福永祐一がダービーを勝てた3つの理由 キングヘイローから20年、全ては必然に

山本智行

8枠をプラスに――池添「ユーイチさんが完璧な騎乗をした」

池添(青帽)も舌を巻いた福永(桃帽)の完ぺきな騎乗、8枠17番もかえってプラスとなった 【写真:有田徹】

 不利と言われる8枠17番を引いたのもある意味プラスに働いた。ピンチをチャンスに。これで腹をくくれると私も判断した。「いろんな選択肢がある中、あれで2択になった」とは福永。折り合いを優先することが多かっただけに、私は距離ロスを避けながら中団から後方に待機すると読んでいたが、何と予想を上回る4番手積極策。これには恐れ入った。幾多の挫折と経験のなせる技ではなかったか。

  2番人気で5着に敗れた池添のブラストワンピースは不運が重なった。やや立ち遅れ、直線では福永の好プレーで蓋をされ、内に押し込められ、前が壁になった。しかし、これを予言していたのが“アンカツ”こと安藤勝己さんだ。この日、東京競馬場までの行きの電車でバッタリ会い、ダービー予想。「ブラストワンピースは毎日杯で立ち遅れていた。あのときは内枠で助かったけど、今回は真ん中の枠。両サイドから来られて1コーナーでごちゃつくかも」。

 実際は半ば強引にポジションを取りに行ったが、スムーズに好位につけた福永とは対照的だった。その池添は取材の輪が解けると悔しさを押し殺し「ユーイチさんが完璧な騎乗をした。すべてがかみ合っていた」と勝者をたたえたものだ。

 やはり、ダービーとはそういうものかもしれない。長年挑み続けた橋口弘次郎さんのワンアンドオンリー、横山典のロジユニヴァース、藤沢和師のレイデオロ。振り返れば、すべての道はダービー制覇につながっていた。

 福永はワグネリアンで2戦目を勝ったとき「ダービーを勝たせてくれ!」と友道師に注文を出したという。それほど、厩舎スタッフとの信頼関係ができあがっていた。ワグネリアンの父はディープインパクト、母の父キングカメハメハ、金子オーナー、友道師とすべてダービー制覇と外堀は埋まっていた。「勝ってないのは僕だけ。周りに勝たせてもらいました」とおどけた。

ダービーを勝つために、松田国師「ワグネリアン陣営にはそれがあった」

今週の安田記念もサングレーザーでもう1丁! 【写真:山本智行】

 ダービーに勝つためには何が必要なのか。答えは簡単にみつかるものではない。今回、タイムフライヤーでダービー3勝目に挑み、夢破れた松田国師は「パドックを見て今年は例年以上にすばらしい馬がそろっていた。そんな中でダービーを勝つためには厩舎力はもちろん、何か勢いのようなものが必要。それがワグネリアン陣営にあったということでしょう」と結んだ。

 平成最後の日本ダービーをつかんだ福永祐一。「父が取りたかったダービーを勝てた。福永家の悲願でしたから」。それは偶然ではなく必然だったような気がする。だが、これが終わりではない。新たな時代へ。次なるマイルストーンを刻んでいく。その前に安田記念のサングレーザーでもう1丁。勝ち出したら止まらないのもユーイチだ。

福永祐一騎手のダービー成績

年度/馬名/着順/人気
1996年 騎乗できず
1997年 騎乗馬なし
1998年 キングヘイロー 14着 2番人気
1999年 落馬負傷リハビリ中
2000年 マルカミラー 17着 14番人気
2001年 プレシャスソング 8着 8番人気
2002年 騎乗馬なし
2003年 エイシンチャンプ 10着 5番人気
2004年 メイショウムネノリ 17着 17番人気
2005年 アドマイヤフジ 4着 9番人気
2006年 マルカシェンク 4着 5番人気
2007年 アサクサキングス 2着 14番人気
2008年 モンテクリスエス 16着 10番人気
2009年 セイウンワンダー 13着 3番人気
2010年 リルダヴァル 12着 8番人気
2011年 ユニバーサルバンク 10着 11番人気
2012年 ワールドエース 4着 1番人気
2013年 エピファネイア 2着 3番人気
2014年 レッドリヴェール 12着 4番人気
2015年 リアルスティール 4着 2番人気
2016年 レインボーライン 8着 12番人気
2017年 カデナ 11着 8番人気
2018年 ワグネリアン 1着 5番人気

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著者プロフィール

やまもと・ちこう。1964年岡山生まれ。スポーツ紙記者として競馬、プロ野球阪神・ソフトバンク、ゴルフ、ボクシング、アマ野球などを担当。各界に幅広い人脈を持つ。東京、大阪、福岡でレース部長。趣味は旅打ち、映画鑑賞、観劇。B'zの稲葉とは中高の同級生。

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