大谷が童心に帰ったセーフコの左打席 イチロー「雰囲気がある」と高評価

丹羽政善

「米国に来て一番力んだ」大谷

「野球教室に来た小学生がすごく張り切って、いいところを見せようという気持ち」だった大谷は現地時間4日、イチローの目前で2安打を記録した 【写真は共同】

 4224――マリナーズのイチローがこれまでに重ねた本拠地セーフコ・フィールドでの打席数である。

 その左打席は、人によっては聖地ほどの重みを持ち、4日(現地時間)、初めてそこに足を踏み入れた大谷翔平(エンゼルス)は、そのことをしっかりと意識。こんな思いがよぎったそうだ。

「同じ左のバッターボックスに立てた」

 同時に、予期しない感情がこみ上げてきた。

「野球教室に来た小学生がすごく張り切って、いいところを見せようっていう、そういう気持ち」

 憧れのイチローと同じ空間にいる。そして、左打席を通じてつながった瞬間、思わず、「力んだ」という。

「(1打席目は)米国に来て一番、力んでスイングした。打席の中で緊張したりとか、必要な要素以外のものが出てきたりというのはあまりないタイプですけど」

 大谷はその打席で、ボール球を追いかけ、三振に終わっている。

 無理もないのかもしれない。

 子供の頃から、ずっとイチローに憧れてきた。そのイチローはセーフコ・フィールドで躍動し、いつかはあの舞台でと思いを馳せてきた。そのすべての条件が揃った時、大谷は、童心に返った。

「憧れている選手に見てもらいたいというか、いいところを見てほしいというのは、どの選手も思うんじゃないかなと思う。ずっと目標にしてがんばってきたところで、やっぱりこう、自分のいいところを出したなっていう気持ちはある」

相手投手も脱帽したレフトへの二塁打

 今も、イチローと話すときは、「緊張する」というのだから、4日の試合が彼にとってどんな意味を持ったのか、推して知るべし。

 ただ、2打席目にはもう、いつも大谷翔平に戻っていた。

 4回の2打席目は、0ボール2ストライクと追い込まれながらも、3球目のカットボールをセンターへはじき返した。5回の3打席目は、2ボール2ストライクからの5球目、投げた相手先発のマイク・リークが「悪くなかった」という外角低めいっぱいのチェンジアップを流し打つと、レフトオーバーの二塁打。

 翌日になってリークはその3打席目について、「もう少し外でも良かったかもしれない」と振り返ったが、「でもそうすると、見逃された場合、フルカウントになる。それは避けたかったから、やはり選択は間違っていなかった。あの球をあそこまで持っていった大谷の勝ちだ」と脱帽した。

 それをテレビで見ていたイチローも唸った。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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