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インドネシア史上最大の野球の祭典
アジア大会を通して見た現地の野球事情
アジア大会の野球はラワマングン球場(写真)とゲロラ・ブン・カルノ球場で行われた
アジア大会の野球はラワマングン球場(写真)とゲロラ・ブン・カルノ球場で行われた【阿佐智】

 インドネシアで行われていたアジア大会が終わった。東京五輪への前哨戦と位置づけられたこの大会では、スポーツファンの注目は主に水泳、陸上に集まっていたと思うが、日本のお家芸である野球競技も行われていた。


 毎回このアジア大会には、社会人で構成される代表チームが派遣されている。注目度は高くはなかったが、野球が東京以後も五輪競技として存続していくためには世界的普及が必須であるという点において、この大会の重要性は決して低くはない。


 出場したのは、日本、韓国、チャイニーズタイペイ(台湾)、中国の「4強」に加え、西アジアの雄・パキスタンにスリランカ、香港、タイ、初出場のラオス、そして開催国のインドネシアの10チームだった。

インドネシアン・ドリームを目指す選手も

ラワマングン球場で観戦する観客
ラワマングン球場で観戦する観客【阿佐智】

 年々経済発展を遂げる東南アジアにあって、米国生まれの野球は「クールなスポーツ」としてとらえられている。数年前には、米国系企業によるシンガポールのアカデミーの支店がジャカルタに開設された。現実には一般市民にはなかなか普及せず、その後撤退している。インドネシア野球と言っても、実際には、首都ジャカルタにおける競技者の多くは現地在住の日本人と米国人の子弟であり、これに現地人富裕層が加わるという構図である。


「それプラス貧困層が加わります。中間層はいないんですよ」


 こう言うのは長らくこの国で野球普及活動に携わり、代表チームの監督も務めていた野中寿人(かずと)氏だ。人気スポーツのバドミントンやサッカーに比べて底辺が浅いので、野球では比較的簡単にトップに登り詰めることができる。そして国から道具などの支給がある上、ナショナルチームのメンバーになれば、国際大会などで国外に遠征に行けるし、シニアレベルだと「手当」も出る。そういうことから、「インドネシアン・ドリーム」を目指すハングリーな選手も集まっているというのだ。


 野中さんは、今大会に際しては、インドネシア人に任せるべきだと指揮を執ることはなかった。しかし、決してハイレベルとは言えないものの、基礎基本をしっかりたたき込まれたインドネシア代表は、順位決定ラウンドでタイ相手に1勝を挙げ、10チーム中7位に食い込んだ。


 野中氏によると、インドネシアの野球人口は約2万人。首都ジャカルタのあるジャワ島だけでなく、氏が普及活動を始めたバリ島から最大の島カリマンタン島にまで競技者がいるという。これにプラス相当数のソフトボール愛好者がいる。

大会を支えたボランティアたち

選手からもらったサインの入ったペーパークラフトを見せるボランティア
選手からもらったサインの入ったペーパークラフトを見せるボランティア【阿佐智】

 今大会の野球競技は、メイン会場のゲロラ・ブン・カルノ(GBK、地元民は地名をとってスナヤンという)と大学のスポーツ施設であるラワマングンにある野球場で行われた。ともに他競技のスタジアムを改装したもので、元々はGBK内に計3面のスタンドのない野球場とソフトボール場があるだけだった。


 ラワマングンでの取材時、第2ラウンド下位チームによる順位決定戦が行われていた。第1試合の香港対パキスタン戦の観客は30人ほど。試合は高校野球地方大会の1、2回戦レベルとでも言えばいいのではないだろうか。地元インドネシアはこの両国に次ぐ7位で今大会を終えている。


 その試合後、野球ボール型のペーパークラフトを手にしたボランティアの少女が、両チームの選手にサインをねだっていた。第2ラウンドでここで試合をした日本や韓国の選手にもサインをもらったらしい。その少女、ハルヤンティ・プジさんはソフトボールの選手。ボランティアスタッフの多くは、野球やソフトボールの競技者で、この国始まって以来の野球の祭典に胸を躍らせていた。メイン会場のGBKでボールボーイを担当していたユニホーム姿の少年たちは、試合と試合の間には、スタンド横の練習場でキャッチボールをし、各国代表チームがやってくると、その練習ぶりを熱心に見学していた。アジア最高峰の選手たちの姿は彼らに刺激を与えたことは間違いない。

阿佐智

世界180カ国を巡ったライター。野球も世界15カ国で取材。その豊富な経験を生かして『ベースボールマガジン』、『週刊ベースボール』(以上ベースボールマガジン社)、『読む野球』(主婦の友社)などに寄稿している。

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