レバンドフスキはDFを見て逆を突く達人 日本守備陣との対決は「心理戦」になる

西部謙司

天性のスキルとたゆまぬ努力

努力のかいあって近年はプレースキッカーとしても高い評価を得る 【Getty Images】

 ワンタッチコントロールは抜群。グラウンダーでも空中にあるボールでも置きたい場所にボールを置ける。これは天性のものだろう。ファーストタッチでボールを静止できる精度があるので、敵の動きを見ることができる。視野に入らない背後の敵の動きも間接視野で捉える余裕がある。

 ただ、レバンドフスキは相当な努力家でもあるようだ。最近はFKからのゴールが増えている。リオネル・メッシもそうだが、以前はそれほどFKから得点しなかったのに、いつしかFKの名手になっていた。止まっているボールを蹴るのは簡単そうだけれども、その分、完成度が要求される。おそらく生まれつきのFKの名人は存在しない。努力なしにはその領域にはいけないはずなのだ。

 レバンドフスキが蹴る際の手順はいつも同じ。短い助走の途中で必ずツマ先立ちになるのが特徴だ。右足のツマ先で着地してカカトを接地させない。その伸び上がるような姿勢からキックの体勢に入る。なぜそうしているのかは分からないが、これがいわゆるルーティンなのだ。何度も蹴り込んだ結果の“ツマ先立ち”なのだろう。

 パワーもあるが、力任せのプレーはほとんどやらない。ボックス内のシュートは丁寧にコースを狙って決めたものが多い。得意のヘディングも競り合いの強さ、ジャンプの高さ、上体や首をひねる力はあるものの、シュート自体は丁寧にコースを狙ってボールをそこへ置くようにシュートしている。

 15年10月22日のボルフスブルク戦では、9分間で5ゴールをゲットした。どんな形でも点を取れるので、こういうことも起こりうるわけだ。ロシアW杯で、日本はこのレバンドフスキのいるポーランドとの対戦が決まっている。

レバンドフスキ対策のポイントは「心理戦」

バイエルンで絶好調。今季のブンデスリーガ得点王もほぼ確実だ 【Getty Images】

 レバンドフスキを封じることが日本の勝負ポイントになるだろう。ところが、それ自体が非常に困難でもある。

 第一にレバンドフスキへのボール供給を絶つことだが、パスの受け方がうまい上に、味方にスペースを使わせるのも巧みなので、レバンドフスキをマークしてもその分、他の選手をフリーにしてしまう危険がある。ボールを持てばもちろん厄介だが、持たなくても安全ではないから難しい。

 ポイントはレバンドフスキがテクニシャンだということかもしれない。

 つまり相手が見えていて、それを利用しようとするタイプだということ。だから慌てない方がいい。DFに何か動きが見えれば、必ずその逆を突いてくる。相手の逆を突こうとする選手は心理戦に長けている。動きが見えることもあるが、それ以前に相手がどう動こうとしているかを状況から予測できるのだ。

 その習性を利用して罠にはめる手もあるが、まずは極力動じないことかもしれない。元ブラジル代表のセンターバック(CB)だったオスカーは「CBは格で守るポジション」と言っていた。泰然自若として、何を考えているのかをレバンドフスキに悟らせない。日本のDFにその“格”があるか、レバンドフスキとの心理戦を制することができるか。90分に1回しかないチャンスでも冷静沈着に決められる世界有数のストライカーが相手だけに、ものすごく難しいミッションなのは間違いないが、これほどやりがいのあるストライカーもそういないはずだ。

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著者プロフィール

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『フットボール代表 プレースタイル図鑑』(カンゼン) 『Jリーグ新戦術レポート2022』(ELGOLAZO BOOKS)。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

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