ザック、ハリルら代表監督から受けた影響 山口・霜田正浩監督インタビュー<後編>

飯尾篤史

ベルギーでの指導経験はすごく有意義だった

「42試合を戦い終えたあとに、どんな結果が出ているのか楽しみ」と霜田は語る 【(C)J.LEAGUE】

――世界を意識させる上で、選手たちにヨーロッパの試合映像を見せることもあるんですか?

 それはもう、毎日です。でも「これと同じプレーをしてくれ」とは言わない。「俺らが目指しているのは、こういうプレーだよね」「次の対戦相手に必要なのは、こういうプレーだよね」というプレーモデルの例として、海外の映像を見せています。

――どのチームの映像を?

 それを言うと、相手に分かっちゃうからねえ(笑)。うちと同じシステムを採っているチームの映像です……まあ、あえて1つ挙げるならリバプール。うちの3トップに「リバプールの3トップのまねをしろ」とは言わないけれど、「彼らはこうやって点を取っている。うちでもこういうシーンをもっと出そうよ」とか、「このタイミング、この判断、この勇気だよ」とか。そういうのを学んでほしい。「リバプールだからできるんだ」と言ってしまったら、身もふたもない。「リバプールが(マンチェスター・)シティ相手にやっていることを、俺たちは大宮アルディージャに対してやろうよ」と。

――では、霜田さんも毎晩のようにサッカー中継を見ているんですか?

 もう、ずっとです(笑)。単身赴任なので、時間とテレビは自分のものだから(笑)。

――昨年7月から11月まではベルギーのシント・トロイデンのコーチを務められて、セカンドチームの指導に当たっていました。その経験はどういうものでしたか?

 すごく有意義でしたね。セカンドチームだったけれど、みんなプロ選手。下は16歳から上は27、8歳まで。毎週、必ずリーグ戦があるなかで、「今日のミーティング、フィードバックはシモがやってくれ」と言われて、僕がビデオを編集して、つたない英語で説明したこともありました。最後のシュート練習だったり、ゲームのあとのポゼッション練習だったり、セッションを任せてもらえたこともあった。そのときは自分でトレーニングメニューを考えて、説明して、コーチングする。サッカー英語で、文法なんかめちゃくちゃなんだけど、伝わったという実感がすごく自信になりました。4カ月だったけれど、指導者として異国の地で仕事ができたことが、すごくプラスになったなと。

――引き出しの中身も貯まってきて、新たな刺激も受けて、そろそろ貯めてきたものを出したいな、というタイミングで、レノファとの出会いが。

 そうですね。もうインプットより、アウトプットする時期だろうな、と思っていたタイミングだったから、チャンスをくれたクラブには本当に感謝しています。

42試合を戦い終えたあとの結果が楽しみ

――ファジアーノ岡山の長澤徹監督や、サンフレッチェ広島の城福浩監督と、霜田さんも含め、同時期にFC東京にいた方々がみなさん、今シーズンは調子がいいですね。

 ねえ(笑)。しかも、みんな、偶然にも中国地方に集まっているからね。ある時期に同じエンブレムのもとで戦った仲間だから刺激を受けるし、うれしいです。城福さんとはプレシーズンマッチで対戦したし、徹は4年目だっけ? 2人とも監督としては大先輩だから、同じ土俵で戦えるのは本当にうれしいですね。

――最後に、今シーズンの霜田さんの思い描く目標を教えてください。

 今の順位はまったく気にしていなくて、次の試合に勝つことしか考えていないです。ここまで本当に良い準備、良い練習ができているので、これを42試合続けたい。この勢いは最後まで続かないだろうと思っている人もいるかもしれないけれど、僕としては3月も11月も、やることに変わりはない。シーズンの初めに、選手やスタッフはもちろん、職員や取締役の人たちにも、チームコンセプトやチームのプレーモデルを説明したんだけれど、そのとき、「普通の準備ではダメ。圧倒的な準備をする、他を圧倒するような準備をする」という話をしたんです。それができれば、何があっても乗り越えていけると信じています。だから、42試合を戦い終えたあとに、どんな結果が出ているのか、どのくらいチームと選手が成長しているのか、僕自身が楽しみにしています。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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