常勝軍団・大阪桐蔭の挑戦2018

“常勝”の魂はどう受け継がれるのか 大阪桐蔭2年生・宮本涼太の経験値

沢井史

外野転向で頭角を現した2年生

3年生に猛者が集う大阪桐蔭。その常勝軍団の魂を受け継ぐ逸材として期待される2年生・宮本 【沢井史】

【常勝軍団・大阪桐蔭の挑戦2018:第6回】

 宮本涼太の名前を聞くようになったのは、年が明けたばかりの1月だった。年末に大阪桐蔭の選手がメインで結成された大阪選抜チームで台湾遠征が行われ、そこで台頭した選手を西谷監督に尋ねると、真っ先に挙がった名前が宮本だった。

 能力の高い3年生がひしめき、昨秋の段階で這い上がる2年生が入る隙がなかなか見つからなかった。だが、秋に神宮大会で敗れたことで西谷監督は全員一斉にスタートラインに立たせて競争を促し、頭角を現した1人でもある。

 もともとは内野手。中学時代は枚方ボーイズに所属し、藤原恭大や小園海斗(報徳学園)らの1年後輩にあたる。大阪桐蔭では根尾や中川卓也ら層の厚い内野手陣がいる中、昨秋に西谷監督に「外野、やったことあるか?」と尋ねられた。宮本は「はい」と即答した。

 秋以降、藤原がひざの治療に専念していたため、外野手としての出場機会が巡ってきたのだ。「試合に出られるのなら挑戦してみようと」と本格的に外野の練習を開始。内野と違い、ステップの幅が外野手は大きく、打球判断や捕球など慣れるのに時間がかかったが、台湾遠征では試合をこなしていくうちに形になってきたと感じた。1番打者としても全4試合フル出場し、打率も4割を超えた。

3年生のミーティングに参加

  昨年、センバツで優勝したばかりの大阪桐蔭に入学した頃は何もかもに圧倒された。

「(大阪桐蔭の印象は)こんなにミーティングをするんやなと。技術だけではなく、つながりを大事にしているんだと思いました。特に福井さん(章吾/慶應義塾大1年)みたいなキャプテンは見たことがなくて、一緒にいるだけでも勉強になることばかりでした。本当だったら3年生だし話しかけづらいんですけれど、僕は敢えて積極的に話しかけました。そうしたら、福井さんだけでなく多くの3年生がいろいろなアドバイスをしてくださいました」

 2年生になると3年生のリーダー9人が集まるミーティングに入る機会が増えた。リーダーだけのミーティングに2年生を呼ぶのは期待の表れでもある。同じ2年生の中野波来とともに学年を代表して3年生の声を聞く。これ以上ない貴重な時間は、宮本にとって何もかもが収穫だった。

「3年生の気持ちが分かりました。それを自分が同学年のみんなや1年生に伝えることが役目。リーダーを務める3年生は、バッティングだと藤原さん、守備は山田健太さんなど、それぞれの分野で自分が見えていないところまで見ておられて。リーダーとして責任感を持ってやっているからそんな風に見られるんだなと思いました。ミーティングに参加するようになって、チームの細かい部分を見るようになりました」

夏へ、秋へ、何をすべきなのか

 台湾遠征からセンバツ、春の大会とベンチ入りを果たし経験値も着実に上げているが、懸念されるのは少し早いが秋からのこと。3年生がいなくても自立できるメンバーを増やして、先輩らに負けないチームになりたいと考えている。

「2年生の力がないとよく言われますけれど、今のうちから下級生だけでチームをつくる勢いで、3年生の言葉を伝えながら成長していきたいです。夏の戦いも大事ですけれど、頭の片隅では秋のことを考えてしまいます。でも、自分が1年生の時の3年生もまとまりが良くてリーダーがしっかりしていたし、中川さんたちは経験もあって言うことに説得力がある。すごい先輩たちばかりを見てきたからこそ、自分たちは何をすべきかを考えて、まずは夏にベンチ入りしていろいろなことを経験したいです」

 この夏、まずは多方面に耳や目を傾け、さまざまな経験を積み上げる。“次世代”を担う宮本の心は、今アグレッシブさでいっぱいになっている。

【連載】「常勝軍団・大阪桐蔭の挑戦2018」

 史上8度目の春夏連覇を目指す、夏の高校野球100回大会の一番の注目校である大阪桐蔭。常勝軍団と言われる大阪桐蔭のメンバーが、日々どんな気持ちで野球に取り組んでいるのか――個々の選手の素顔に迫る連載を6月29日から開始。7月5日掲載の最終回は、根尾昂選手とともに大阪桐蔭の顔とも言うべき藤原恭大選手です。
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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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