圧勝ベスト8の女子ダブルス穂積、二宮組
“2度目の”グランドスラム準々決勝へ

別々のペアで、力をつけてきた二人

圧勝で第5シードを退け笑顔を見せる穂積(左)、二宮組
圧勝で第5シードを退け笑顔を見せる穂積(左)、二宮組【写真は共同】

 大会第5シードの強豪に、6−1、6−2のスコアで圧勝――。

 それは勝った二人にしても「正直びっくり」(二宮)の結果ではあるが、「終わってみれば、このスコアも納得」(穂積)の試合内容と、二人のキャリアの足跡でもあった。


 日本女子ダブルスとしては、杉山愛/藤原里華以来となる16年ぶりの全仏オープンベスト8進出。しかし穂積絵莉と二宮真琴(ともに橋本総業)にとっては、どちらもグランドスラムで2度目の準々決勝であり、いずれもベストの成績には、まだ勝ち星一つ及ばぬものである。


 穂積は昨年の全豪オープンで、ジュニア時代からペアを組む加藤未唯(ザイマックス)とともにベスト4へと躍進した。その約半年後のウィンブルドンでは、二宮がチェコのレナタ・ボラコバと組みベスト4に勝ち進む。この時の二宮は、ベスト4の好成績にも「まだあの二人に追いついただけ」と、穂積と加藤へのライバル心を顕(あらわ)にした。1994年生まれの彼女たちは、少女時代から互いが互いを意識し、高めあってきた存在だ。


 穂積と二宮が初めて出会ったのは、二人が13歳の時。14歳以下国別対抗戦の、選手選考会の合宿だった。その後も二人はトップジュニアとして、世界の舞台でも活躍。2011年に、穂積が加藤とともに全豪ジュニアのダブルスで準優勝すると、同年の全仏ジュニアで二宮は、尾崎里紗(江崎グリコ)と組みベスト4に。同期に負けたくないという意識は、戦績的には背を追う形となった二宮の方が強かったかもしれない。

 その二宮も、自ら確固たる実績を築いた今は「あの頃とは違い新しい気持ちで臨めている。穂積さんと組んでもっと上に行きたい」との気持ちが強い。苦手意識を抱くクレーコートでの戦いにも、「ジュニアの時にベスト4に入ったんだから、できるんだ」と自分に言い聞かせて挑んだ。今年はフェドカップ(国別対抗戦)の日本代表にも選ばれ、国の命運を懸けたダブルス戦でことごとく勝利をつかんだ戦果もある。「すごくプレッシャーのかかった場面で、自分の良いプレーを出せた」自信こそが、今大会は「いつもと違って、緊張せず自然と試合に入れている」要因でもあるだろう。

策が的中 生かされた明確な試合プラン

互いの経験をもとに立てたプランが的中。次の準々決勝では、第1シードペアが対戦相手だ
互いの経験をもとに立てたプランが的中。次の準々決勝では、第1シードペアが対戦相手だ【写真は共同】

 そんな二宮の存在は、ベスト8を懸けた試合を控え「朝から緊張していた」穂積の心を、和らげもしたはずだ。対戦相手のガブリエラ・ダブロウスキー(カナダ)とシュ・イーファン(中国)はいずれもダブルスの名手だが、穂積と二宮はそれぞれ、異なるパートナーで対戦した経験がある。互いが持つ情報をすり合わせ、明確な試合プランを共有し臨んだ一戦では、立ち上がりから「ダブロウスキーの弱点であるフォアを狙う」「相手の背後をロブで狙う」などの策がことごとく的中した。


「向こうは、慣れないことして崩れてるみたいだね」

「このまま相手のフォアを狙っていこう」


 コート上でも二人は言葉を交わし、同じ標的へと焦点を重ねた。普段は、ベンチでテニスと無関係の話をすることもある二人だが、今大会では試合のこと以外は話していないという。

「余裕ないです」

 穂積が笑い混じりにつぶやけば、二宮が「違う、真面目にやってるんだよ!」と即座に応じた。


 既にグランドスラムベスト4の味を知る二人が、今大会で目指すはそれ以上の高み。つまりは決勝の舞台だが、「決勝行ったら行ったで……」と漏らす穂積の言葉を、「うん、決勝行ったら勝ちたい」と二宮が引き取った。

 その二人の前に準々決勝で立ちはだかるのは、第1シードのクリスティナ・ムラデノビッチ(フランス)/ティメア・バボシュ(ハンガリー)組。


「自分たちの良いプレーができれば、勝てない相手はいない」(穂積)


 踏破してきた道に依拠した自信を胸に、頂点へと続く扉をこじ開けにいく。

内田暁

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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