世界初挑戦の伊藤、中盤以降のKO狙う 全勝ディアスの勢いを止められるか

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ロマチェンコが返上したベルトを狙う

世界初挑戦となる伊藤雅雪。米国のリングで王座戴冠となるか!? 【(C)NAOKI FUKUDA】

 現地時間5月12日にホルヘ・リナレス(32=ベネズエラ/帝拳)の持つWBA世界ライト級王座に挑戦して10回TKO勝ちを収めたワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)が、それにともない以前から持っていたWBO世界スーパーフェザー級王座を返上。空位になった王座を2位の伊藤雅雪(27=伴流)と1位のクリストファー・ディアス(23=プエルトリコ)が争うことになった。試合地はディアスの準ホームともいえる米国フロリダ州キシミー。伊藤自身が「客観的にみたら6.5対3.5ぐらいでディアス有利。それぐらいに難しい試合」というカードだが、初の国外ファイトとなる27歳は「でも僕が勝つ。7ラウンドから10ラウンドの間に倒す」と揺るぎない自信をみせている。伊藤が勝てば日本のジム所属選手としては90人目、スーパーフェザー級では10人目の世界王者誕生となる。また米国での世界王座奪取は1981年11月の三原正(三迫)以来37年ぶりということになる。

 伊藤はアマチュアを経ずに大学1年のときにプロデビュー。2戦目を前に交通事故に遭い大けがを負ったり、日本王座挑戦で惜敗したりと挫折も味わったが、9年間に25戦23勝(12KO)1敗1分という好戦績を残している。13年にはWBCのライト級ユース王座、15年には東洋太平洋スーパーフェザー級王座、翌16年にはWBOアジアパシフィックスーパーフェザー級王座を獲得。東京以外での試合経験はないが、徐々にランクを上げて現在はWBO2位につけている。

「パワーやテクニック、スタミナなどは7〜8点ぐらい」と自己採点する伊藤だが、「スピードや状況に反応できる運動神経には自信がある」と話す。その恵まれた能力を生かして相手の攻撃を封じ、機をみて迎え撃つ右のボクサーファイター型といえる。以前はカウンター攻撃を狙うあまり勝ち味が遅い傾向がみられた伊藤だが、最近は「世界の舞台を意識してリスクを承知で倒しにいく気持ちで戦っている」という。それが3年間で7連勝(5KO)という数字に表れている。

後半まで戦った経験を生かして攻略へ

 一方のディアスは、14年前に亡くなった元アマチュアボクサーの父親の影響を受け8歳のときにボクシングを始めた。アマチュアで137戦(108勝29敗)したあと13年にプロに転向。以来、23度リングに上がって全勝、そのうち15度はKO(TKO)で片づけてきた。KO率は65パーセントと比較的高い。伊藤同様、世界的な強豪との対戦経験は乏しいが、2年前にフェザー級のWBOユース王座、昨年12月にはNABO北米スーパーフェザー級王座を獲得して最上位にランクされるまでになった。

 ディアスは外側から巻き込むような左右のフックで攻め込む好戦的なタイプで、チャンスをつかむと一気に仕留めにかかる。攻め急いで上体が突っ込むなど雑な面はあるが、勢いで根こそぎ刈り取ってしまう印象だ。反面、8ラウンドをフルに戦いきったことは3度あるものの、伊藤のように10ラウンド、12ラウンドを戦った経験はなく、スタミナ面と耐久力に関しては試されていないといえる。

 伊藤は「1、2ラウンドは様子を見るかもしれないが、3ラウンドあたりからハッキリ差をつけ、7ラウンドから10ラウンドの間で倒す」と勝利パターンをイメージしている。ただ、大声援を受けるであろう若いディアスを勢いづけさせないためにも、最初から主導権をつかみにいく必要に迫られるかもしれない。ディアスが積極的にプレッシャーをかけて出てくると思われるが、そんななかで体格で勝る伊藤が右ストレートを打ち込むことができるか。

19歳、20歳のホープにも注目のSフェザー級

<スーパーフェザー級トップ戦線の現状>
WBAスーパー王者:ジャーボンテイ・デービス
   正規王者:アルベルト・マチャド
WBC王者:ミゲール・ベルチェルト
IBF王者:空位 ※ビリー・ディブ対テビン・ファーマーで決定戦
WBO王者:空位 ※伊藤対ディアスで決定戦

 3人いる王者のうちWBAスーパー王座に君臨するジャーボンテイ・デービス(23=米国)は今年4月、WBAレギュラー王者のアルベルト・マチャド(27=プエルトリコ)は昨年10月に戴冠を果たしており、新しい波が押し寄せている印象だ。最も長い在位のWBC王者、ミゲール・ベルチェルト(26=メキシコ)でさえ昨年1月の王座獲得である。ロマチェンコがWBO王座を返上してライト級に転向した現在、そのベルチェルトとデービスがトップ並走といった状況といえる。

 IBF王座は8月にビリー・ディブ(32=オーストラリア)とテビン・ファーマー(27=米国)で決定戦が行われることになっており、今回の伊藤対ディアスのWBO王座決定戦と合わせて、夏には4団体のトップがそろうことになる。

 ランカー陣ではWBC1位のミゲール・ローマン(32=メキシコ)、前WBC王者のフランシスコ・バルガス(33=メキシコ)、ジョニー・ゴンサレス(36=メキシコ)、フェザー級から転向したリー・セルビー(31=イギリス)といったベテランの名前が目立つ。そんななか15戦全勝(13KO)の19歳、WBA9位、WBO6位のライアン・ガルシア(米国)、26戦全勝(23KO)の20歳、WBC3位のエドゥアルド・エルナンデス(メキシコ)がトップ戦線に割り込んできた。すぐに世界挑戦というわけにはいかないだろうが、このホープふたりにも注目していきたい。

Written by ボクシングライター原功
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WBO世界S・フェザー級2位、アジア最強の日本のエース伊藤雅雪が、“最強”ロマチェンコが返上したWBOの世界王座を懸けアメリカの地で王座決定戦を戦う!
【放送日】7月29日(日)午前11:00〜[WOWOWライブ]
ゲスト:三浦隆司

WBO世界S・フェザー級王座決定戦
伊藤雅雪(伴流)/WBO世界S・フェザー級2位
クリストファー・ディアス(プエルトリコ)/WBO世界S・フェザー級1位
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