大谷が童心に帰ったセーフコの左打席 イチロー「雰囲気がある」と高評価

丹羽政善

イチロー、適応能力に最大の賛辞

イチローが最大の賛辞を送った大谷の適応能力が見られた現地時間4日の第2打席。チェンジアップにタイミングが合わず追い込まれながらも、最後は甘いボールをセンターにはじき返した 【写真は共同】

 イチローは試合中、ダグアウトに入れない。よってテレビで試合を見るしかないが、リークに翻弄されているようで、最後はヒットを記録した大谷の2打席目をこう振り返っている。

「(すごいのは)対応能力。あの(マイク・)リークの球に全然合っていないように見えて、結局、最後の甘いところを仕留めるわけですから」

 あの打席は、初球のチェンジアップを空振りし、2球目のチェンジアップはファウルチップ。タイミングを外され、簡単に2ストライクと追い込まれたが、3球目はやや高めに浮いたカットボールを見逃さなかった。

 そうした適応能力。「なかなか持っていないですからね、人は」とイチローは言う。

「それは大きな才能ですよね。100マイル投げるとか、誰よりも飛ばすとか、そういうことよりも実は大事な能力というかね、そういうふうに見えますけど」

 さらにイチローは、こう大谷を評した。

「雰囲気あります、やっぱり。あるじゃないですか、なんかあるなって、そういう感じ。野球やっている人間だったら、感じるでしょうね」

 最大の賛辞に大谷は、「すごく光栄な事ですし、僕のことについて話してくれるだけで満足なので、うれしいなと思ってます」と恐縮したが、イチローはお世辞を言わない。大谷の能力は本物なのだろう。

大谷vs.イチローの対戦の実現は…

 そうなると返す返す残念なのは、2人の対決がこのシリーズ、いや、少なくとも今季は実現しないことか。

 3月7日、イチローはマリナーズ復帰会見で言った。

「まだ、翔平がプレーしているところを実際に見たこともないんですね。まず見てみたいというのがあって、世界一の才能といってもいい、ということを聞きますし、そんな選手と対戦することっていうのは、野球の醍醐味の一つだと思う。ですから、必ず実現させたい」

 今回、テレビを通してとはいえ、イチローは同じ空間で大谷のプレーを見た。しかし、実際の対戦に関しては、来年以降にあるという保証はない。となると、イチローが今回、ああいった形でロースターを外れるにしても、なぜマリナーズは待てなかったのか――ということになる。

 明日6日、大谷が先発することが決まった。

 あと4日だった……。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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