過去2回のチャレンジとは違う、W杯16強 勝ち進んだことで日本の課題が明確に
ベンチワークでベルギーとの戦力差が露呈
後半アディショナルタイムにベルギーに逆転された日本。ベンチワークで戦力差が露呈した 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
後半24分、ベルギーは右CKからチャンスをつかむ。川島がパンチングで対応し、さらに乾がクリアしたところを、左サイドでベルトンゲンがヘディング。シュートの意図はなかったと思われるが、ボールは放物線を描きながらゴール右隅に吸い込まれ、ベルギーは1点差に詰め寄った。さらに29分には、アザールが巧みな切り返しから大迫のマークを振り切り、左サイドからクロスを供給。これに長谷部と吉田との競り合いに競り勝ちったフェライニが、驚異的な打点から同点ゴールを挙げる。この間、わずか5分。ベルギーは試合を降り出しに戻し、心理的にも優位に立つこととなった。
「まさに最後の30分は、本気のベルギーに対抗できなかった」とは、西野監督の偽らざる心境であろう。このころになると日本の選手に、疲労の度合いが色濃く感じられるようになる。しかし残念ながら、この状況を打開するための交代カードを指揮官は持ち得ていなかった。ようやくベンチが動いたのは、後半36分。原口と柴崎に代わって、本田圭佑と山口蛍を投入。原口については、ここまでの運動量を考えれば妥当性が感じられた。しかし柴崎については、(すでにカードを1枚もらっていたとはいえ)いささか不安が残る交代であったと言わざるを得ない。結局のところ、ここにベルギーとの一番の差を痛感した。
実際、本田と山口の交代は事態の改善にはつながらず、むしろ悪い形でクローズアップされてしまった。アディショナルタイムの45+4分、ベルギーは本田によるCKをクルトワが難なくキャッチ。すぐさまデブライネにつないで、カウンターを開始する。デブライネのドリブルに、山口はプレスにもいけず、さりとてコースを切ることもできず、半ば棒立ちのようになってしまった。するとボールは右サイドを走るトーマス・ムニエに流れ、折り返したボールをルカクがスルー、最後はシャドリがフリーの状態から押し込んだ。ベルギー、劇的な逆転劇。この直後、タイムアップのホイッスルが鳴り響いた。
ベスト16進出も「力が足りない」
勝ち切るには「力が足りない」。しかし、過去2回のチャレンジと比べて、前進した部分もあった 【写真:ロイター/アフロ】
かくして、ここロストフ・ナ・ドヌにおいて、日本代表の戦いが終わった。もちろん悔しいし、もっとできたのではないかという思いもあるが、これが現状での限界だったようにも感じる。グループステージ、そしてラウンド16の合計4試合を戦って、結果は1勝1分け2敗。ベスト16までは到達できたものの、日本が勝利できたのは初戦のコロンビアのみ。しかも相手は、ほとんどの時間帯を1人少ない状況で戦っていた。そうして考えると、やはり世界の強豪にイーブンの状況で勝ち切るには、指揮官が語るように「力が足りない」。その現実を、われわれは厳粛に受け止める必要がある。
もちろん、過去2回のチャレンジと比べて、前進した部分もあった。まず、今回は初めて戦略的かつ現実的に、ベスト8の壁を突き破るトライをしたこと。グループステージ第3戦でメンバーを大きく入れ替え、このラウンド16に勝負を懸ける戦い方ができたのは、歴史的な出来事と言ってよい。次に、戦力的には圧倒的上位に立つ相手に対して決して受け身にならず、最後まで勝利の可能性を追求したこと。これまた、過去のW杯での戦いを振り返れば画期的なことである。そして、ラウンド16で初めてゴールを2つも記録したこともまた、十分に誇ってよい成果だったと思う。
とはいえ、わずか2カ月しかない期間での準備には、やはり限界があったと言わざるを得ない。また、この試合での交代の選択肢の少なさを鑑みれば、西野監督が選んだ23人のチョイスが、本当にベストであったとも思えない。ただし準備期間の短さに関しては、これは現場の指揮官の責任ではないことは明らかで、なぜこのような決断が下されたかについては、誰もが納得できる説明責任がJFA(日本サッカー協会)には求められよう。一方で、ラウンド16まで勝ち進んだことによって、日本の課題がより明確になったことは収穫であった。西野監督の言葉どおり、きちんと次の体制に引き継がれることを、今は強く望みたい。