マラソン園田隼「暑いほど分がある」 アジア大会に向け高橋尚子さんが聞く

構成:スポーツナビ

アジア大会男子マラソン日本代表の園田隼(右)にシドニー五輪金メダリストの高橋尚子さんがインタビュー 【写真提供:TBS】

 4年に一度開催されるアジア最大のスポーツの祭典、「第18回アジア大会」がインドネシア・ジャカルタで8月18日に開幕する。

 40競技462種目に、45の国と地域が参加し、アジアの頂点を目指ししのぎを削る。陸上競技は8月25日から30日まで行われ、注目の男子マラソンは初日となる25日の朝6時(日本時間朝8時)に号砲が鳴る。

 日本からは、今年2月の東京マラソンで2時間6分54秒の自己ベストを記録した井上大仁(MHPS)と、同じく2月の別府大分毎日マラソンで2時間9分34秒の日本人トップとなった園田隼(黒崎播磨)が出場。ともに来年9月に開催される2020年東京五輪マラソン代表の選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権を獲得しており、まずはアジアの頂点を決める“夏レース”で勝利を飾っておきたいところだ。

 今回は試合を目前にした園田と指導する黒崎播磨の渋谷明憲監督に、1998年アジア大会(タイ・バンコク)女子マラソンの覇者、2000年シドニー五輪金メダリストで、TBSのアジア大会スペシャルキャスターを務める高橋尚子さんがインタビュー取材を行った。

渋谷監督「マラソンへの適正があると思った」

マラソンを走ったことがないときから渋谷監督にその資質を見出された園田 【写真は共同】

高橋尚子さん(以下、高橋) 目前に迫ったアジア大会に向けて、目標を聞かせてください。

園田隼(以下、園田) アジアという大きな舞台で戦う以上は、自分の力を十二分に発揮して、良ければ順位もついてくるので、ちゃんと結果を残したいと思います。

高橋 あらためて、自分を導いてくれた監督はどんな存在ですか?

園田 渋谷監督がいなかったら、今の僕が陸上をできているかも分からないぐらいの存在です。感謝と尊敬の気持ちしかないです。本当に尊敬できる方なので。

高橋 照れ笑いをされていますが、その思いを聞いて渋谷監督はどうですか?

渋谷明憲監督(以下、渋谷) そういう気持ちがあるならそういう気持ちで頑張ってほしいです(笑)。

高橋 渋谷監督は園田選手がまだマラソンを走っていない時から、マラソンをさせたいと思っていたそうですが、それはどういう思いからでしょうか?

渋谷 2014年当時、東京五輪が開催されることが決まって、指導者として五輪に自分が育てた選手を出したいという気持ちがありました。チームを見渡した時に、彼が長距離やマラソンへの適正があると思いまして、それで彼にやらないかと言いました。

高橋 どの点を見て、この選手だと思ったのですか?

渋谷 長い距離への適正は体の強さ。練習が積めるということが一番マラソンに向いていると思いました。また彼がトラックで走るより、ロードで走れる適正を分かっていましたので。

高橋 園田選手は監督に「五輪を目指すぞ」と言われた時は?

園田 その頃は距離走もままならなかったので、「本気で言っているのかな?」と思い、びっくりしました。

高橋 私も現役時代、同じことを言われました。まだ1500メートルを走っていた頃、小出(義雄)監督に「五輪はマラソンで行くぞ」と。私も「何を言っているんだろう?」と(笑)。冗談で、励ましで言ってくれていると思って(話が)右から左だったのですが、やはり言われるとうれしくて、本気でやってみようと思い始めました。渋谷監督も今振り返ると、あの時の考えは間違いではなかったと思いますよね?

渋谷 そうですね。僕はその時、よく思いついたなと思います。それが今、(五輪出場が)現実に近づいていくというのが、私もそうですが、彼も感じているので良かったと思います。

高橋 先の話になりますが、来年にはMGCというレースがあります。そこまでの流れはどう考えていますか?

渋谷 今回アジア大会に出ますが、国内のマラソンも出ますし、駅伝もしっかりやります。毎年やっている流れを、彼のペースでやるだけです。

高橋 その中でタイムを上げたい気持ちもありますか?

渋谷 そうですね。気象条件もあるので、タイムよりもレース経験だったり、レースで勝ってほしいというのが、私の希望です。タイムは後からついてきますので。今、力がついてきているので、いずれはタイムも出すと思います。

高橋 五輪まではタイムよりも勝負に徹底してとなると、ますますアジア大会が楽しみですね。

アジア大会では経験をつけるのが一番

アジア大会は、渋谷監督(右)も「彼がもう1皮むける経験になると思う」と話す 【写真提供:TBS】

高橋 園田選手は、今の目的がアジア大会と決まっているので、向かっていく気持ちは強いですよね?

園田 そうですね。ここというのが見えていますので、あとはそこに向かって練習するだけです。

高橋 「東京を狙うなら園田しかいない」と監督が思われたとのことですが、園田選手がその思いを聞いて、自分で行けると思ったのはいつの時期ですか?

園田 それこそタイムで2時間11分を切れたとき(16年12月の福岡国際マラソン、2時間10分40秒)ですね。その時、目に見えるようになって、もう少し頑張れば2時間10分を切れるのではないかと思い、監督が言っていたことが間違いではないと分かったので、「これはもう少し頑張ればいける」と思うようになりました。

高橋 結果が出てくると、先が見えるようになりますからね。どんどんステップアップしていく中で、監督はこの先、もう1段階力を付けるには何が必要だと思いますか?

渋谷 それはレース経験ですね。アジア大会が、彼がもう1皮むける経験になると思います。

高橋 どんなレースをしてもらいたいですか?

渋谷 物怖じせず、今回はペースメーカーがいないので、そういう中でのレースの動きに彼がどう対応して、彼がレースを乗り切るかがひとつのポイントだと思っています。

高橋 園田選手自身はどんなところを上乗せしたいですか?

園田 さっき監督が言ったとおり、経験をつけるのが一番なのですが、経験できないものは練習や普段の生活、何より当たり前のことを当たり前にやる、身の回りの当然のことをやっていくことで身に付けたいと思います。

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