熱戦中のスーパーGT、基礎の基礎を紹介 〜決勝レースの緊迫を楽しもう〜

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ピット作業の時間が違うのはなぜ?

ピットインが勝負を分ける場合もあるので目が離せない 【(C)GTA】

 GT500では給油時間にそれほど差は生じませんが、GT300では案外差が生じます。その理由として挙げられるのが燃費です。JAF−GTはエンジン面での優遇こそ少ないのですが、その反面、燃費には優れます。その逆がFIA−GT3。だから、どうしてもJAF−GTの方が少ない給油量で済むので、早く完了できるというのは理解できますよね?

 そして、もうひとつFIA−GT3には理由があって、大半が海外で製作された輸入車です。海外のレースでは、あまりピットでの迅速さは問われず、むしろピットの入口から出口まで、ドライバー交代を含めて一定時間で済ませなさい、とレギュレーションで定められている場合が多いんですね。1秒でも早かったら、その分ペナルティストップを課しますよ、ということもあるので車両の構造に理由があると。といっても、対策や改良は許されません。でも、JAF−GTは自由な改造が許されているため、少しでも早くガソリンを入れるための工夫も可能です。

 近年は差を縮めるため、給油装置に流量リストリクターの装着を義務づけていますが、改造自由な方は、あの手この手で工夫を凝らしてくるので……。永遠に縮まらない差なのかも。

セーフティカーと赤旗

 アクシデントによってレースの継続が困難になった場合、すべてのポストで赤旗が提示され、レースは中断されます。しかし、中断するまでではないと判断された場合は、セーフティカー(SC)がコースに導入されます。そうなると、すべての車両は追い越しが禁じられ、またスピードを落とさなくてはなりません。ちなみにスーパーGTでは、SC走行中のピットインは禁止。ガス欠寸前などで止むを得ず入った場合には、ピットストップペナルティが課せられます。

 SC導入から、最初の1周後にGT500はストレートのピット側、GT300はスタンド側に停止。両クラス全車が並んだ後に、別れて再びSCランが実施されます。終了を告げるのは、SCのルーフ上にあるランプの消灯。その後はスタートの手順同様、コントロールラインを超えるまで追い抜きは禁止されますが、先頭の車両はいかなるタイミングで加速を開始してもいいこととなっています。後続車両との駆け引きも、見どころのひとつです。その後、ピットレーンオープンの指示が出てから、ようやくピットインが許されます。

フラッグの意味を知ろう

 前述したとおり、赤旗が出された時はレースの中断が告げられますが、SCランの最中や、スピンなどで軽度のアクシデントが発生している場合は、黄旗によって前方に対する注意を促し、提示されている区間での追い越しは禁止されます。危険な区間を通過し、ここから先は通常のペースで走っていいことを告げるのは緑旗。信号と同じ意味であるのが分かるでしょう。でもフラッグには、他の色もあります。青旗は後方から速いクルマが近づいていることを告げ、安全に先行させなさいと。白旗は前方に低速で走行している車両があるから、注意しましょうと。チェッカー旗はレースの終了を告げることは、もう言うまでもないでしょう。

 では、黒旗は? これはペナルティを課す合図で、単独ではなくゼッケンと「P」、もしくは「D」のボードとともに提示されます。「P」はピットストップとして一定時間の停止を、「D」はドライビングスルーを示します。黒側にオレンジの丸があるのは、車両トラブルを知らせ、速やかにピットで修復しなさいと。これもゼッケンボードとともに出されます。黄旗にオレンジの縦縞があるのは、コース上にオイルや砂が出て、あるいは急な雨で非常に滑りやすくなっていることを告げています。黒と白の斜め旗は、危険行為に対する警告旗です。

FROって何?

 コースオフィシャルの手だけでは対処できない停止車両のコース外撤去、あるいは初期消火、あるいはドライバー救助が必要な際にコースインするのがFROです。「ファースト・レスキュー・オペレーション」の略称で、作業に向かう車両のことを指すと思われがちですが、実際にはドライバーとドクター、ファイヤー&レスキューのスペシャリストによって構成されたチームなのです。

 ちなみにFRO車両は、セーフティカーとは異なり、追い越しは可能。アクシデントの発生で黄旗が提示されていても、競技車両は限りなくレーシングスピード。その中を抜かれ続けられながらも、少しでも早く問題の場所にたどり着きたいわけですから、ドライバーに相当なスキルが求められるのは言うまでもありません。近頃は初代チャンピオンの影山正彦さん、そしてシビックやミラージュのワンメイクレース、スーパー耐久で鳴らした往年の名ドライバー渡辺明さんたちが担当しています。なんと豪華な裏方さんでしょう!

