サンウルブズを前進させる協調の文化 多国籍軍団が一丸となってシーズン3勝
自信を得たニュージーランド遠征
苦しい戦いが続く中で、ジョセフHCを中心に粘り強く前進した 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
ディフェンスも機能し始めて、ジョセフHCが指導するラインアウトも安定してきたこともあり、昨年の王者クルセイダーズ、一昨年の王者ハリケーンズと後半途中まで良い勝負を演じて、自信を得た2試合となった。「ニュージーランド遠征あたりから、チームがまとまって前に出はじめた」(HO堀江)
成果が出たのは5月12日、ホームで迎えたレッズ戦(オーストラリア)で63対28で快勝。さらに翌週も香港でストーマーズ(南アフリカ)に、粘り強いディフェンスを見せつつ、SOパーカーの決勝DGで勝利し2連勝を達成した。
しかし、その後の2試合は、6月のテストマッチに向けて日本代表の主力がチームを離脱した影響もあり2連敗。ベストメンバーで行ければ勝利数を増やすことができたかもしれないが、ジョセフHCも当初からのプランを実行。
2勝1敗で終えたテストマッチ期間を挟んだ6月30日にはブルズ(南アフリカ)に勝利し、シーズン初の3勝を達成した。
リーチ「失点を抑えればもっと勝てた」
サンウルブズ1年目からチームを支え続けるHO堀江 【写真:アフロ】
腰の手術のために、シーズンが終わる前に、一足先にニュージーランドに帰国したジョセフHCは「サンウルブズと日本代表のヘッドコーチを兼任してきましたが、優先すべきはワールドカップ。2チームを見ることによって2つのチームのプランニングやコーディネーションを取ることができて、両チームともにしっかり戦える組織に作り上げたことが兼任した大きな利点だと思っています」と胸を張った。
ブラウンコーチは「日本人だけでなく外国人選手たちも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。シーズンが深まるにつれて高いパフォーマンスを発揮できる集団になってきた」と笑みをこぼした。SH流、LO姫野、WTBレメキ、サウマキ、CTBリトルは初のスーパーラグビーながらも高いパフォーマンスを発揮。またキックの成功率が96%だったSOパーカー、唯一の全試合出場となったPRミラーの2人はチームを支え続けた。
「文化は1年目から残っている」
共同主将の一人としてチームをまとめたSH流 【斉藤健仁】
個人的に高く評価したいのは3勝目のブルズ戦だ。テストマッチ明けで日本代表の主力の多くが休む中、外国人選手たちは6月中旬から合宿を張って準備し、日本代表選手がチームに戻って来る時に、お互いに積極的に声を掛けてコミュニケーションを取っていた姿が印象的だった。相手には南アフリカ代表の主力も多くいる中で、サンウルブズのチーム力を感じた白星だった。
経験豊富なSH田中は「良い試合をしても、1人が集中力を切らしたり、最後に取られたりする場面が多かった。80分を通しての集中力とコミュニケーションがあれば勝利に近づける」と課題を指摘しつつ、「外国人が多かったが、日本人と外国人もコミュニケーションが取れましたし、流も姫野も松田(力也)も野口(竜司)も積極的にコミュニケーションを取ってくれるし、若手の日本人の成長がチームの成長と言えるくらい。過去3シーズンで一番成長できた。チームとして戦える強さを得られました」と力強く語った。
サンウルブズ参入初年度にチームを「泥船」と表現したHO堀江も「豪華客船とは言えないですがマグロ漁船くらいになったかな。だいぶ沖に行ける、十分な船に乗っている」と胸を張った。スーパーラグビーという航海に出発して3年目のサンウルブズは、勝ち星こそ少なかったが、チームとしても個人としても世界と戦えるだけの手応えと自信を得たシーズンとなった。
来年はワールドカップイヤーだけに、今年以上にジョセフHC以下のコーチングスタッフのマネジメント、プランニングといった腕の見せどころとなろう。今年のチーム、選手をベースにさらなる進化を見せて、勝利数を倍以上挙げてプレーオフに進出するくらいの飛躍を遂げて、その勢いをワールドカップにつなげてほしい。