山縣亮太、悔しさと成長の17年を経て 新シーズンは「しっかり戦って優勝を」
昨年、日本歴代2位タイとなる10秒00を打ち立てた山縣亮太にインタビュー 【写真:松尾/アフロスポーツ】
桐生が9秒台を記録した9月9日から約2週間後、24日の全日本実業団(大阪・ヤンマースタジアム長居)で日本歴代2位タイとなる10秒00(+0.2メートル)を打ち立てたのが山縣亮太(セイコー)だ。17年シーズンは右足首のケガの影響で、6月の日本選手権(大阪・ヤンマースタジアム長居)で6位となり、世界選手権への切符は逃した。それでも全日本実業団で自己ベストを更新し、日本短距離勢の中でしっかりと健在ぶりを示している。
今回は日本でのシーズンインを前に、山縣に今季の意気込みなどを聞いた。
冬は中盤の加速力をテーマに取り組んだ
オーストラリアで臨んだ今季初戦は10秒15。山縣自身は「走りの内容としては非常に良かった」と手応えを感じている 【写真は共同】
昨年もオーストラリアの試合に出場させていただき、その時は10秒0台で走って、上々の滑り出しでした。そこと比べてタイムという意味では、今年の方が悪い(10秒15、+1.7メートル)のですが、走りの内容としては非常に良かったという手応えを感じています。
――手応えはどんな部分で感じたのでしょうか?
中盤の加速力の部分ですね。昨年のレースとはまるっきり逆のパターンだったのですが、昨年はスタートで飛び出して、あとはその貯金をどこまでキープできるかという内容でした。それに対して今年は、スタートの横並びの中から抜け出していくような、加速で引き離せるようなレースができたと思っています。
――そのようなレース内容は、昨年から取り組んできたものですか?
そうですね。もちろん身体的な意味で強化した部分もあるのですが、一番は技術的な部分で取り組んできました。特に(10秒00をマークした)昨年9月24日の全日本実業団で得た感覚的な部分が大きいのですが、できるだけその体の使い方の感覚を忘れないようにすることがこの冬のテーマの1つでした。そういった部分で、オーストラリアでのレースはよくまとまったと感じています。
17年は「自分が成長するきっかけ」になったシーズン
昨シーズンは「(9秒台を)いつどこで誰が出してもおかしくない状況」だった。その中で自身は「今、自分がすべきことは何なのか?」をしっかり考えてトレーニングに臨んでいた 【写真は共同】
捉え方だとは思いますが、悔しい部分は大きいです。ただ、自分が成長する良いきっかけになった1年でもありました。ライバルが先に記録を出したということを含めて、非常に中身の濃い、充実した1年だったと思っています。
――桐生選手が9秒98の日本記録を打ち出したときはどんな感想を持ちましたか?
正直、悔しかったです。自宅で見ていたのですが、先に(9秒台を)出されてしまったという部分では、かなり喪失感は大きかったと。ただ、そこで自分の競技人生が終わるわけではないですし、気持ちを切り替えていく必要があるなと同時に思いました。2、3日は落ち込みましたが、その後はしっかり練習に励みました。
――その落ち込みはあったものの、桐生選手の記録更新から約2週間後の全日本実業団で自己ベストの10秒00をマークしたわけですが、そこまでどのように気持ちを持っていったのでしょうか?
桐生選手が記録を出したのは、9月上旬の日本インカレ(福井・福井運動公園陸上競技場)でしたが、僕が3月にケガをしてから、彼が9秒台を出すまでの半年間は、いつどこで誰が出してもおかしくない状況でした。そういう意味では、常に「誰かが出すかもしれない」という機が熟している感じもありましたし、そう思って練習していた部分はありました。
ただそのギリギリの状況で、「今、自分がすべきことは何なのか?」を考えていたので、自分の取り組みの“芯”というのは、その時期があったからこそ続けられたのかなと思います。
彼が9秒台を出したときは、自分も全日本実業団に向けて練習で追い込んでいた時期で、(6月の日本選手権後に)8月までしっかり体を作り直して、9月の試合に向けてスピードを上げてトレーニングをしていく流れでいました。やることは見えていたし、彼が記録を出そうが出すまいが、「今は自分がやるべきことを突き詰めていく」という気持ちで練習していました。