ペナルティとは?

 ペナルティには2種類あって、ドライビングスルーペナルティとは、ピットレーンに進入し、止まらずピットレーン出口からレースに復帰するというもの。ペナルティストップとは、ピットレーンに進入した後、課せられた時間、ストップエリアに停止するものです。自チームのピットに停止することはできませんが、ストップエリアではエンジンを切らなくても良し。どちらになるかは案外曖昧で、「ドライビングスルーペナルティ、またはそれ以上」と記されているので、より重大な違反の場合、ペナルティストップになって、時間も増えると考えていいでしょう。

 どうしたらペナルティを課せられるか? まず分かりやすいのは反則スタートや黄旗無視、ピット作業違反やピットロードでの速度超過に対して。これに接触などによる危険行為が加えられます。正直、レースには接触はつきもので、全部をペナルティの対象とすることはできません。概して接触された相手に不利益が生じた場合に課せられると考えてもいいでしょう。コースアウトさせてしまったり、強引にオーバーテイクを妨げてしまったり、など。なお、ペナルティを告げる黒旗がメインポストで提示された後、3周のうちに履行しないと失格となります。

モラルハザードとペナルティポイント

 スーパーGTには、ドライビング・モラルハザード防止制度が設けられています。モラルハザードとは保険用語で、「道徳的危険、社会の利益には反するが、個人的には合理的な行動によって生じる危険」という意味です。接触はできるだけしない、というごく当たり前のことから、相手のスピンやコースアウトを誘発する行為は避けよ、というマナーに関することまで、さらには「道を譲りなさい」と指示する青旗を複数回に渡って無視するようなことも、防止しているというわけですね。

 ポイントはポイントでも頂きたくないのは、こういった行為に対するペナルティポイントです。これはシーズンをまたいでも累積される一方で、2レース連続して0ポイントであれば、2ポイントずつ減らされます。内容に対するポイントの紹介は、ここではあえてしませんが、貯まってしまうと公式練習の走行禁止や、次のレースの出場拒否など、かなり罰則は厳しいものとなっています。もし、危険行為でクラッシュさせた相手に、そのあと暴力行為でも振るおうものなら、一発でアウトの可能性も……。もちろん、そんなことは言語道断ですけれど。

もし雨が降ってきたら…

 スーパーGTのドライタイヤは溝が刻まれていないので、排水性が極端に悪く、ウエットコンディションには適しません。しかし、「ちょい濡れ」と呼ばれる、小雨によって路面がわずかに湿った状態においては、高温を維持しているドライタイヤは案外グリップするもの。そこでどこまで踏ん張れるか、ドライバーの力量やメーカーの能力が試されることになります。

 しかし、強く降ってきた場合は、溝の刻まれたウエットタイヤを装着することになります。雨が降れば、当然路面温度も低くなるため、発熱を促すために表面のゴムが柔らかめの傾向にあります。ちなみに、このウエットタイヤはメインポストで「WET」と記されたボードによるウエット宣言が出てからしか使えませんが、本当にポツリときた段階でもう出されます。「このぐらいなら、まだ大丈夫だろう」と勝手に判断されることはありませんので、ご安心を……。また、ウエットタイヤはマーキングされません。

 もっとも、走行中の降雨ならタイヤだけで対処しますが、走行前から降っている場合は、むしろセッティングの変更による対処の方が効果的です。車高を上げたり、足回りを柔らかくしたり、ウィングを立てたりして、最適な状態とした上でコースに車両を送り出すのです。

チェッカーフラッグが振られレース終了

歓声を受けながらレースが終了 【(C)GTA】

 レースの終了は、あらかじめ定められた周回をトップがクリアし、チェッカーフラッグが振られた時点で告げられます。ただし、その前に終了することもあります。アクシデントが発生し、赤旗が振られてしまった場合です。もう続行が不可能となって、その時点で当初の周回を75%以上満たしていれば、レースは成立。ポイントも100%与えられます。問題はそれ以下だった時。2周を超えていればレースは成立しますが、与えられるポイントは50%。いわゆるハーフポイントと呼ばれるものですね。2周を終了していなければ、レースは成立せず、ポイントも与えられないのは、まあ理解できますが……。ちなみに、突然豪雨に見舞われ、ウエットタイヤを装着していてもレース続行は不可能という場合にも赤旗は出されます。

 レース終了後には、あらかじめ定められたパークフェルメという場所で、車両が保管されます。いつまでかというと、正式結果が発表されるまで。また、チェッカーを受ける前にリタイアしてしまっても、スーパーGTの場合は規定周回(当初予定の周回数70%)を満たしていれば、完走扱いになります。

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