錦織らしい「攻撃的なフォア」復活に期待
松岡修造が語る全仏テニス見どころ
ツアー復帰後初のグランドスラムに臨む錦織圭。本来のテニスを取り戻すために必要なポイントとして、松岡修造さんは「フォアの感覚」を挙げる
ツアー復帰後初のグランドスラムに臨む錦織圭。本来のテニスを取り戻すために必要なポイントとして、松岡修造さんは「フォアの感覚」を挙げる【写真:Shutterstock/アフロ】

 赤土のコートで選手たちが躍動する。四大大会のひとつ「全仏オープン(以下、全仏)」が5月27日から6月10日、フランスのローランギャロスで行われる。

 日本テニス協会強化本部副本部長で、今大会のWOWOW解説を務める松岡修造さんによると、今大会の注目ポイントは「誰が王者ナダルを倒すのか」。そしてその筆頭候補には、錦織圭(日清食品)の名前も挙げられるという。4月のマスターズ1000モンテカルロ・オープンで準優勝を果たすなど、復活ロードをひとつひとつ歩んでいる錦織。復帰後、最初のグランドスラムとなる全仏を戦う上での鍵となるものとは?

(取材日:5月1日、本文中の世界ランキングは掲載日時点のもの)

予想より「素晴らしい」 錦織の復帰ロード

――松岡さんが今季、注目しているところは?


 赤土に関してだけ言うと、「誰がナダルを倒すのか」です。僕が見ている限り、崩しようがない。可能性があるのはフアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン、世界6位)か錦織圭です。


 ただ、錦織選手の場合は限定的です。1つは体力的、精神的にしっかりしたものが付いてくるか。それに加えてフォアハンドの強打ですね。けがをしてから本来の強打にはなっていません。

 フォアに関しては(決勝に進出したモンテカルロOPの)序盤で無理をしたと思います。フォアの感覚ができていないながら無理をして打ってミスをしたから、(大会の後半では)それ以上は打てなくなってしまった。そのフォアが(試合でもっと)入ってくれば、優勝の可能性としてはあると思います。


 デルポトロも全部フォアの強打を打ってきます。バックハンドもだいぶうまくなっている。合わせるだけでなくて、ストレートに関しても少し回転をかけられるところまでもってきているので、ナダルに勝つとしたらこの2人しかいないと思います。


 本当はここにアレキサンダー・ズベレフ(ドイツ、世界3位)とかドミニク・ティエム(オーストリア、世界8位)も挙げたいのですが、彼らの経験値と総合力と考えたら、今の攻撃が主体のナダルには勝つのは難しいと思います

 モンテカルロの試合を見ていても、ナダルは(相手に攻められて)“走っている”感覚がありませんでした。相手に押されている場面でも(攻撃的に)打っている。バックハンドでクロスコートに打つボールが、特に良くなりました。(相手からしたら)単にコートに入れるバックハンドが返ってくると思っている場面で、むちゃくちゃ攻撃をしてくるので、落ち着いている時間がなかったと思います。

4月のマスターズ1000モンテカルロ・オープンでは決勝に進出した錦織(右)。決勝でナダルに敗れたものの準優勝の結果を残した
4月のマスターズ1000モンテカルロ・オープンでは決勝に進出した錦織(右)。決勝でナダルに敗れたものの準優勝の結果を残した【写真:Splash/アフロ】

――1月にツアーに復帰した錦織選手。4月のモンテカルロで準優勝していますが、ここまでの調子を見て、復帰後の様子は予想に比べていかがですか?


 素晴らしいのではないでしょうか。(グランドスラムに次ぐ格付けの)ATP1000で決勝まで行って、しかも本当に強い選手たちに勝っていった(※編集部注)。

 ただ本来の錦織選手のテニスでは、まだなかったと思います。それでもなぜあそこまで頑張れたかというと、今まで取り入れなかった種類のトレーニングをして、それによって体幹も良くなって、スイングスピードも変わってきて、安定感があった。だからこそ、あのバックハンドの良さが出たと思います。


※1回戦トマーシュ・ベルディハ(チェコ)、2回戦ダニル・メドベージェフ(ロシア)、3回戦アンドレアス・セッピ(イタリア)、準々決勝マリン・チリッチ(クロアチア)、準決勝ズベレフ、決勝ナダルとそれぞれ対戦。


――けがをする前より、むしろプレーが良くなったという印象ですか?


 モンテカルロに関しては、今までとは違ったテニスをしていた印象です。フォアの強打で攻めるというよりも、ループ系でしっかりとボールを(コートに)入れていってバックハンドで攻めていく、今までとちょっと違った形のテニスでした。それができたのは、進化したトレーニングがあったからだと思います。でも本来の錦織選手の超攻撃的なテニスというのは、フォアが組み合った時だと思います。


――本来の錦織選手のテニスをするには、けがをした手の状態が鍵にはなりますか?


 手が痛いから打てないというようには、僕は見えなかったですね。それよりやはり、フォームも含めてフィーリングだと思います。特にフォアを打つ際に体が早く開いてしまうという感覚は、徐々にベストに近づけていくもので、すぐには直らないと思います。


――とは言え、今の結果は「素晴らしい状態」だと言うこと。今回の全仏も楽しみですね。


 それはもう間違いなく優勝候補の1人だと思います。全員が認める優勝候補としての可能性がある。でも、そのパーセンテージが昨年よりは低いだろうなと思います。


――そこは対戦カードや、試合時の状態にもよる?


 そう思います。でも今回は、アンディ・マリー(英国)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、スタン・ワウリンカ(スイス)の調子が上がってきていない。そう考えると、ものすごく優勝に向けては良い大会という捉え方もありますね。本当にあとはナダルですね。


――ナダルは2016年後半から17年序盤にかけて、けがによる休養のため、一時ツアーを離れました。その後のナダルは、以前よりも強くなった印象ですか?


 まさにけがをしていたというよりも“休養”をしていた感じですね。ハードコートシーズンは負担が掛かるから、フェデラーが土をやめるのと一緒、そういうプレースタイルになっていく選手が多くなっていく気がしています。ランキングを気にするというよりも、自分が得意な分野だけ出てきますよというような。シーズンの戦い方の、新しいひとつの形ですね。

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