをシェアし、疲労をなるべく残さないようコントロールしている点を強調。「過密日程は自分たちだけでなく、他のチームも同じ状況。やってみなければ分からない」と語る。

「若さは強みにもなるが、弱みにもなる」

経験豊富なペップHCの下、秋田は東地区の「台風の目」となれるか 【(C)B.LEAGUE】

 地元出身でチームの顔だった田口成浩が千葉ジェッツへ移籍し、昨シーズンから7人が入れ替わった。新加入選手の大半が、B2で戦った相手チームからの補強。残った選手も含め、平均年齢は26.8歳とB1で最も若い。

 ペップHCは「若さは強みにもなるが、弱みにもなる。B1でのプレー経験がある選手も少ない」としつつも「自分たちは、やろうとしているバスケットに向かって常に努力する。これに尽きる」と話し、理想とするディフェンスシステムの深化に力を注ぐ。

 9月7〜9日にかけて行われた東北アーリーカップでは、決勝でB2の仙台89ERSに敗れ、開幕に向けて不安を残した。「完成度が低い」と苦い表情を見せながら「ケミストリーは徐々に良くなっている。成長の段階だ」とチームののびしろに手応えも感じている。

「開幕までまだ時間はある。コミュニケーションを深め、チームとして前進していきたい」

 ペップHCは20年以上の指導歴で築いた自らのスタイルに絶対の自信を持つ。経験豊富な指揮官が率いる秋田が、激戦の東地区で「台風の目」になる。

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著者プロフィール

1984年、秋田県横手市雄物川町生まれ。大学卒業後の2007年、秋田魁(さきがけ)新報社に記者として入社し、文化部、社会部、大館支社などを経て、16年4月から主にバスケットボールと秋田ノーザンハピネッツの担当記者を務める。旧bjリーグ最後のシーズンから、Bリーグ初年度のB2降格、2季目のB1復帰までを地元紙・秋田魁新報で詳報した。

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