バレー界のネクストヒロイン・中川美柚 憧れの東京五輪へ向け、成長を止めない

月刊バレーボール

「一番充実していた」東九州龍谷での最後の1年

高校3年時の1年間を中川は「一番充実していた」と振り返る 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

「センスはあった。けれども、自信がなかった」

 それが、東九州龍谷で指導した相原昇監督のかつての中川評だった。その分、下級生時からコートに送り出し、3年生時からはサーブレシーブにも積極的に入るよう促した。

「それまでは先輩たちにカバーしてもらっていたけれど、(高校3年目からはサーブレシーブを)やるんだ、と。全国大会になれば狙われるし、逆にそれが自分にとっての強化になるからいいんじゃないか、と彼女には言いました。サーブレシーブで崩れずに、自分から打っていく選手になってほしいな、と願ってね」(相原監督)

 高校時代の身長は183センチ。バスケットボールのリングをつかめるほどの跳躍力もあった。攻撃力は最大の持ち味だったが、高校3年生時の中川は守備力に磨きをかけた。そうして夏の高校総体(インターハイ)では、安定したサーブレシーブ力を発揮し、4年ぶりの優勝に貢献した。

「サーブレシーブにも入って、スパイクも打てる。リベロよりも体は大きいけれど、うまさがある。イメージは韓国代表のキム・ヨンギョン」。相原監督は、世界を代表する名プレーヤーの名前を引き合いに出し、中川へ期待を寄せていた。

 17年の夏に、中川は第19回世界ジュニア選手権大会(U−20)への出場を果たしている。トルコ代表との3位決定戦では、先発メンバーに名前を連ねた。
 
「メダルを懸けた試合ということでプレッシャーもありました。ですが、今ここでバレーボールができることがありがたいし、スタメンでプレーできることが本当に素晴らしいことだと思います。自分のできることをやるだけだ、と思ってコートに入りました」

 フルセットの激闘の末、全日本ジュニア女子チームは2大会ぶりの銅メダルを獲得。中川も要所で得点を重ねた。その後、インターハイを制し、秋の国民体育大会(国体)でも準優勝。高校生活も残りわずかとなったころ、中川はこう話していた。

「(高校3年時は)1、2年目とは違った1年間でした。3年間やってきた中で、一番充実しています」

積み重ねた先に、目指す日の丸がある

久光製薬に帯同してまもない3月には、Vリーグ制覇を味わった 【月刊バレーボール】

 高校卒業後に久光製薬に入団、そして全日本に選出。18年に入ってから中川が置かれた状況は、急展開そのものだ。自身も「とにかく今、ここ(全日本)にいさせてもらっていることが信じられない、そんな気持ちです」と話す。全日本には同じ東九州龍谷出身の長岡という偉大な「ミユ」もいるため、チーム内では「ユズ」の呼び名がつけられ、最年少として合宿を経験した。

「チームで一番若いので、とにかく一生懸命にひたすらやるんだ、と自分の中で決めていました。プレー面では先輩方に全然及びませんが、サーブレシーブもできて、スパイクも打てるのが自分にとっての理想です」

 とはいえ、まずはアンダーカテゴリーで経験を積むことになる、とは中田久美監督の言葉。17年度に全日本に初選出された黒後も、初年度は全日本ジュニアでの活動が主だった。中川は今年に入ってから、全日本ジュニア、U−23と、それぞれの候補・強化合宿に参加している。その全日本ジュニアでは、これまで年下の立場で参加していたのが、今度は年長者としてチームを引っ張っていく役目を課されており、「今までは上の代についていくばかりでしたが、自分が一番上の年齢になった。チームを勝たせる雰囲気を作るのも、自分の役目だと考えています」と気を引き締めた。

 今の中川にとって、20年の東京五輪は「憧れの舞台で、出たいという気持ちもある」ものだが、ハッキリとこうも口にする。
「今の時点では自分のプレーを見ても、まだまだ世界に通用しない部分がすごくあります。(東京五輪まで)あと2年あることをプラスに捉えて、もっともっと成長できるように頑張りたいです」

 自分の現在地を分かっているからこそ、今できることをやり遂げる。アンダーカテゴリーでも、ゆくゆくは立つであろうVリーグの舞台でも、彼女は成長を止めることはないだろう。積み重ねた先に、目指す日の丸がある。

(坂口功将/月刊バレーボール)

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著者プロフィール

1947年創刊。バレーボールの専門誌として、その黎明期から今日まで、日本のバレーボールを取り上げ、その報道内容は、全日本、Vリーグはもちろん、小・中・高・大学生、ママさんまで、多岐に渡る。

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