【台湾プロ野球だより】16年ぶり6球団制、ファン待望の台北ドーム開催でCPBLは新時代へ

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3月30日の開幕戦、台北ドームにはCPBL史上最多となる28,618人のファンがつめかけた。 【写真提供:CPBL】

 35年目のシーズンを迎えた台湾プロ野球(CPBL)、今季は一軍6球団制の復活、さらには待望の室内球場、台北ドームの運用と、新時代の幕開けともいえる1年となる。

 16年前の秋、八百長問題など不祥事の影響で2球団が解散、一時はリーグ存続の危機も叫ばれただけに、この約10年、各方面の努力により、取り巻く環境が大きく改善、2019年の味全ドラゴンズの「復活」、そして2022年の台鋼ホークスの参入により、今季、6球団制が復活したことは喜びに堪えない。

 また、ファン待望の台北ドームも、紆余曲折の末、昨年12月に完成し、今季からCPBL公式戦で使用されることとなった。そもそも、台北ドームの建設指示が出されたのは、東京ドームの竣工から数年後、1991年の台湾シリーズ第7戦、大雨で試合が1時間以上中断した際に、ファンが観戦中だった当時の行政院長(首相に相当)に向かって、「私たちもドーム球場がほしい」と叫んだことがきっかけだった。

 「こけら落とし」となった昨年12月のアジア選手権の開幕セレモニーで、王貞治氏が「アジアNO.1のドーム球場」と絶賛した台北ドーム。高温多湿で雨にたたられやすい台湾において、快適なドーム球場というだけではなく、死角が少なく試合が見やすいスタジアムとして既にファンから高い評価を得ている。今季はいずれの球団の本拠地でもないが、味全ドラゴンズと中信兄弟を中心に、全6球団、計35試合開催される。

 一定年齢以上のファンにとっては16年越し、ないし32年越しの思いがつまった今シーズン。観客動員は好調で、開幕から約3週間、4月17日まで38試合の合計観客動員数は延べ32万980人。1試合平均8447人と、史上3位だった昨季の1試合平均6,000人に比べ、約40%増となっている。

 新しいステージに入ったCPBL、この盛り上がりをレベルアップにつなげ、11月のプレミア12での好成績へとつなげていきたいところだ。話題盛りだくさんの2024年の台湾プロ野球、開幕特集の前半では、6チームの今季初戦の模様を中心にご紹介しよう。

台北ドームでの開幕戦は、CPBL公式戦、史上最多記録となる28,618人入場

 3月30日、台北ドームで開幕戦、楽天モンキーズ対味全ドラゴンズの試合が行われた。CPBLでは前年の台湾シリーズ出場2チームが、他チームに先駆け、優勝チームの本拠地で開幕戦を行うのが恒例だが、味全は昨季、台湾王者を決めた天母球場ではなく、台北ドームを開幕の地に選んだ。

 最も安い外野席でも台湾元500元(日本円約2380円)、バックネット裏に至っては同1880元(同8900円)と、通常時の2~3倍という特別価格であったにも関わらず、開幕戦かつ、台北ドーム初のCPBL公式戦とあり、発売前から大きな話題となり、CPBL公式戦史上最多となる28,618人のファンがつめかけた。

 まっさらなマウンドに立ったのは、アジア選手権の開幕戦でも先発した台湾球界期待の右腕、「龍之子」こと23歳の徐若熙だった。楽天の先頭、陳晨威に対する初球は外角に外れたが、二球目、147キロの直球でショートゴロに打ち取ると、二番の林立に対しては2-2から150キロのストレートで見逃し三振、場内は地鳴りのような大歓声に包まれた。徐は続く三番の梁家榮にCPBLドーム初ヒットとなるライト線二塁打を浴び、さらに四番の廖健富にもセンター前に運ばれたが、郭天信がレーザービームで生還を阻止、2回以降はヒットを許さず、結局、5回、被安打2、5奪三振、無失点と好投。昨年の台湾シリーズMVPが開幕投手の責任を果たした。

 味全打線は2回裏、楽天の先発、ペドロ・フェルナンデスから、捕手の蔣少宏のタイムリーで先制すると、5回裏には2年連続HR王の吉力吉撈.鞏冠の犠飛などで2点追加、6回以降は3投手のリレーで楽天の反撃をかわして3-2で逃げ切り、台北ドームでの開幕戦を勝利で飾った。

中信兄弟・平野恵一新監督、僅差制しての勝利に充実感

 翌3月31日、本来は6チームが揃い、CPBL史上初となる三球場同時開催の予定だったが、「第6の球団」台鋼ホークスの初戦、楽天戦(新荘)は試合前の豪雨により中止となった。

 あらためてドームの重要性が感じられた中、その台北ドームで行われた中信兄弟対味全の一戦は、中信の曾頌恩が0-1で迎えた5回表、「CPBLドーム1号HR」となるレフトへの同点ソロ、さらにFA加入の陳俊秀が6回と8回に2本の二塁打で追加点に絡む活躍をみせた。投手陣も僅差を守り、最後はセンター岳政華のファインプレーで味全に3-2で辛勝、平野新監督に初勝利をプレゼントした。

 試合後、「嬉しいという気持ちよりは、始まったなという感じです」と語った平野監督。ウイニングボールは、7回1失点と好投した先発のダニエル・メンデンにあげると語るなど、監督初勝利にも大きな喜びはみせなかったが、「僅差のゲームで強くなる、うまくなる、自信をつけると言ってきたことが、開幕戦からできたことは良かった」と、試合内容については充実感をにじませた。

