ロシアW杯で示した日本サッカーの未来像 20年間の着実な進歩に自信をもつべき

飯尾篤史

W杯で日本代表の残したインパクトは絶大

「W杯ロシア大会で台頭したスター5選手」に選出された乾。日本は世界に大きなインパクトを残した 【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)のラウンド16でベルギーに敗れた2日後の7月4日、日本代表はロシアの地をあとにした。しかし、その後も続々と“日本代表に関するニュース”が海の向こうから届けられた。

 日本戦後に「日本は信じられないくらい良かった」とたたえたベルギーのDFバンサン・コンパニは、3位に輝いたあと「フランス戦(準決勝)、ブラジル戦(準々決勝)、日本戦は本当に接戦だった」とあらためて日本に敬意を表し、ベルギーのGKティボー・クルトワは、準々決勝でブラジルを下したあと「日本戦でわれわれは多くのものを学んだ」と日本に感謝した。

 FIFA(国際サッカー連盟)のテクニカルスタディグループが現地で開いた会見では、AFC(アジアサッカー連盟)のテクニカルダイレクターがベルギー戦の内容を「ファンタスティック」と称賛し、FIFAの公式サイトでは乾貴士が「W杯ロシア大会で台頭したスター5選手」に選出された。

 日本代表の残したインパクトが絶大だったことの、何よりの証だろう。

 W杯ロシア大会で日本代表は3度目のベスト16に進出した。目標だったベスト8には届かなかったが、日本サッカー界にとって収穫の多い、エポックメーキングな大会となったのは間違いない。

明確に示した“日本のスタイル”

ロシアではひとつの局面に複数の選手が絡んでいく“日本のスタイル”が示された 【Getty Images】

 成果のひとつとして挙げられるのは、長年求め続けてきた“日本のスタイル”をロシアのピッチでしっかりと示せたことだろう。

 ボールを動かして相手のプレスをかいくぐり、自分たちからアクションを仕掛けていく。ひとつの局面に、スペースメーキングやフォロー、サポートの動きをまじえ、複数の選手が絡んでいく。

 それでいて、必要以上にボール保持にこだわっていたわけではない。第2戦のセネガル戦でロングパスによって裏を突いて同点に追いついたように、ベルギー戦でカウンターから先制点を奪ったように、状況に応じて速攻も繰り出した。

 今大会のトレンドのひとつに高速カウンターがあったが、縦に速い攻撃はヴァイッド・ハリルホジッチ前監督が強調していたもの。開幕2カ月前に解任する事態となったが、前任者の求めたものがチームからなくなったわけではないのだ。

 4年前のブラジル大会を戦ったザックジャパンはポゼッションに、ハリルジャパンは速攻に、極端なまでに傾倒していた。一方で、今大会の日本代表はポゼッションと速攻の使い分けができていた。つまり、やや大味な表現を許してもらえば、ザックジャパンとハリルジャパンを足して2で割ったのが、西野ジャパンだったということだ。

強豪国に対するコンプレックスを払拭

強豪国のエースとも堂々と渡り合い、コンプレックスを払拭した 【Getty Images】

 強豪国に対して「名前負け」しなくなったことも、日本代表が次のステージへ進んだことを感じさせた。

 初戦のコロンビア戦では、キックオフ直後から積極的に仕掛けてPK及び退場を誘発すると、後半に入ってから再びコロンビアを押し込み、エースのハメス・ロドリゲスの登場にも混乱することがなかった。

 それは相手が早々に10人になったからだと言うのなら、セネガル戦はどうだろう。2度のビハインドに屈することなく、セネガルを追い詰めたうえで2−2のドローに持ち込んだ。

 そして、ラウンド16だ。相手はグループステージを全勝で勝ち抜いたベルギーである。しかし、日本はこれまで以上にアグレッシブに攻撃を仕掛けていった。FIFAランク3位(2018年6月7日付)の優勝候補に対して、恐れなど一切感じていない様子で――。

 強豪国に対するコンプレックスの払拭(ふっしょく)は、今や代表チームの大半を占める海外組の存在が大きいだろう。クラブで厳しい競争を勝ち抜き、リーグ戦や欧州のカップ戦でもまれている彼らにとって世界のトップ・オブ・トップとの対戦は、いわば日常。エデン・アザールやロベルト・レバンドフスキ、サディオ・マネを前にして、萎縮する理由がないのだ。

 今大会における日本代表の自信に満ちた戦いは、テレビの前の“未来の代表選手たち”の脳裏にもしっかりと焼き付いたはずだ。彼らがアンダー世代のW杯や五輪、そして将来、A代表として欧州や南米、アフリカの強豪と対戦するとき、怯むことなく、勝てるという自信を胸に挑めるのではないか。

選手たちが欧州で身に付けた「個」の力

大迫のポストプレーなど、「個」の力でも十分にわたりあえていた 【Getty Images】

 選手個人の能力においても、世界のトップクラスを相手に十分わたりあえていた。

 香川真司のサイドに誘導するプレスはどの試合でも効果的だったし、敵の間(あいだ)、間を取るポジショニングはセネガルのアルフレッド・エンディアイエ、ベルギーのアクセル・ビツェルを嫌がらせていた。

 乾のカットインからのフィニッシュは大きな武器となり、相手3人のパスコースを消すようなポジショニングは守備における生命線のひとつだった。

 原口元気の攻守におけるハードワークとロングランからの正確なシュートは4年間の努力のたまものであり、大迫勇也のポストプレーはどんな屈強なDFにも通用していて頼もしく、柴崎岳は長短のパスでゲームを組み立ててチームを引っ張った。

 これらはまさに、彼らが欧州のリーグを戦う中で身に付けたものだ。

 選手各々の特長が出やすいように、立ち位置や組み合わせにおける最適解を見いだした西野監督の手腕も見逃せない。

 もともと西野監督はガンバ大阪を率いていた頃から、遠藤保仁、二川孝広、橋本英郎、明神智和ら中盤の選手たちや外国人ストライカーの最大値を引き出すことに長けた監督だった。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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