中日・アルモンテにジンクスの心配無用 厳しい攻めにも「それでも打つ」

ベースボール・タイムズ

ビシエド、ルナは交流戦を境に急失速

「打てるボールを待って、そのボールが来たら逃さないようにすること」と打席での意識を語るアルモンテ 【写真は共同】

 竜助っ人のジンクス。最たる例はダヤン・ビシエドが初来日した16年のこと。新外国人選手としてはNPB初の開幕3試合連続本塁打を放つなど、3・4月度の月間MVPを受賞する大活躍を見せ、交流戦が始まる前までの52試合で残した成績は打率3割9厘、14本塁打、39打点。得点圏打率も2割9分2厘を誇っていた。

 しかし、そこから極度の不振に陥って交流戦では打率1割8分2厘。リーグ戦再開後からシーズン終了までの間も打率2割7分、6本塁打と開幕直後の勢いを取り戻すことはできなかった。原因の一端は、執拗なまでの内角攻めによって本来の打撃を見失ってしまったとの見解が多数を占めた。

 さらにさかのぼれば13年に来日したエクトル・ルナも似た傾向があった。3・4月に月間打率3割9分8厘をマークすると、5月はさらに上回る4割2厘。ところが右ひざの異常を感じ始めた6月に3割6厘と約1割近くも落とし、7月中旬に登録抹消となってそのままシーズン終了。理由は異なるが、それまで無双状態だった両者がほぼ同時期に不調に陥った点は紛れもない事実。ビシエドにおいてはジンクスという言葉で安易に片付けられるものではなく、対戦データをそろえたライバルチームの戦略に屈したと考えるのが賢明だ。

 ともすればアルモンテにも同じ現象が起こりえないとは言い切れない。そこで“交流戦と6月の壁”を乗り越えるヒントを探っていくとある言葉が浮上した。

「打てる球だけを待つ」信念を貫けるか

「ボールにコンタクトすることを考えているだけだよ」

 アルモンテが殊勲打を放った際、決まり文句のように口にしているワードである。5月12日の巨人戦、7回表に田口麗斗から6号3ランを放った談話も同じだった。その意図は波留敏夫打撃コーチの見立てが明確にする。「厳しい球は見極めて、打てる球が来るまで待つことができる。甘い球が来れば一発で仕留められる」。むやみやたらに手を出すことはせず、捉えられるボールだけをひたすら待つ。そこに迷いが生じていないのは、潔さを感じさせるほどの割り切りがあるからだ。

「いいボールを投げられたら、打つことはなかなか難しい。打てるボールを待って、そのボールが来たら逃さないようにすること。そのための準備はしっかりしているよ」

 アルモンテは凡打に倒れた時、特に三振を喫したときほど視線を落とすことなく、顔を上げて悠然とベンチに戻っていく。その姿こそひとつの結果に感情を乱すことなく、切り替えのうまさがここまでの好調を持続し続けている要因だろう。忌々しいジンクスも確固たる信念の前には意味を成さないことをアルモンテには証明してもらいたいと強く願うばかりだ。

 同19日の阪神戦のお立ち台では先発投手のガルシアに加え、勝利に貢献する一打を放ったビシエド、モヤの3人が脚光を浴びていた。アルモンテは11試合ぶりに無安打に終わり1人蚊帳の外。少し気が引けたものの、試合後に通訳を介して質問ができないかとお願いすると嫌な顔をひとつ見せず、快く応じてくれた。

 データがそろいつつある現状において、対戦相手の攻め方に変化を感じるか。そして、攻略しようとする相手を上回るために必要だと思うことは――。質問の意図を理解して一瞬苦笑いをしたのは、どこまで話そうか迷ったからだろう。それでも可能な範囲で精一杯の返答をくれた。

「お互いに駆け引きをしている部分だから詳しいことは明かせないけど、たしかに攻め方は変わってきているよ。でも、どんなにいいピッチャーでも魔球を投げるわけじゃないからね。ストレートにスライダーやチェンジアップといろいろな変化球を交ぜながら、アウトを取るためにいろいろと考えてくるけど、ボクがやるべきことはそれでも打つことさ。大事なことは今までと同じルーティーンで練習することだね」

 すでにアルモンテは他球団が対策を講じてきていることを実感している。それでも「問題ない」と言わんばかりに自信ありげな表情でトレードマークの顎ひげを触っていた。

“ジャパニーズ・ベースボール”の本当の洗礼を受けるのはこれからだが、今と変わらず飄々(ひょうひょう)と相手のもくろみを凌駕(りょうが)してくれるに違いない。むしろ壁に直面したアルモンテを見てみたいとさえ思う。さすれば第3の姿とでもいうべき進化を遂げ、竜の“黒ひげ”はだれも止められないほどの無双状態に――。そんな過度な期待をしてしまうのは、やはりあの雄々しい“ひげ”のせいだろうか。

(高橋健二/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

ベースボール・タイムズ

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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