レバンドフスキはDFを見て逆を突く達人 日本守備陣との対決は「心理戦」になる
ファン・バステンを想起させる万能CF
W杯で日本が対戦するポーランド代表のエースにしてキャプテン 【Getty Images】
柔道家のようにパワーがあり、空手家のように足が高く上がる。バレーボール選手のようにジャンプする。パワー、スピード、テクニック、得点感覚が抜群の上に、アシストもできるし、守備力もある……何でもできるセンターFW(CF)と言える。
90年代に活躍し、3度もバロンドールを受賞した元オランダ代表のマルコ・ファン・バステンも典型的な万能CFだった。ファン・バステンもあらゆる形で得点し、チームプレーも巧みだった。ただ、オランダ人に言わせると彼は「テクニックの選手」だそうだ。ファン・バステンと同時期に活躍したルート・フリットも万能型だったが、フリットへの評価は「フィジカルの選手」である。
言われてみれば、ファン・バステンはあまりパワーがない。スピードと長いリーチ、体の使い方のうまさ、その長身からパワーもあるような印象だったが、シュート自体はあまり強くなかった。88年のユーロ(欧州選手権)決勝で決めた強烈なスーパーボレーは伝説だが、あれは空中にあるボールだったからだろう。
ファン・バステンの練習は何度か見たことがある。正直、そんなにテクニシャンとも思わなかった。「フィジカルの選手」であるはずのフリットの方が器用だった。ただ、試合になると確かにファン・バステンはうまいのだ。対敵で発揮されるテクニックだったからだろう。ボールと敵と自分の関係から、最適な場所にボールを置ける。
レバンドフスキも万能型でファン・バステンよりパワーもあるが、やはり「テクニックの選手」だと思う。
相手を出し抜く「小さな肩の動き」
香川真司とも一緒にプレーしたドルトムント時代にブレーク 【写真:アフロ】
184センチあるが俊敏でパワーもありテクニックが丁寧だった。ワンタッチゴールもドリブルシュートもできて、ありとあらゆる形から点が取れる。さらにポストプレーの確実さはドルトムントの縦に速い攻撃とゲーゲン・プレッシングの組み合わせを可能にしていた。
レバンドフスキはボールタッチが柔らかい。ボールを持ったときの姿勢がよく、上体のフェイントを使える。これはあまり目立たないのだが、少し肩を動かすだけでもDFはシュートの気配を察するので、足を出したり、逆に動きを止めたりする。特にシュートレンジでは効果的だ。優れたストライカーはだいたいこの肩のフェイントをうまく使う。ほんの小さな動きなので分かりにくいが、レバンドフスキはPKのときにも使っているので、それを見るとよく分かる。肩の動きも含めて1回キックフェイントを入れてGKの逆を突いている。