熱戦中のスーパーGT、基礎の基礎を紹介 〜決勝レースの緊迫を楽しもう〜
ローリングスタートでレース開始! 【(C)GTA】
スーパーGTはローリングスタート!
スーパーGTが採用するローリングスタートは、マーシャルカーの先導までは一緒ですが、グリッドに停止せず、そのまま駆け抜けてレースが始まるというもの。レース開始の合図はレッドシグナルの点灯。ただし、コントロールラインを超えるまでは追い越しは禁止され、もしわずかでも前に出てしまえば、ピットロードを停止することなく通過するドライビングスルーというペナルティが課せられます。通常は全開で駆け抜けるストレートの脇を時速80キロで走らなくてはならないため、ロスは少なくありません。
2018年からは、フォーメーションラップ後半の極端な加減速が禁止され、ストレートでの2列縦隊をしっかり維持することが義務づけられました。これはスタート時の必要以上の駆け引きを禁じることで、レースの安全性、公正性を保とうという配慮でもあります。
ちなみに、原則としてフォーメーションラップは1周。ただし、ウエットコンディションだったり、温度が低過ぎたりした時はタイヤやブレーキを温めるために、もう1周加えられることもあります。また、最近では県警の白バイとパトカーの先導によるパレードランが、フォーメーションラップの前に加えられることも増えています。
どこでどう抜くか、抜かれるかにも注目
GT300が走行ラインを走ったまま、GT500の方がビュンっと抜いて行ってくれるので、お互いロスはほとんどありません。とはいえ、そういつも好都合ではないわけで……。GT300にしてみれば、GT500のバトルを、そうそう邪魔するわけにはいきません。できればコーナリング中にはGT500と遭遇したくないので、その手前であえてスピードを緩めて、抜いてもらう車両も見られます。
特に富士の後半区間、通称セクター3では勘弁してほしい……とGT300のドライバーは誰もが思っています。峠道のような、コース幅の狭いコーナーが続くからです。
ライトのパッシングが意味するところ
ちなみに、このパッシング、以前はスイッチを押せば、自動的に点滅を繰り返しましたが、不敬行為と思われかねないということで禁止になりました。でも、今でも見られるということは、ドライバーがそのつどピッピッピっと押しているんでしょう。もちろんスーパーGTの場合はウィンカーレバーではなく、スイッチですが。また、抜かれる方がウィンカーを点灯させている光景も稀に見られますが、これは「点灯させる方に進路を移しますから」という意思表示でもあります。
レース戦略はチームごとさまざま
また、ふたりのドライバーにスピード差がある場合、速い方のドライバーがスタートを担当して逃げ、マージンをもうひとりのドライバーに与えて、それを少しずつ失っても、最後までポジションを守るという戦略もあります。ともあれ、さまざまなんです。
ピットインに関して
ちなみに、給油中にはドライバー交代を除く、一切の作業が禁止です。さらにタイヤ交換に当たれるメカニックはふたりまで。給油とタイヤ交換が別々に行われているのは、そういうところに理由があります。素早くコースに送り出すため、しっかり燃費を計算してチェッカーまでギリギリ走れる量だけ給油する。タイヤ交換も、ホイールが金属の塊で、あれだけ太くて大きいから、けっこう重いんですね。一連の作業を素早く行うため、トレーニングを欠かさないメカニックも少なくありません。ピットレーンも速く走りたいところですが、こればかりは速度制限があるので……。これはピットレーンリミッターの作動で、一定速度を保ってくれます。
タイヤ無交換は究極のレース戦略?
ここ、特に重要です。トップドライバーはある意味、速く走ることには自信があります。それと、自分がいちばん速いとも。だからこそ、あえて抑えて走るのは不安でもありますし、さらに相方をどれだけ信じられるか。「こんなに我慢して走ったのに……」ということも起こり得るわけですから。また、無交換ほど極端でない、2本交換という戦略もあります。右回りのコーナーが多いサーキットでは内輪差の関係上、負担の大きい左側のタイヤ2本だけ、あるいは駆動輪2本だけというケースもあります。
ドライバーを冷やせ!
でも大量の熱発源であるエンジンを積んでいるので、コクピット内はすごく暑いんです。そんな環境に長時間いたら、ドライバーがへたばってしまうので、当然導風用のダクトが窓以外のところから引かれます。それでも十分じゃないので、クールスーツを装着。これはクーラーボックスの中に氷を入れて、モーターで冷水を循環させる装置で、アンダーシャツのまわりにパイプを備えて、ドライバーを直に冷却します。
またレギュレーションでも推奨され、近年増えているのがエアコンです。と言ってもコクピット全体を冷やすのではなく、シートやヘルメットに冷たい空気を送り込むというもの。これだと軽量コンパクトな装置で済みますし、パワーロスも最小限で済みますからね。