世界の“高さ”を攻略せよ! シッティングバレー女子日本代表の挑戦

荒木美晴

座った状態でプレーするバレーボールを行うのが「シッティングバレー」 【写真:荒木美晴】

 リオデジャネイロパラリンピックでは、シッティングバレーボール男子に注目が集まった。イラン代表・メヘルザードは身長246センチ。座った状態でプレーするこの競技だが、彼が打ちおろすアタックは相手チームのブロックにかすりもしなかった。リオ大会で強烈に印象に残っているシーンだ。

 女子も体格に勝る海外勢が世界をリードする。世界の“高さ”をどう攻略するか。日本代表はその至上命題に対し、2020年東京大会に向けた強化を進めている。

 シッティングバレー女子日本代表は陸上・十種競技の元全日本王者でタレントの武井壮さんがパラスポーツに挑戦するNHKの番組に出演。これに同行し、代表の取り組みを取材するとともに、競技の魅力に迫った。

0.1秒でボールが飛んでくるスピーディーな展開

世界の高さに対抗するため、日本代表はフィジカル強化に取り組んでいる 【写真:荒木美晴】

 シッティングバレーは、床にお尻をつき、座った状態でプレーする。国内では障がいの有無に関係なく誰もが一緒にプレーできることから、生涯スポーツとして人気がある。

 試合のルールは一般のバレーボールと同じだが、サーブやブロック、アタックなどで立ち上がったり、飛び跳ねたりしてでん部を浮かすと反則になる。ただし、レシーブをする際は短時間であればでん部を床から離すことは認められている。プレーヤーは、床を蹴って移動しやすいよう、専用のシューズを着用する。側面とかかと部分がゴム製で滑りにくくなっているのが特徴だ。

 ネットは低く設定(男子1.15メートル、女子1.05メートル)されており、コートは縦5メートル×横6メートル。一般のコートより狭い分、選手同士の距離が近く、ボールのつなぎが速くなる。「0.1秒でボールが飛んでくる」というスピーディーな展開は、シッティングバレーならではの難しさであり、面白さだ。また、移動時に脚の代わりに両腕も使うため、全身運動で非常にハードと言われている。

世界で勝つための体づくり

 世界の高さを攻略するため、女子代表は現在、「体づくり」に注力する。とくに重視しているのが肩甲骨の柔軟性を高めるトレーニングだ。肩甲骨の可動域を広げることで、ブロック位置が3〜5センチ高くなるといい、専門のトレーナーの指導で練習時間の多くを割いて取り組んでいる。

 技術面の強化もぬかりはない。世界と戦ううえでは、とくに球際の攻防を制することが大事になってくる。女子代表のキャプテン・西家道代は「相手の動きを先読みし、ブロックアウトを狙うとか、相手の高さを利用するプレーがもっと必要。体幹と手首を鍛え、身長差のハンデを利点に変えていきたい」と、言葉に力を込める。

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著者プロフィール

1998年長野パラリンピックで観戦したアイススレッジホッケーの迫力に「ズキュン!」と心を打ち抜かれ、追っかけをスタート。以来、障害者スポーツ全般の魅力に取り付かれ、国内外の大会を取材している。日本における障スポ競技の普及を願いつつマイペースに活動中

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