五輪代表はW杯のチームと似たコンセプト 森保兼任監督が語る強化プラン<前編>

川端暁彦

W杯のセネガル戦で出た「日本人の良さ」

森保監督は「日本人の良さ」を生かすため、判断の速さと予測能力を身に付けてほしいと語る 【Getty Images】

――W杯ロシア大会のセネガル戦が象徴的だと思っているのですが、1対1で全員が戦い続ける部分と、ゴールシーンでは“日本らしさ”がよく出て最高でした。

 本当にその通りです。1対1でボールがこぼれたら日本が拾えていました。皆がバトルした後にどこにセカンドボールが来るかを賢く予測してプレーする「日本人の良さ」が見えましたし、これは五輪代表でも強調しておきたい部分。単にフィジカルで勝負しても世界では戦っていけないと僕は思っていて、賢く予測し、相手よりも速く動くというところを持って、球際のバトルでもやれるようにしていきたい。

 あの試合は皆がバチバチに(ボールを奪いに)いっていて、まったく遅れをとらず、しつこくいけて相手から嫌がられていました。彼らはセカンドボールの対応にルーズな部分があって、動き出しは日本の方が速かった。世界でも後手にならない試合展開に持っていくには、ああいうところだと思います。もちろん理想は自分たちでボールを握れることでしょうけれど、僕の感覚としてはこぼれ球を拾っているチームは勝率が上がります。そういうところには、あらためてこだわっていきたいと思いました。まあ、そこだけだとなかなか見ている人には喜ばれないかもしれませんが……。

――いやいや、そういう勇気ある戦いぶりこそファンの望みだと思いますよ。あの戦いを受けて若い世代にフィードバックさせたい部分はどういった部分でしょうか?

 結局、これまでも働きかけていたことの延長線上だと思うのですが、バトルするところは持ちつつ、日本人の良さを生かさないといけないですよね。そのためには何より判断の早さ、予測能力を身に付けることだと思います。相手と激しく戦いつつ、予測を持って一歩でも素早く動いて先手を取っていく。その部分は絶対に磨いていってほしいと思います。

良い距離感を持って、攻守ともに人数をかけていく

U−21日本代表はアジア大会で良い距離感を保ったプレーができるか 【Getty Images】

――他には何かありますか。

 W杯の主力組は国内組が1人だけでしたが、海外組の選手たちは目線が同じなんだと思いました。(ロメル・)ルカク、(エデン・)アザール、(ケビン・)デブライネという名前を聞くと、国内でやっている僕らならたじろぐ部分があります。海外組はそうした選手と日常からやっていて、目線が横なんです。意識が対等なんですね。スタッフは情報を分析して選手にフィードバックするのですが、「アイツなら対戦したことある」とか「元チームメートだ」という理由で、選手も相手の特徴が分かっている。海外に行ってレベルアップするというのもあると思いますが、何より「対等にやれるぞ」という感覚を持てるのは大きいと、あらためて感じました。

 そしてそれを、西野さんもあらためて強調したと思います。「日本人はやれるぞ、ボールを握れるぞ」という部分です。ボールを持っている選手が勇気を持ってプレーする。持っていない選手はオフ・ザ・ボールで良いポジションを取ってあげる。それを繰り返しながら、良い距離感を保っていれば日本人はあのプレッシャーの中でもボールを動かせます。勇気を持って動かせばやれるという意識。僕も勉強になりましたし、選手が培ってきた感覚的な部分と(西野監督の狙いが)マッチしたから、ああいった戦いができたのではないでしょうか。

――攻撃の部分では香川真司選手のような個性を使いつつ、小さなスペースを近い距離感を保った複数人で攻略していくスタイルは、あらためて日本人の強みだなと感じました。

 それは本当に思います。ああいうことをやっていければ世界とも戦っていけると思いますし、アジアで引かれた相手に対峙(たいじ)したときも、高い確率で勝利を得られる戦いだったと思います。

――今回のアジア大会のメンバーにも、W杯の映像を見せてということは考えているのでしょうか?

 考えてはいますが、見せるかどうかはまだ分かりません。というのも、まずはトゥーロン国際大会の振り返りが大事だと思いますから。ただ、考えてはいます。U−21日本代表とはシステムも違いますが、やっていたコンセプトとしては似た部分があります。特に良い距離感を持って、攻守ともに人数をかけていくことを大事にするのは同じだと思いますから。そうした部分について、まずは五輪世代のクオリティーをどう上げていくかを考えていきたいですね。

<後編は8月9日掲載予定>

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著者プロフィール

川端暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカー批評』『サッカーマガジンZONE』『月刊ローソンチケット』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。2014年3月に『Jの新人』(東邦出版)を刊行

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