“大谷が抜けた”日本ハムの奮闘 若手の成長と競争原理で優勝争いへ
ローテ争いの中から上沢が台頭
スラッガー清宮の加入でレギュラー争いが激しさを増した日本ハム。22日終了時点で、ソフトバンクと並んで12球団トップタイのチーム本塁打を誇っている 【写真は共同】
大谷が抜けた投手陣にも、その競争原理は働いている。目立つのは高卒7年目の24歳、上沢直之。今季ここまで3試合で16回1/3を投げてわずか1失点。4月17日の埼玉西武戦では危険球退場のアクシデントはあったが、自身初の2ケタ勝利へ向けて好スタートを切っている。さらに16年の新人王・高梨裕稔、筆頭左腕として期待を受ける加藤貴之も今後に期待の持てる内容の投球を披露。そして新外国人のマルティネスが、ここまで4試合で2勝2敗、防御率1.74の安定感でローテの柱としての役割を担っている。ここに有原が完全復調すれば、“大谷後”のローテーションは、ほぼ固まったと言える。
チームを上昇させる精神的支柱
往時のそれは、稲葉篤紀、金子誠両氏であり、武田久氏の存在などだった。それを現チームに当てはめると、野手では間違いなくキャンプテンの中田翔がその役割を担うべきだろう。ここまで消化試合数と同数程度のスタメンパターンを組んでいるが、そんな中で唯一不動なのが、やはり「4番・中田」なのだ。4月22日のソフトバンク戦では6号本塁打を含めて2安打5打点の活躍で11対2の大勝に貢献。打線の中心にいる彼の成績や振る舞いは、そのままチーム全体に反映する。
一方、投手の中心は先発では有原になる。好不調の波があるが、能力的に最多勝を争える器であることに疑いはない。そして、特に経験がモノを言う中継ぎ陣では宮西尚生と開幕から離脱が続く鍵谷陽平が協力して若手を支える必要がある。それが浮き彫りになったのが、4月18日の西武戦、8回表まで8対0と大量リードしておきながら、そこから宮西以外の若手中継ぎ陣が火だるまになっての逆転負け。20日のソフトバンク戦で、1点リードの9回に登板した石川直也を、田中賢介、鶴岡慎也のベテランが丁寧に励ましたシーンがあったが、今後のさらなる上昇には「若手救援陣の自立と成長」が必須になる。
過去、07年に小笠原道大、12年にはダルビッシュ有(カブス)という柱が抜けた中で下馬評を覆して好成績を収めてきたのも事実。そして有望な選手を“攻め”のドラフトで獲得し、一定以上の試合数を経験させて1軍の主力へと育て上げ、その成熟期に合わせてしっかりと「優勝」という結果をもぎ取って来たのだ。
若手の中で誰が教訓を得て、次の段階へ進めるか――。「何か若い力がパーンってチームに与えてくれると、一気に大きなチームになる」。そう語る栗山英樹監督は今、実戦の中で彼らの力を見極めている真っ最中である。今後、開幕から日替わりのオーダー、スクランブルのブルペン陣が固定され始めた時、パ・リーグの覇権争いは、日本ハムにより予想外の展開が待っているのかもしれない。
(八幡淳/ベースボール・タイムズ)