出遅れたT−岡田に復調気配 バッティング変えた秋山幸二氏の言葉

ベースボール・タイムズ

1000試合出場を自ら祝う1試合2発。開幕2軍スタートと出遅れた男の本調子が戻ってきた 【写真は共同】

痛かったキャンプでの離脱

 大型連休最終日の5月6日、T−岡田は今季初のマルチ本塁打で自ら1000試合出場という節目の試合を祝った。

 意外にも2打席連発は8年ぶりのこと。「(バッティングの状態は)やっと、ですかね」と本人は“はにかんだ”が、オリックスにとって欠かせない主砲の遅ればせながらの覚醒と見ていいだろう。そう、オリックスの今後の反攻は”浪速の轟砲”が火を吹かないことには始まらないのだ。

 プロ13年目の30歳。チームリーダーとしての責任感は人一倍強い。その彼が「キャリアハイを!」と意気込んで臨んだ今季だったが、最初の躓き(つまずき)はキャンプ序盤に訪れた。昨年暮れのトレーニングで右わき腹を痛めると、1月の沖縄での自主トレでの”追い込み”もあって患部の状態は改善されないまま、迎えたキャンプイン。第2クール初日から別メニューでの調整となってしまったのだ。

 彼の離脱を一番悔しがったのは、8年ぶりに打撃コーチとして古巣に復帰した藤井康雄コーチだった。「実は、キャンプでTの指導ができなかった。去年まで敵側(福岡ソフトバンク)のベンチから彼の打撃を見ていて思うところがありましたから、残念でしたね」。結局、キャンプ期間を通して師匠が弟子を指南する光景を目にすることはほとんどなかったのである。

わずかなスタンス変更で手応え

 それでも徐々に体調は快方に向かっていたが、そんなT−岡田に次なる厄災が振りかかる。3月7日の教育リーグで頭部死球のアクシデント。診断は打撲。幸い大事には至らなかったものの、それでも主砲の1軍復帰までのプランに大きな狂いが生じたのは事実だった。そして3月25日、オープン戦最後の試合の終了後、首脳陣は背番号55の開幕2軍スタートを決めたのだった。

 3月30日、福岡での開幕戦。チームは大砲不在が響き、ソフトバンクの千賀滉大の前に打線が1安打と沈黙。すると開幕2戦目に、“1試合遅れ”でT−岡田が戻ってきたのだ。実はこの一手、初戦のシャットアウト負けを受けての窮余の策ではなかったことをここに記しておかねばなるまい。「1軍が開幕する前、ファームの、確か名古屋での試合の時に『(開幕)2戦目から、行くぞ!』って言われていて準備はしていました。一人で新幹線に乗って、福岡に入って、さすがに寂しかったです(苦笑)」。しかし、1軍に合流は果たしたものの、なかなか一発が出ない。ボールが上がらないのだ。

「僕らが目指す形になってこない。上(半身)と下(半身)の連動が上手く合わない…」と藤井コーチの歯切れも悪かった。「タイミングがとれない。強いスイングにならない」。そんな悩める主砲が、あるヒントを得たという。それは、今季初本塁打を放つことになる試合前のフリー打撃の際にひらめいた。

「試しにスタンスを少しだけオープンにしたんです。ピッチャーに、正対する感じに。そうしたら、ボールの見え方がずいぶん変わってきましたし、タイミングもとりやすくなりました」

 この時、T−岡田は自打球を当てたことで右足親指の爪がはがれかけていた。「痛みがあって、走れないというより走りたくない」。そんな状況の中、彼は練習中に試したオープンスタンスからのスイングで、ライトスタンドにまで届くラインドライブを放ってみせたのだ。その段階で、自らの打撃を「まだ60%」と評したが、手応えを感じ取ったのは事実で、以降も“控えめ”なオープンスタンスを続けている。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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