“二刀流”目指す次世代ホープ・御家瀬緑 アジア大会の経験を夢実現への原動力に

高野祐太

日本女子短距離界の次世代ホープ・御家瀬(みかせ)緑が、アジア大会4×100メートルリレーの1走を務めた 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 インドネシアの首都・ジャカルタで行われているアジア大会で、陸上競技の女子4×100メートルリレーは、日本女子短距離界の現在地を示す結果となった。

 金メダルは優勝候補だった中国を抑えて、42秒73の大会記録でバーレーンが制した。それに2秒以上遅れる44秒93でゴールした日本は5位。大黒柱の福島千里(セイコー)が大会中にアキレスけんの痛みで離脱したこともあるが、世界へ打って出るための最初の関門と言える43秒台というタイムも遠かった。

 日本女子短距離勢は、福島が2010年に100メートルで11秒21の日本新、翌年に福島擁する代表チームが4×100メートルリレーで43秒39の日本新を記録した前後に、世界との差をどこまで縮められるかという熱があった。だが、それ以降は足踏み状態が続き、停滞からの脱出が急務となっている。

 そこに次世代のホープが登場した。今大会の1走に高校2年という若さで抜てきされた御家瀬(みかせ)緑(北海道・恵庭北高)だ。6月の日本選手権(山口・維新みらいふスタジアム)女子100メートルで11秒74(+0.8)の4位に入り、4継リレーのメンバーに滑り込んだ。

最大の強みは中盤以降の加速力

福島(中央)の隣のレーンで走った日本選手権でも、後半の加速で上位3人との差を詰めた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 御家瀬の最大の強みは、中盤以降に伸びて行く加速力だ。福島の右隣で走った日本選手権決勝でもその片鱗(へんりん)を垣間見せた。それは「あまり自分の納得できる走りはできなかった」レースだったのにだ。

 細身で筋力が発達途上の御家瀬は、好スタートを切るための低い姿勢の飛び出しをすると「コケてしまう」ので、序盤からのリードは狙わず、「自分の一番出やすい」高めの姿勢でスタートダッシュを切る。前半型の福島や、レースを制した世古和(CRANE)には後れを取った。しかし中盤以降は、優勝した世古、2位になった福島、3位の市川華菜(ミズノ)の先頭集団を追い詰めている。

 伸びがあった。「うまく足と上半身を連動させ、自然と徐々にストライドも伸びていって、後半も落ちない走り」のイメージで推進力を上げた。指導する中村宏之監督は「重心の真下で効率よく地面をとらえるタイミングが良い」と分析する。その加速力でシニアのトップ選手たちとの差を詰められたのは大きい。

「普段はあまり緊張せず、リラックスして走れるタイプ」だが、「隣に日本記録保持者という存在がいたので、走ってみると意識してしまった」と振り返るように、トップに追いすがった最終盤ともなると、足は後ろに流れ、上体も前のめりにバランスを失った。それでも上位3人と混戦のフィニッシュに持ち込み、3位の市川に0.07秒差で続いた。

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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