中日・アルモンテにジンクスの心配無用 厳しい攻めにも「それでも打つ」

ベースボール・タイムズ

打率と長打のハイブリッド型スイッチヒッター

パワーだけでなく、確実性も併せ持つスイッチヒッターのアルモンテ 【写真は共同】

 ハイアベレージを残しながら、一発の長打力も兼ね備える。最大の魅力は、驚異的な勝負強さ。今季、中日に新加入したソイロ・アルモンテのここまでの成績(5月21日時点)は、打率3割5分2厘、7本塁打、30打点。得点圏打率はセ・リーグ2位の4割5分9厘。4月7日の阪神戦から同13日の横浜DeNA戦まで6試合連続で打点を挙げた時期もあった。勝負強さの秘訣については、土井正博打撃コーチが「自分のポイントを持っている打者。投手が打ち取ろうとする決め球をつかまえるのがうまいから、チャンスほど打てる」と明かしている。

 アルモンテを語る上で忘れてはならないのが、スイッチヒッターとして左右のどちらに偏ることなく結果を残していること。左打席で5本塁打を放ち、4月12日の東京ヤクルト戦ではナゴヤドームの5階席に運ぶほどのパワーがある。一方の右打席は、左打席よりも約4分上乗せした打率3割7分7厘をマーク。左のアルモンテが長距離砲で、右のアルモンテはアベレージヒッター。どちらのアルモンテが打席に立っても期待値が下がることはない。じつに頼もしい二面性だ。

コーチの言葉に素直に耳を傾ける姿勢も

 メキシカンリーグでプレーをしていた昨季は、打率3割5分5厘、15本塁打の好成績を残し、前年の打率2割8分5厘から調子を上げた状態で新天地に日本を選んだ。ただ、MLB時代の2013年にはヤンキースでイチローと1、2番を組んだこともある元メジャーリーガーである。ともすれば外国人選手にありがちな“厄介なプライド”が成功の妨げになることを危惧してしまうのだが、その心配は無用。そう思わせたのは短所との向き合い方にある。

 アルモンテの短所とは広島との開幕カードで露わになった守備力だ。初戦で不用意な本塁返球が打者走者の三塁進塁を許した直後に決勝打につながり、第3戦に許した決勝二塁打も一歩目を前に出たことで頭上を越されたことによるものだった。チームの足を引っ張りかねない問題であったのだが、アルモンテ自身がこの課題について改善の必要性を最も感じていた。

 本拠地開幕戦を前日に控えた4月2日のナゴヤドーム。アルモンテは全体練習の中で長嶋清幸外野守備走塁コーチから個別で守備の指導を受けていた。内容は基本に立ち返ったもの。構え方に始まり、打球に対する一歩目の動きから追い方であった。

「日本の野球は今までやってきたものと全然違うと感じた。次の塁を積極的に狙う姿勢や細かいところを突いてくるあたりとかね。それに対応していくには練習をしなければ良くならない」と語るように、弱点克服のためコーチ陣の教えに真摯に向き合う姿勢があったのだ。

 打撃で申し分のない結果を残しながら、それにあぐらをかいて慢心することはない。不安要素を探し出すことのほうが難しい現状にありながら、それでも見えない恐怖に駆られてしまうのは、ここ数年の中日の助っ人勢がたどった道とダブってしまうからだ。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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