西野監督「代表は劇的に変えることが可能」 国際親善試合 ガーナ戦前日会見

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初陣となるガーナ戦の前日会見に臨んだ西野監督 【スポーツナビ】

 サッカー日本代表は30日、日産スタジアムで国際親善試合のガーナ戦に臨む。試合を翌日に控えた29日、日本代表の西野朗監督が会見を行った。

 ガーナ戦はワールドカップ(W杯)ロシア大会のメンバー23人を選ぶ最後のテストの場となる。西野監督は、選考について「苦しみというか、迷いは非常にあります」と心境を吐露。ガーナ戦を「確認したいところもある90分」と位置付け、「とにかく代表チームとしてのスピリットというか、ファイトする代表にしたい」「これで本大会に行くんだという空気を作れる試合にしたい」と意気込みを語った。

 また、代表の雰囲気について「体制が変わって、それだけでも選手たちの意識は大きく変わっている」とコメント。「本質的にサッカーは劇的に変えることが難しいと思いますけれど、代表チームでは可能」と手応えを感じている様子だった。

明日のゲームが全てではない

 皆さん、こんにちは。代表チームは21日から、全員ではないですけれどもキャンプをスタートして、今日が9日目になります。イレギュラーに選手が集まってきて、日に日に代表チームの形になっていく中で、明日、大事な一戦を迎えるわけです。模索しながらチーム作りをしているところで、されど、もう待ったなしでW杯本大会が迫っています。明日のゲーム、しっかりと代表チームらしい戦いをしたいなという気持ちだけです。

 選手のコンディションは、正直、トップフォームの選手もいますし、けがを抱えて入ってきたメンバーもいます。そういう選手たちも明日のゲームに向けて、1日でもという思いで調整している段階です。そしてまた、新しいトライをしている段階でもあります。明日のゲームがどういう形になるのか、もちろん楽しみでもある。そこを感じながら、選手とともに、またさらに良い調整をして、明日を迎えたいなという気持ちでいます。

――明日はW杯メンバーを決める前の最後の試合という位置付けでもある。西野監督の中で23人はどれくらい固まったのか。また、明日の試合でメンバー選考を意識した上で、どの点を重視して選手を見ていきたいか?

 明日のゲームが全てではないです。23人をリストに挙げるという中で、明日のゲームだけではもちろんない。9日間やってきたキャンプの中での状態、期待していた部分、少し猶予を与えて戻ってきた選手、そうでない選手もいます。明日の1試合だけでリストに挙げるということではないです。主力の選手、今まで代表チームの中心となっていた選手に関しては、状態とすれば決して悪くない状態ですので、この段階である程度メンバーは自分の中では捉えています。

 ただ、明日のゲームはそういう選考のテストでもありますけれど、その中で選手を起用していくということももちろん考えています。ゲームから遠ざかっている選手ですとか、けがから復帰した選手もおりますので、そういう意味でのチェックをしたい選手もいます。そういうのも加味した上で、見ていきたいと思っています。

――W杯に向けて3バックのテストをしている。長谷部誠が3バックの中央をやってロベルト・レバンドフスキ(ポーランド)やサディオ・マネ(セネガル)、ラダメル・ファルカオ(コロンビア)と対峙(たいじ)したときに、長谷部が止められるイメージはできているのか?

 ゲームの中で、そういう局面だけではないと思う。今言った1対1の対峙する場面でも、長谷部に関しては決して抑えられないことはないと思っている。どういう局面、状況かにもよりますけれど、1対1で持たれたのか、数メートル離れているか離れていないか、ボールを持っているか持っていないか。そういう状況に応じたクレバーな対応だとか、ボランチを使う、センターバックを使うとか、そういう局面に持っていく中で、彼自身が最終的に対峙しても対応できる。十分に可能だと思っています。

 ただ、その頻度というか、悪い状況の中で長谷部が対応するとなると、これは誰が対応しても、レバンドフスキ、ハメス(・ロドリゲス)かも分からないが、対処は難しいと思います。まず人に対してディフェンスする考え方よりも、ボールに対して全員がディフェンスをしていく中で、そういった局面を少なくしていきたい。

選手たちの意識は大きく変わっている

3バックを導入した経緯について、「いろいろな状況に対応したいから」と説明する 【スポーツナビ】

――欧州視察に行ったとき、代表を劇的に変えたいと言っていた。ここのところパッとしない試合が続いているが、どういったモチベーションで選手を引っ張っていくか。具体的に何を劇的に変えていくのか?

 システムを3バックに変えたからといって、劇的に変わるとは思っていません。選手たちはいや応なしに、体制が変わって新しくリストに挙がってきた中で、代表の捉え方(も変わってきている)。予選を突破して本大会に出場できた昨年9月以降の代表チームのパフォーマンスというのは、W杯イヤーに入っても心配というか、面白くないだとか、この選手のもっと良いところが出てこないのかとか、いろいろ(な声が)ありました。

 その中で体制が変わって、それだけでも選手たちの意識は大きく変わっています。大きく変わった中でもいろいろな反応があって、自分のストロング(ポイント)をいかに出せるか、引き出してもらえるか。そういう中で、日々新しいトライをしている中ですごく感じるところがあります。それだけでも変わると思います。

 選手たちは非常にポテンシャルがありますから、そういうタレントをやはり引き出して、その上でリンクさせる、共通理解を持たせてやらせることができれば、選手の能力は高いですから。そういう結束した力を出せれば、変化していくことは可能だと思いますし、十分、ここ数日、全員がそろってからの中でも成長を感じるところがあります。良い雰囲気でやれていること自体が、変化している部分だと(思います)。されど、本質的にサッカーは劇的に変えることが難しいと思いますけれど、代表チームでは可能だと、非常に感じて今(やっています)。

――西野監督にとって初のメンバー選考。難しさ、苦しみは感じているのか?

