連載:指導者として

【戸田和幸連載(1)】慶大ソッカー部で指導を始めました 「言葉」を駆使し、選手と向き合う日々

戸田和幸

サッカーを「言語化」する仕事

「言葉」を駆使しサッカーを伝え、サッカーを創る事に挑戦しています 【宇都宮徹壱】

 解説者という職業についてこのコラムでは多くは語りませんが、「言語化」という作業をリアルタイムの試合の中でいかに的確なタイミングで、ふさわしい言葉を選びながら伝えていくかという事がこの仕事では求められます。

 両チームのゲームプラン・戦術的な狙い、各選手の役割とパフォーマンスについてバランスよく言及していく事になりますが、この複雑で難しいが美しいスポーツの素晴らしさを伝え広げていく上で解説者という仕事は非常に重要な役割を担っています。

「解説者」というサッカーを「言語化」する仕事については、書籍(5月末出版、題名未定)という形で皆さんに紹介させていただける事となりました。

 今までなかった視点・角度からサッカーについて語るものとなっていますので、ぜひ手に取っていただけたらと思います。

 話を戻します。
 解説業を選んだもう一つの理由は、解説者と同様に指導者には自分の「言葉」が必要だからです。

 サッカーを理解する、分析する、対象者が理解できるように伝える。
これらは選手としても必要な資質となりますが、解説者としても指導者としても表現の仕方に違いはあるにせよ、自分が見たものや頭の中に思い描いたものを対象者に理解させるという意味で絶対的に必要な資質となります。

 4年間解説者として自分自身の目と言葉に磨きをかけつつ、日本サッカー協会が進めているJFA公認指導者ライセンスの方も15年にA級、16年にS級ライセンスを受講し無事に終了しています。

 当たり前ですが、同じサッカーとはいえ「解説者」と「指導者」は求められる資質が違います。
 片方は目の前で行われているものを見聞きする人たちが理解できるように「言語化」する仕事であり、もう片方はそれ自体を「創り出す」ために言葉を駆使するという、似て非なるものです。

 解説者として、視聴者ができる限り正しく理解できるよう様々な言葉を駆使し。

 指導者として、サッカーそのものを創り出すために具体的なプレーモデルや役割に対する理解を選手に促し、お互いの信頼関係を構築するために言葉を駆使する事となります。

 私は「言葉」を駆使しサッカーを伝え、サッカーを創る事に挑戦しています。

 随分と前置きが長くなりましたが毎月配信させてもらうコラムですので、そもそもの話をしたうえで実際の指導についての話を展開していく事が読んでくださる方達の理解を促す事に役立つと考え、ここに至るまでの背景を伝えさせてもらいました。

Cチームの強化に全精力を傾ける日々

 さて、ここからは実際に慶應ソッカー部でどんな日々を送ってきているか紹介していきたいと思います。

 慶應ソッカー部にはA〜Dの4チームがあり、部員の数は160人ほど。
 私は上から3つ目のCチームを預かる事となり、既に2か月と少しの時間を選手達と過ごしてきています。

 慶應ソッカー部での指導に対し関心を持ってくれる方は多く、よく「なぜAではなくCチームなのか?」と質問されるのですが、慶應ソッカー部は基本的に同校OBが監督・コーチを務めるという伝統があり、現監督の冨田賢、コーチの浅海友峰も同校ソッカー部のOBです。

 慶應のサッカーというものを良く理解しているOB指導者がA・Bチームを指揮し、私はCチームを指導させてもらいながらソッカー部の持つ古き良き伝統に対し、時折クエスチョンを提示しながらCチームの強化に全精力を傾ける日々が続いています。

 次回からはいよいよ実際の指導について具体的な事例を挙げながら紹介していく事になります。
 初回の締めとして、初めて彼らのサッカーを見た時に私が強く感じた事を記して終わりたいと思います。

「サッカーというスポーツの解釈」、「ストラクチャー」と「主体性」。
 この3つが初めて彼らのサッカーを見た時に私が強く強く感じた事でした。
 それでは初回はこの辺で、読んでいただきありがとうございました。

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著者プロフィール

桐蔭学園高を卒業後、清水エスパルスに加入。2002年ワールドカップ日韓大会では守備的MFとして4試合にフル出場し、ベスト16進出に貢献。その後は国内の複数クラブ、イングランドの名門トッテナム、オランダのADOデンハーグなど海外でもプレー。13年限りで現役を引退。プロフェッショナルのカテゴリーで監督になる目標に向けて、18年からは慶應義塾大学ソッカー部のコーチに就任。また「解説者」というサッカーを「言語化」する仕事について、5月31日に洋泉社より初の著書『解説者の流儀』を出版

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