“大谷が抜けた”日本ハムの奮闘 若手の成長と競争原理で優勝争いへ

ベースボール・タイムズ

しぶとく勝率5割をキープ

大谷ら主力が多く抜けて、今季の苦戦が予想されていた日本ハムだが、開幕1カ月で勝率5割をキープしている 【写真は共同】

 プロ野球開幕から約1カ月。大谷翔平(エンゼルス)という投打の大黒柱を手放したのに加え、正捕手・大野奨太(中日)、守護神・増井浩俊(オリックス)というチームの中心2人もFAで他球団へ移籍しながらも、19試合を戦って10勝9敗(22日終了時点)の3位。シーズン前に大半を占めたBクラス予想に反して奮闘を続けているのが、北海道日本ハムである。

 開幕カードこそ埼玉西武に本拠地で3連敗を喫したが、続く敵地での東北楽天戦から東京ドームでの千葉ロッテ戦にかけて5連勝を飾って体制を整え直すと、その後は連勝こそないが連敗も1度のみというしぶとい戦いを続けて勝率5割ラインをキープしている。

 成績を見ても“しぶとさ”が分かる。近藤健介こそ開幕からヒットを量産してリーグトップの打率3割7分9厘の数字を残しているが、3割打者は近藤ただ一人。西川遥輝が打率2割2分1厘と低迷するなど、その他の選手は打率2割台前半の数字が並び、チーム打率2割3分5厘はリーグ4位。

 投手陣も、エースとして期待される有原航平が右肩痛の影響で開幕時に不在で、チーム防御率4.05はリーグ5位と決して個々の状態がいい訳ではない。得失点差マイナス14(68得点82失点)が物語るように、負ける時は大差で派手に負けるが、きん差では勝負強さを見せ、ここまでの10勝のうち3点差以内が8試合、1点差も3試合と、きん差のゲームをモノにしている。

“次”への準備と“カンフル剤”清宮

 リーグ連覇を狙った昨季は5位に沈んだ。大谷をはじめ、前年の中心メンバーが春先から相次ぐケガで離脱。開幕ダッシュに失敗してから借金生活が常態化し、交流戦明けには早くも優勝が霞んだ。すると、ここから一気に育成へシフト。谷元圭介(中日)、メンドーサ、エスコバー(横浜DeNA)を次々と放出し、その代わりに上原健太、吉田侑樹、堀瑞輝、田中豊樹、石川直也ら、10代から20代前半の若手投手を積極起用。野手では大田泰示、松本剛、石井一成らがスタメンに名を連ね、最終盤には長打が魅力の横尾俊建、広い守備力が魅力の大型内野手・太田賢吾、次世代の正捕手候補・清水優心などにチャンスを与え、“次”への準備を進めた。2012年の優勝後にも糸井嘉男(阪神)、田中賢介が抜け、翌13年に最下位となったが、この時にチャンスを掴んで成長したのが、西川であり、中島卓也であり、そしてプロ1年目の大谷だった。優勝の翌年は、次の覇権のための礎と言える。

 そして、かつての大谷と同じカンフル剤として注入されたのが、清宮幸太郎だ。一挙手一投足、すべての注目を集める喧騒の中、周囲の選手たちにも火が付かない訳はない。春季キャンプでは前出の若手たちに加え、清宮と同じ左打者の平沼翔太、森山恵佑が猛アピール。当初はプロの投手と木製バットに戸惑い、3月には限局性腹膜炎で緊急入院して出遅れた清宮も、4月20日の2軍戦で1試合2本塁打を放って、ようやくながら“お目覚め”。22日にも2軍戦3号アーチを放つなど、ここに来て調子急上昇中だ。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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