大坂なおみは“なおみ・キャンドル”!? 松岡修造が語る全仏テニス見どころ
ツアー初優勝を飾るなど、強さを見せている大坂なおみ(右)。グランドスラム優勝への期待も高まるばかりだ。写真左はサーシャ・バインコーチ 【写真:Shutterstock/アフロ】
日本テニス協会強化本部副本部長で今大会のWOWOW解説を務める松岡修造さんが思う、選手たちが実力発揮するために大事な事とは。そして選手時代に体感した、全仏コートの特徴とは。
(取材日:5月1日、本文中の世界ランキングは掲載日時点のもの)
大坂なおみに高まるグランドスラム優勝への期待
世界が期待をしていますよね。グランドスラムでインディアンズウェルズ(優勝したBNPパリバ・オープン)のようなテニスをしたら負けようがないです。相手が守りだろうが、攻撃だろうが関係ありません。
――昨年と今年でどんなところが違うと思いますか?
コーチが変わって、メンタル面でより楽しくできるようになった、トレーニングも体幹を増やした……いろいろな捉え方があると思います。でも僕から見たら全然変わったように見えないです。パワーも全然変わっていません。ただ安定したという感じがします。大事なときのポイントがすごく上手くなっている。
彼女のいろいろな試合を見ていると、精神的な面も含めてアップダウンがすごく激しい。でもこれが大坂さんの良さ。昔のセリーナ選手やビーナス選手のウィリアムズ姉妹(ともに米国)と同じように、これから少しずつ波が安定してきたときには、世界のトップも十分可能性があると思います。
グランドスラム優勝の可能性という質問に関しては、「何回優勝できますって言えばいいですか?」と逆に聞きたくなります。優勝できないわけがないですから。
――近い将来……もしかしたら今年、グランドスラム優勝が見えると思っていい?
可能性としたらあります。特に彼女が好きなハードコート、そしてウィンブルドンであのテニスができたら。これだけは、疑問にも思わない感覚です。
大坂を表現するなら“なおみ・キャンドル”!?
大坂なおみの活躍について、松岡さんは「安定感」をポイントに挙げる 【写真:Splash/アフロ】
決して悪いとは思わないのですが、経験という捉え方をしたときにどうか。全仏では雨が降る、ボールが重くなる、状況が変わる、中断があるといった状況があります。そういったときに彼女の捉え方がどうなるか。
僕が彼女を表現する言葉は“なおみ・キャンドル”です。彼女は心の炎をすぐに消すタイプです。灯りがともったときの彼女の輝き、テニスもメンタルも含めてすべて、こんなに輝ける選手はいない。だからなおみはずっと輝いていないといけない、それができたら優勝する可能性が本当に高いです。
――戦術面で大坂選手らしさを出し続けるには、こういうプレーが必要などありますか?
彼女もコーチも、戦術面をすごくやっていると思いますが、僕から見ると戦術がないように見えます。でもそれが相手にとって、予想不可能で一番怖い。
一番の安定感を感じるのはバックハンドです。すごく安定してきて、しかもストレートがすごくキレていました。(大坂側から見て)左側にアウトする、キレていくボールが(コートに)入るようになってきました。体幹というのが大きいと思います。
それから(相手の戦略で)走らされたときが変わりました。今まで走らされたときにはポイントを失っていましたが、今はそこから踏ん張れるようになってきた。それが1番彼女の自信にもなってきているでしょうね。
あと赤土の場合は、天候によってものすごく状況が変わります。普通だったらポイントが決まっているはずなのに(ボールが)返ってくる、普通だったら完全に自分のペースになるはずのときにならないという事がある。大坂選手はどんどん“キャンドル”が消える状態になるかもしれない。そのキャンドルの火をどれだけ消さずに踏ん張れるかが大事だと思います。
――コーチが変わった事の影響は感じますか?
そうですね。彼女がもっともリラックスして、自分らしいプレーをしやすかったと思います。前コーチのデビッド・テーラーを僕はよく知っていますが、本当に良いコーチです。テニスの事をどっちが分かっているかと言ったら、もしかしたらデビッドかもしれない。
現コーチのサーシャ・バインの場合は、元々はセリーナ・ウィリアムズ(米国)のヒッティングパートナー。ただ、コミュニケーションの取り方や伝え方がうまいのだと思います。特に大坂選手の様な特別なフィーリングを持った選手とは合ったのかもしれない。それによって彼女の良さをコートの上で引き出す。そういう話術とか、それもコーチの大事な部分のひとつですね。