 やはり、期待していた選手たちが、期待を感じさせるような状態に日に日になってきているという中で選考をしていかなければいけない。苦しみというか、迷いは非常にあります。ただ、今は明日のゲームをまずしっかり捉えたいなと。選考やサバイバルの雰囲気には言わずともなっていますが、まずはW杯の前に、明日の試合だけに集中して入るよう伝えてきましたので。

 確かに今は23人以上いるわけで、リストに載せるのは決まった数だけ。バランスもありますし、最終的に19日(初戦のコロンビア戦)に、どのようなトップフォームを作ることができる選手なのかというのを、明日のゲームも含めて、明後日の朝に状況が変わってケガとかも予測しなければいけない。明日ベストで戦った上で、翌朝に最終的には、いろいろな状況を考えた中で決めていかなければいけない。その苦しみというか、迷いは続くかなと(思います)。

――練習から見ていて3バックを試してきて、長谷部、本田圭佑は慣れている、やりやすそうなポジションだと感じたが。

 今まで代表チームは4バックで、ポジティブな状況でも、ネガティブな状況になっても、ゲームの中でシステム自体を変えて対応するようなことはなかったと思います。常に「4−3−3」をベースにした中で、選手を替えてきた。ベースの4バック、実質的に4人のフラットなディフェンスラインでやってきたことは染み付いていると思う。それは良い、悪いにかかわらず。ベースとなるものは持っているんです。

 しかし、そういう状況だけで対応はできないと思いますし、3バックも押し込まれれば5バックになって、中盤もフラットな4枚になって「5−4−1」で対応しなきゃいけないこともある。いろいろな変化をもって対応しなきゃいけないと考えています。そういう中で今、この段階で3バックにトライしたい、選手にそういう感覚を持ってほしいと思いながらやっています。

 明日のガーナ戦に向けて3バックにトライしているわけではないし、コロンビアとの初戦でやりたいからかというとそうではなくて、やはりいろいろな状況に対応したいから。そう選手には伝えています。本来、システムを変えていくっていうのは、いろいろな対戦相手、あるいは試合の中での状況によって変えていく、それに選手が対応していく、その中でシステムを変えることも必要。今も右や左や選手をいろいろと動かしていますけれども、選手たちにはそういう中でもスムーズにやれるように、そういう感覚を持ってほしい。対応力を基準に選んだ選手たちなので。

 もうトライなんていう段階ではない。完成させるべく、感覚的に理解してもらうということで明日はやっていきたい。機能しない、ということになってはいけない段階だと。こういう短い間でも、選手たちにはやってもらいたい。

 本田にしても、インサイドのエリアでやることの方が、いろいろな彼の良いところはセンターミッドフィールドでやってもらった方が(生きる)、というのは感じていて。彼にとっては違和感を覚えるようなポジションではないと思う。長谷部に関しても、ポリバレントに前も後ろもできますし、チームのリーダー的にやってもらいたい。そういう発信を最終ラインからやれるスムーズさも感じる。プラスに考えることが多いところがあります。

 まあ難しいところで、ワイドになった選手は、ポジショニングも難しいし、運動量もさらに求められますし、そういう難しさを感じている選手もいるとは思います。でも、難しいとか、選手たちはまったく言わないですね。トライする姿勢でやってくれている。

――現時点では本大会では4バックをベースにやっていくのか、3バックに比重が傾いているのか。また、明日のスターティングメンバーについては、選考を踏まえた11人なのか、それともベストの11人なのか?

 本大会に向けてベースになるかならないかで言うと、コロンビアをやはり想定して考えたいと思います。3バックの良い感触をそれまでにチームの中で得られればいいし、(6月の直前合宿では)4バックを思い出させる、そういうトレーングもあると思います。コロンビアを想定して、4バック、3バック(のどちらでいくのか)。数で言うとそうなりますが、どういう戦い方がベストなのかというのは、今回こういう形でトライした上で、ベースとなるかならないかというところはあります。やはり、コロンビアを意識した現実的な戦い方を踏まえたシステムになっていくのではないかと思っています。

 明日のスタートメンバーは、もちろん確認したいことがあります。大前提としては、今の代表チームはイメージを持たれている (以前の) 代表チームではない。うまく機能するか分かりませんけれど、とにかく代表チームとしてのスピリットというか、ファイトする代表にしたい。これで本大会に行くんだという空気を作れる試合にしたいと思いますし、やはり明後日、メンバーを発表しなきゃいけないというところでの、確認したいところもある90分だと捉えています。
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