ロナウドのライバルを寄せ付けない得点力 W杯序盤戦、明暗分かれる各国エースたち

動揺するチームを救ったジエゴ・コスタ

ジエゴ・コスタ(右)は、ロペテギの解任騒動に揺れていたチームを救う活躍を見せた 【Getty Images】

 フランスのエース、アントワーヌ・グリーズマンも、ここまで目立った活躍ができていない。ピッチ上で果たした役割といえば、大苦戦を強いられたオーストラリア戦の先制点となるPKを決めたくらいで、バルセロナへ移籍するかどうかの決断に至る過程を記録したドキュメンタリー映像の話題ばかりが取り上げられている。

 一方で、スペインのジエゴ・コスタはポルトガル戦で決めた2ゴールによって自身への批判を一掃した。彼の活躍はフレン・ロペテギ前監督とレアル・マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長、そしてスペインフットボール協会(RFEF)がもたらした解任騒動に揺れていたチームを救うことになった。

 それにしてもなぜ、レアル・マドリーとRFEFはロペテギのレアル・マドリー監督就任を大会後まで極秘にしておくことができなかったのか。そうすれば、指揮官がレアル・マドリーの選手を贔屓(ひいき)していると疑われることも、国内メディアから冷淡な視線や厳しい批判を向けられることもなく、W杯に集中することができたはずだ。

スペインは監督交代の緊急事態にも屈せず

イエロ新監督(左)の下、スペインは首位通過の可能性を残したまま、第3節に臨む 【Getty Images】

 躊躇(ちゅうちょ)なくロペテギを解任したRFEFのルイス・ルビアレス新会長も、まさかW杯初戦の3日前にレアル・マドリーが新監督の名を公表するとは思っていなかったはずだ。

 レアル・マドリーにそうさせたのは、迅速に新体制を固めるべきだとプレッシャーをかけ続けた地元メディアである。レアル・マドリーは何よりも重要な存在であるという傲慢(ごうまん)な考えがもたらした今回の解任騒動は、大いにメディアをにぎわせた半面、選手たちには大きな動揺をもたらすことになった。ここまでチームをけん引してきた指揮官が、初戦の2日前に解任されたのだから、当然のことである。

 こうした状況下で迎えたポルトガル戦では、開始早々にPKで先制点を奪われる精神的ダメージが追い打ちをかけた。それでもスペインは勝者のメンタリティー、そして何年もかけて培ってきたプレースタイルを武器に逆境を覆し、勝利を手にする寸前まで迫った。

 イランの堅守に苦しめられた第2戦も、幸運な形で生まれたジエゴ・コスタのゴールによって1−0で勝利。ロペテギの解任を受け、急きょ指揮を執ることになったフェルナンド・イエロ監督とともに、スペインはグループB首位通過の可能性を維持して、モロッコとの第3節を迎えることになる。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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