 一方、南部・台南市の台南球場で行われた富邦ガーディアンズ対統一ライオンズは、昨年11月のアジアプロ野球チャンピオンシップ(東京ドーム)で、侍ジャパン相手に6回一死までパーフェクト、6回3分の1を1失点と圧巻の投球で、日本のファンにも強いインパクトを残した統一のエース、古林睿煬が、5回、被安打4、無四球、奪三振9、無失点と上々の内容で、チームを勝利に導いた。

3月31日、CPBLドーム第1号HRを放った曾頌恩(中信兄弟)。昨季まで通算3HRだったが、今季は開幕10試合で5HRと絶好調だ。 【写真提供:CPBL】

今季から一軍参入の台鋼ホークス、「大王」王柏融の勝ち越しタイムリーで初陣飾る

 4月3日、今季から一軍に参入した台鋼ホークスが、ようやく初戦を迎えた。この日の朝、台湾東部、花蓮県沖を震源とする大地震があり、16日から24日にかけ花蓮で予定されていた7試合も他球場での開催となった。台鋼は被災地支援の為に、義援金台湾元1000万元(日本円約4760万円)を寄付した。

 今回の地震は台湾全域で激しい揺れを感じ、止まらない余震に人々は怯えたが、幸いにもこの日開催予定だった西部の三球場に被害はなく、安全検査を行った上で予定通り開催された。

 2022年、「第6の球団」としてリーグへ参入した台鋼は、2度のドラフト会議と拡張ドラフトで獲得した若手、他チームでレギュラーを獲得できなかった選手が大半であるなか、昨季、二軍公式戦では、終盤の追い上げで2位に滑り込み、二軍チャンピオンシップを制覇。さらに、アジアウインターリーグでも粘り強い戦いをみせ、優勝を果たした。しかし、レベルの異なる一軍で戦っていく為、昨季途中からオフにかけ、巧みなトレード戦略に加え、保留者名簿を外れた選手やFA選手など経験あるベテランを多数獲得し、戦力を高めてきた。

 こうしたなか、ホークス打線の軸と期待されるのが、昨季まで北海道日本ハムでプレー、6年ぶりに台湾球界に復帰した「大王」王柏融と、チーム初の外国人野手、かつて中日やオリックスでプレーした、「魔鷹」ことスティーブン・モヤである。

 王柏融は2018年オフ、当時のラミゴモンキーズから、ポスティングに相当する制度で日本ハム入りしており、本来は後身の楽天に復帰するはずであった。しかし、台鋼は昨年8月、楽天との間で、直前のドラフト会議において1巡目1位で指名した元メジャーリーガー林子偉と、楽天3選手との「1対3」トレードを決行。ここに、将来、王柏融が帰国する際の「契約所有権」譲渡も加えるという、前例のない交渉をまとめ、結果、「台鋼大王」が誕生することとなった。

ラミゴ時代の恩師、洪一中監督からキャプテンに指名された「大王」王柏融。チーム初戦で勝ち越しタイムリーを放ちMVP、2戦目でチーム1号HRを放つなど、若いチームを牽引している。 【写真提供:CPBL】

 4月3日、台北ドームで行われた中信兄弟との一戦は、中信が2020年、2021年の年間MVP、ホセ・デポーラ、台鋼が江承諺と両左腕が先発。この江承諺も、オフに拡張ドラフトで富邦から獲得した元埼玉西武の郭俊麟とのトレードで、統一から獲得した投手である。

 18,072人のファンがつめかけたこの試合、2回表、先頭のモヤがセンター前に記念すべきチーム初ヒットをマークするも得点はならず、中盤まで両先発の投げ合いとなった。6回に両チームが1点ずつ取りあって迎えた7回表、台鋼は替わった王凱程から二死1、2塁のチャンスをつくると打席には王柏融。2-1のバッティングカウントから、141キロの直球を叩くと、セカンドの頭を超えるライト前への勝ち越しタイムリーとなった。台鋼は8回にも、この日のスタメンでは数少ない生え抜き、トレーナー契約から支配下まで這い上がった葉保弟の二塁打などで2点追加、4対1で逃げ切り、初陣を勝利で飾った。

 監督としては史上最多の通算992勝目ながら、新生・台鋼ホークスでは初勝利の洪一中監督は「まさか初戦から勝てるとは思わなかった。選手たちの成長をみることが一番嬉しい」と目を細めた。「これからまだ119試合ある。この1勝で満足してはいけない」と気を引き締めたものの、選手たちの健闘に終始ご機嫌だった。

 歴史的なチーム初のMVPには王柏融が輝いた。オープン戦では20打席ノーヒットもあり、打率.120と調子が上がらず、ファンをやきもきさせたが、試合後、5年間のブランクは大きく、調整段階だったと強調。そして、勝ち越しタイムリーの心境を問われると「チームの初戦で、得点圏で仕事ができて興奮した。ドーム球場で多くのファンの前でプレーすること自体には慣れてはいるが、応援のスタイルは違う。故郷でプレーできてとても幸せだ」とはにかんだ。

 翌4日の中信兄弟戦では、1対3で迎えた5回表に、「チーム1号」となる同点2ランHRを放った王柏融。チームは開幕から4勝2敗と上々のスタートをきったものの、そこからは6連敗。早くも「一軍の壁」を感じる苦しい状況となっているが、キャプテンとして、背中で若い選手たちを引っ張っていってもらいたい。

 台湾プロ野球開幕特集、次回の後半では、日本人指導者や選手に関する話題、今季から採用の新ルール、プレミア12に向けた動きなどについてお伝えしよう。

文・駒田 英(情報は4月17日現在のもの)
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