アジア大会での喜びと悔しさを力に変えて 明暗分かれた日本フェンシングが進む未来
躍進見せた日本 男子エペ団体は初の金メダル
アジア大会のフェンシング日本代表は女子フルーレ(写真)や男子エペで団体優勝を果たした一方、男子フルーレは準決勝で敗れるなど、種目で明暗が分かれた 【岡本範和】
「リザーブも含めた4人が1つになって、同じ目的に向かって、同じ思いで点数を重ねていく。意味のある勝ち方ができたと思います。誰か1人の力で取ったメダルではなく、チーム全体で取れたメダル。みんなで勝ち取った金メダルだと思っているので、重みが何倍にも感じていますし、東京(五輪)の金(メダル)が、ますますハッキリ見えてきた気がします」
長年、日本フェンシング界で先頭を走って来たのは男子フルーレだ。現在日本協会会長を務める太田雄貴氏が北京五輪の男子フルーレ個人で悲願の銀メダルを獲得し、ロンドン五輪では団体で銀メダル。最重要強化種目であり、実際に結果を残してきたのも男子フルーレだった。
必然的に日本で注目されるのは男子フルーレなのだが、世界に目を向ければそうではない。1000を超える世界ランカーの数が物語るように、最も競技人口が多く、人気が高いのはエペ。フルーレとは異なり攻撃権や有効面がなく、体のどこを突いてもポイントになり、同時に突けば両者に得点が入るエペは最も分かりやすい。日本でもフェンシング人気を高め、確立させるために太田が会長就任後、普及や強化において最も力を注いできたのがエペだった。
偶然ではなく必然 確かな成果を示した
見延(写真)の活躍が刺激となり、エペは選手層が厚みを増してきている 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
選手層が厚みを増し、個々が刺激し合い残した結果が自信につながる。そんな充実した「個」の力が結集し、まさに「チーム」として機能したのがアジア大会だ。団体戦の一番手として登場したのは見延で3−3と引き分ける形で加納へつなぐ。続く山田優(自衛隊)が6−8と2点を先行され2巡目へ。そのままの順番であれば見延なのだが、宇山賢(三菱電機)に代わり、加納で逆転、僅差のリードを保った日本が試合を制し、アジアの頂点に立った。
本当は最後まで自分も出たかった、と苦笑いを浮かべながら、見延は言う。
「試合直前までコーチも作戦は明かさないので誰が出てもいいようにみんなが準備していたし、相性もあります。4人みんなが実力を持っていて、相性でチームを組み変えられる。それがチームの強さなんだと思います」
偶然ではなく必然。男子エペ団体で獲得したアジア大会初の金メダルは、着実にステップアップを遂げてきたことを証明する、確かな成果だった。