雨も運も味方、ジュール遅咲きのVM勝利 出走馬決定賞金順・最下位からの大逆転

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重賞初勝利をGIの大舞台で

雨中の激闘、幸騎乗の8番人気ジュールポレール(黒帽子)がハナ差で1番人気武豊リスグラシュー(手前)を抑え、ヴィクトリアマイル勝利! 【写真は共同】

 春のマイル女王決定戦、第13回GIヴィクトリアマイルが13日、東京競馬場1600メートル芝で行われ、幸英明騎乗の8番人気ジュールポレール(牝5=栗東・西園厩舎、父ディープインパクト)が優勝。中団追走から鋭く差し切り、重賞初勝利をGIの大舞台で飾った。やや重馬場の勝ちタイムは1分32秒3。

 ジュールポレールは今回の勝利でJRA通算14戦6勝。騎乗した幸、同馬を管理する西園正都調教師ともにヴィクトリアマイル初勝利となった。

 なお、武豊騎乗の1番人気リスグラシュー(牝4=栗東・矢作厩舎)はハナ差届かず、4度目のGI・2着惜敗。さらにクビ差の3着には北村友一騎乗の7番人気レッドアヴァンセ(牝5=栗東・音無厩舎)が入った。

「“勝っていてくれたらいいな”と」

 芝・ダート合わせて6頭のGI馬がそろった実力伯仲の牝馬マイル頂上決戦。勝ったのは、GIどころか重賞も未勝利の伏兵だった。今度こその戴冠をと、猛追してきた武豊リスグラシューをハナ差抑えての下克上。殊勲の鞍上、幸はゴール板を過ぎてもどちらが勝ったか分からなかったという。

「ハッキリ言って、分かりませんでした。“勝ったかな?”というよりは“勝っていてくれたらいいな”と思っていたんですが、こちらは馬体も大きくないですから外に差されているかもと思っていました」

 そんな思いを抱きながら、向こう正面から引き返すときにJRA職員に伝えられ、そこで初めてジュールポレールが勝ったと分かった。丁寧な人柄で知られる幸らしいエピソードだが、ゴール前の攻防はまさに鬼気迫る叩き合いを制しての劇勝だった。

兄はサダムパテック、素質がついに開花

 レースは好スタートを切ったものの、行き脚がつかずに中団よりやや前のポジション。実際にはもっと前の位置での競馬を思い描いていたという幸は「理想よりも1列後ろになってしまいました」と振り返り、西園調教師も「思っていたよりも後ろになった」と不安を感じたという。「けれど、かえって馬場のいいところを進めてくれた。幸君の好騎乗です」。トレーナーの言葉通り、好位を取れないと見るや、幸は4番ゲートスタートながら内へと馬を潜り込ませず、道中は外めの位置から追走。午後から雨は降り始め、レースが近づくにつれて雨足が強くなっていった状況を考えれば、悪化し始めているインにこだわらず、多少の距離損はあってもまだ芝の状態が良い外を選択したのは好判断だった。

「特にどの馬を意識して乗ったということではありませんが、どちらかと言えば後ろの馬に意識を置きながら」と幸。残り200メートルを切ってもまだレッドアヴァンセが粘っていたために「少し焦りました(笑)」と端正な顔をほころばせたが、前門の虎を仕留め、後門の狼=武豊リスグラシューをギリギリ封じ込めることができたのも、本来の理想だった1列前の位置にいたレッドアヴァンセ、アエロリットらの動きにつられず、「意識を後ろ」に置いていたがためにドンピシャのタイミングで追い出すことができたからだろう。待望のビッグタイトル獲得に喜びを噛み締めながら、幸が言った。

「もともと能力の高い馬。歯車が少しかみ合えば大きいところを取れる馬だと思っていました。特にどこがというのではなく、今回はその歯車がうまく噛み合ったと思います」

 5つ上の兄は2012年のGIマイルチャンピオンシップを制したサダムパテック。血統的背景は文句なく、素質も「GI級だといつも思っていました」と西園調教師。これまでは脚元の不安から能力を持て余していたが、それでも昨年のヴィクトリアマイルでは3着に好走するなど素質の片鱗は見せていた。それから1年が経ち、5歳にしてついに眠れる大器が花開いたというわけだ。

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