常勝軍団・大阪桐蔭の挑戦2018

行動と声で大阪桐蔭をけん引する主将 中川卓也、春夏連覇への強い思い

沢井史

勝つにはチームのつながりが大事

常勝軍団・大阪桐蔭を行動と声で引っ張る中川主将 【写真は共同】

【常勝軍団・大阪桐蔭の挑戦2018:第2回】

「自分は福井さんのように話はうまくないし、言葉で引っ張るのは得意ではないので、自分の色である声と行動で引っ張っていこうと。誰よりも動いて、誰よりも大きな声を出せば、誰かがついてきてくれると思いました。そこでついてきてくれる人数が増えて初めて、チームは出来ていくと思いました」

 昨年の大阪桐蔭をけん引した福井章吾・前主将(慶應義塾大1年)のバトンを受けて主将となってから、もう10カ月以上が経つ。新チーム結成当初はチームの支柱とも言われた福井と比較されることも多かったが、中川は自身のカラーを出しながら必死に動き回っている。

「昨年はセンバツで優勝しても夏に負けたのは何かが足りなかったから。それ以上の技術やチーム力をつけないと夏は勝てないと思いますが、まずはチームのつながりが大事だと思って、9人で話す機会を増やすようにしてきました。今もそうです」

 9人というのは主将の中川、副主将の根尾昂に加え、チーム初となったキャプテンらをバックアップする役目のサポートメンバー7人を加えた人数のことだ。山田健太、青地斗舞、小泉航平、藤原恭大、宮崎仁斗らがその7人になる。それぞれに役職があり、チームを多方面から見つめる。例えば内野守備は山田と小泉、打撃は藤原、走塁は宮崎、青地は外野全般や生活面を担当している。

頻繁に行う野球ノートでの意見交換

  春になると、23人の1年生が入部し、部員が64人になった。3年生はここから最後の夏に向けて突き進むだけだが、夏に勝ち抜くために必要なのはやはり下級生の力だ。今年のチームは経験値の高い3年生がどうしても主体になるが、2年生が率先して意見できるようにならなければ、その下の1年生もこちらを向いてくれない。

「昨年の今頃も、自分と根尾が3年生のミーティングの中に入れてもらって、いろいろな意見を聞きました。なので、今年は2年生の宮本(涼太)と中野(波来)にミーティングに入ってもらって、自分たちの話を聞いてもらっています。特に宮本は一番経験のある選手。宮本には2年生にいろいろなことを伝えてもらいたいので、特に宮本には厳しく言ってしまいます。それはもちろん夏に生きるし、秋にも生きていくと思うので。その流れが1年生にも伝わっていけばと思います」

 チーム内では野球ノートで意見交換も頻繁に行われているが、春からは2年生にそのノートを見せてお互いの思いを話すこともある。最近は2年生だけで外野手ノートを作成して、青地に提出していることも聞いた。そのため、中川は一生懸命になっている2年生に何かあれば進んでアドバイスをするようにしている。

「2年生はどちらかというとおとなしいんです。自分たちの学年と仲はいいんですけれど、傷の舐め合いになっているというか、“仲良しこよし”みたいなところがあるので、ガツッと言える立場の人間がいないといけないなって。それを宮本に期待してしまいます。宮本も変わろうと必死にやっているので、今は自分たちがどれだけサポートできるかも大事だと思っています」

公式戦15戦無敗にも油断なし

中川主将は春夏連覇へ「まだまだ勝ち切る力はない」とチームを引き締める 【沢井史】

 春の近畿大会ではセンバツの決勝戦の再戦となる智弁和歌山を接戦で下して優勝。今年に入って公式戦15戦負けなしだ。だが、優勝旗を手にしようが表情を緩めることなく中川はこう言う。

「ここから夏に向けてが本当の勝負です。夏はどんな投手も打たれるし、厳しい試合もあるので、強化練習でも自分たちを追い込んで準備していきたいです。昨年、先輩たちが成し遂げられなかった春夏連覇への思いは誰よりも強いです」

 昨夏の甲子園。3回戦の仙台育英との“あの”試合。9回2死からの逆転負け……誰よりも悔しさや無念さを味わったのが中川だった。6月に入り、強化練習がピークになって愛知遠征では連敗。香川遠征では3勝1引き分けとなったが、英明戦では序盤から相手リードの苦しい展開が続いた。

「まだまだ勝ち切る力はないです。もっともっと練習しないと」

 ギュッと握りしめた帽子のつばに書かれた「主将力」という言葉は、汗でにじんでいた。

【連載】「常勝軍団・大阪桐蔭の挑戦2018」

 史上8度目の春夏連覇を目指す、夏の高校野球100回大会の一番の注目校である大阪桐蔭。常勝軍団と言われる大阪桐蔭のメンバーが、日々どんな気持ちで野球に取り組んでいるのか――個々の選手の素顔に迫る連載を6月29日から開始。7月1日掲載の3回目は、豪華投手陣を支える小泉航平捕手を取り上げます。
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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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