熱戦中のスーパーGT、基礎の基礎を紹介 〜そもそもどんなレース?〜

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全8戦で争われるスーパーGTは国内最高峰のモーターレース 【(C)Honda】

 国内でもっとも観客動員を集めるモータースポーツ、それがスーパーGTです。今シーズンは2009年のF1世界チャンピオン、ジェンソン・バトンがフル参戦し一層注目が高まっています。シーズンは全8戦で争われ、ここまで序盤の3戦が終了。これから勝負の中盤、終盤に向けて、スーパーGTの基礎をおさらいしましょう。

全8戦、タイでも開催

 今、国内でもっとも人気が高く、活気に満ちているスーパーGTは、1994年から始まったシリーズです。GTとはGrand Touring(Car)の略称で、モータースポーツ的に訳すると「特殊ツーリングカー」となり、市販車をベースに大掛かりな改造を施したレーシングカーということになります。シリーズ発足当初の名称は全日本GT選手権(JGTC)といい、2005年にスーパーGTに改称されました。これは日本国内に留まらず、広く海外にも舞台を広げようという理由からです。

 現在もタイのブリーラムに設けられたチャーン・インターナショナルサーキットがシリーズの一戦として行われており、過去にはマレーシアでも開催されたことがあります。シーズンは全8戦で争われ、タイの他には国内の6サーキットが舞台です。基本は300キロレースですが、唯一年に2回行われる富士スピードウェイでの春のレースは従来どおり500キロレースながら、夏のレースは500マイル(約804キロ)レースに延長されました。通常は2名のドライバーが組んで戦うレースですが、この2レースのみ3名での戦いが可能となっています。なお、17年まで1000キロレースとして開催されてきた、鈴鹿サーキットのレースは300キロレースに改められました。

ここが違うよGT500とGT300

 スーパーGTの特徴のひとつとして、クラスがふたつに分けられていることが挙げられます。それがGT500とGT300。それぞれの数字は当初、「最大出力がこのくらい」とされていたからなのですが、現在ではその範囲に収まっていません。ことGT500では正確な数値は公表されておらず、せいぜい550PS以上という表現に留まるのみ。GT300も同様です。現在ではパフォーマンスレベルに、その程度の違いがあると解釈したほうがいいかもしれません。ですから、明らかに性能は異なります。

 見分け方はライトカバーとゼッケンベースがGT500の場合は白色なのに対し、GT300は黄色いことです。そして、走り出したら一目瞭然なのは、スピード差が明らかにあるということ。すると、決勝レースではいずれGT500はGT300に追いつく、すなわち周回遅れにしてしまうことになります。その際にひやりとする光景も……。当然、クラスごとに分けてレースをする方が安全ではありますが、当初は一定の台数確保という理由もあったのでしょう。現在では「いかにスムーズに抜いていくか」「いかにロスなく抜かれるか」というスペクタル感を演出するための混走と考えられます。

車両とエンジンについて

 バブル華やかな90年代は、Tカーといってスペアカーの登録も許されましたが、現在のスーパーGTでは一切禁止。大クラッシュをしてシャシーに著しい損傷を負って交換を余儀なくされた場合、次の決勝レース中にピットストップペナルティが課せられます。ただし、接触されたり、コース中のデブリ(ゴミ)を踏んで生じたりと、不可抗力の場合はこの限りではありません。

 また、エンジンも年間に使用できるのは2機まで。では、一方のエンジンが不調だから交換しようとも考えられます。2機使えるのですから。しかし、これも禁止です。エンジンはそれぞれあらかじめ封印され、交換した段階で封印が外されます。ということは、1機のエンジンをなるべく多くのレースで使うことが望ましいわけです。しっかりマネジメントをしても壊れてしまい、規定で定められた2機を使い切った場合は交換することが許されますが、やはり次の決勝中にペナルティストップが課せられます。

多種多彩なGT300

 共通のシャシーに、メーカーごとに仕様は異なるとはいえ2000ccの4気筒直噴ターボエンジンを積むGT500は、できるだけイコールコンディションを保とうとしていることが、理解できると思います。なのに、GT300は出ている車両、スペックはどれもバラバラ! エンジンはフロントに積まれたり、ミッドに積まれたり、またポルシェのようにリヤに積む車両もあります。おまけに排気量も千差万別で、どうやってイコールコンディションになるんだろう……と思う方も少なくないはず。そのために性能調整が行われます。

 その上で、GT300にはJAF−GTとFIA−GT3の2タイプが存在します。その違いを簡単に言うと、JAF−GTは比較的自由な改造が許される一方で、FIA−GT3は自動車メーカーが製作したレーシングカーで、調整以外の改造は不可。ただし、エンジンパフォーマンスではFIA−GT3の方が若干優遇されています。それぞれのメリットは、メーカーが開発費用を負担してくれるのでFIA−GT3の方がイニシャルコストは低め。JAF−GTは絶えず進化が可能だということです。ものづくりを得意とする日本だからこそ、JAF−GTの発想が生きたのです。

結果を大いに左右するGT300のBoP

 さまざまな車両が走るGT300では、性能調整を行なってイコールコンディションを保ちます。それを可能とするのがBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)ですが、車両ごとに定められます。例えば、リストリクターによる吸気制限でエンジンパワーを抑えたり、あるいは最低重量を重めに設定したり。車高を高めに設定することもありますし、ターボ車であったらブースト圧を制限したりします。

 JAF−GTであれば、スーパーGTの統括団体であるGTAによってBoPが定められますが、少々厄介なのはFIA−GT3の方。この決定はヨーロッパでブランパンGTシリーズを統括するSROモータースポーツによるからです。日本とヨーロッパでは単純にユーザー層が異なること、またタイヤや路面、ガソリンの質の違いから、ヨーロッパの実情と日本の実情がそぐわないことが過去に何度もありました。そのため、「今年は当たりだな」とか「今年は外れだ……」と、さまざまな声も聞こえてくるわけです。ただし、極端な差が生じる場合は、GTAによる調整が可能とされています。

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