出遅れたT−岡田に復調気配 バッティング変えた秋山幸二氏の言葉
秋山氏のヒントから2日後に1試合2発
秋山氏から言葉をかけられたのは5月4日。8年ぶりのマルチ本塁打は5月6日に放った 【写真は共同】
「秋山さん曰く、『人間が本当に集中できるのは一瞬。だから、打席で打者が全神経を注ぐべきは、投手のリリースから、スイング時のインパクトの瞬間までの時間』だ、と…」
この言葉をもらった2日後に、8年ぶりの1試合2発を放った事実は、この稿の冒頭で記した通りである。
では、秋山氏の言葉のどの部分に、T−岡田の心は動いたのか――。
「確かに、打者は投手が投げた後に、アクションを起こす。常に受け身なんです。だから、相手のリリースに集中しないといけない。調子が悪い時に限って、投手よりも先に動いてしまう傾向があった。実際、いろいろ自分主導で動きたい気持ちがありました。そう、受け身でいいんだって、あらためて気づかせてもらったんです。そうやって打席に立っていると、タイミングも合いやすくなりました」
本塁打より優勝に飢えるT−岡田
1000試合出場を果たして、程無く訪れる次なる節目は1000安打(現在は通算959安打)という通過点だろう。だが、そんな勲章よりも彼には優先させるべきものがある。“ホームランは野球の華”とは、この世界の常とう句ではあるが、T−岡田はその華を追い求めることに固執してはいない。迷いながらも進化を求めて止まないチームリーダーは、誰よりもチームの勝利に飢えている。「勝ちたい! 優勝したい!」との想いは、チームの誰よりも強いのだ。
どこまでも慎重な彼の口から景気の良い“全開宣言”は、この先もなかなか聞かれることはないだろう。だが、それは決して停滞ではない。理想のスイング、打球を追い求めて、藤井コーチとの二人三脚を続けながら目指すもの。それは「ここ一番での勝利を決する一打」、そしてその先にあるチームの勝利である。オリックスの巻き返しとT−岡田の復調は、今後の戦いの中でシンクロしてくるはずだ。それがいつになるか。ファンは今か今かと待っている。
(大前一樹/ベースボール・タイムズ)