山縣亮太、悔しさと成長の17年を経て 新シーズンは「しっかり戦って優勝を」

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自分の殻を破るために他選手の映像を見た

壁に当たった時の脱出方法として、他選手の映像を多く見ることによって、自分の殻を破るきっかけをつかんだと話す 【写真:松尾/アフロスポーツ】

――全日本実業団に向けての練習の中で、最初に話されていた「中盤の加速」をテーマに置いていたのでしょうか?

 そうですね、ずっとそこが弱みだったので。ただ、そこが課題なのは分かっていたのですが、それをどう克服していくかという部分に関しては見えていない時期が長かったです。かなり試行錯誤しましたが、結果的にはそこ(全日本実業団のレース)で実を結んでくれたので非常に良かったです。

――模索を続けていき、全日本実業団のレースで答えが見えたと?

 正確に言うと、(レースの)1週間ぐらい前の練習で答えをつかみ始めました。逆に言うと、そこまでは手探り状態で……。もちろん、体を作るトレーニングもしているし、考えられる限りの技術的な修正もいろいろやっていたのですが、上手くいかない時期の方が長かったです。それが、1週間前に気付くことができました。

――気付くことができたきっかけは?

 いろいろな選手の動きを見たことです。自分がスランプ、壁に当たった時の脱出方法として、自分の殻に閉じこもっているうちはその考えや技術から抜け出せないので、そういう時はほかの選手の映像を見たり、ほかの人が書いた本を読んだりして、自分を変えるきっかけを探しました。それが1つ功を奏したのかなと思います。

――特に参考になった選手はいましたか?

 海外選手を見ることが多いですね。重点的に見た選手はいますが、誰か一人というよりはいろいろな選手の映像を見て、一流選手の動きの共通項を探すことが多かったです。

――どんな映像を主に見たのでしょうか?

 普段の練習の映像がいろいろあるので、それを見ていました。それこそウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)の走りだったり、いろいろな選手のトレーニングやレースの映像を見たりしました。

――その技術的な部分を自分に落としこむ際は、コーチなどと話しながら消化していく感じですか?

 この部分はかなり自分の主観に頼っている部分が大きいので、どちらかというと自分で咀嚼(そしゃく)して、考えていく感じですね。自分の頭の整理のために、コーチに伝えることでアウトプットしたりはするのですが、「こういう動きをしたら、こういう動作になる」という部分は、捉える人によって自分が言った本当のニュアンスと同じ認識とはならないと思っているので。

――共通認識はあるけど、まったく同じ感覚を共有することはできないと?

 そうですね。ここは自分でセルフコーチングできないといけない部分だと強く思っています。

セイコーゴールデングランプリで「1位」を取りたい

今年は福島千里(右から2番目)や競泳の坂井聖人(左)、トランポリンの棟朝銀河(左から2番目)と「チームセイコー」として活躍を誓う 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

――この冬のシーズンは、同じセイコー所属となった女子短距離の福島千里選手とも一緒に練習に取り組んでいるとのことですが、福島選手を近くで見ていて、新しく取り組んだことはありますか?

 具体的な取り組みはあまりないですが、出場する試合のスケジュールが一緒になるので、特に冬の間は一緒に練習させてもらう機会が多かったです。その中で福島選手の、単純なところで言うと「頑張っている姿勢」を見て、やはり自分も頑張ろうと思いました。
 練習というのは、分かってはいるけどしんどい部分がありますし、そこでもう一踏ん張りやらなきゃいけないと思ったり、逆に潔く練習を止める一歩引く勇気を持つことだったりという部分は、福島選手の姿から刺激を受けています。

 福島選手がすごいと思うところは、昨年まで1年間、プロとして取り組んでこられたという意識の高さです。ホンワカした方ですけど、競技のこととなると、熱い芯を持っています。そういう部分を見て自分を振り返ったときに、「これでいいのか。福島さんだったらこうするだろうな」と考えたりしているので、その辺りで参考になっています。

――山縣選手は大学時代から個人で練習に取り組んでこられたことも多いと思います。最近は「チームセイコー」として、チームとしてやることで気付ける部分も出てきたということですね?

 そうですね。1人よりも人数がいる方が、気付けることもたくさんあるなと実感しています。

――それでは最後に、これから日本での新シーズンを迎えますが、今シーズンの目標と意気込みをお願いします。

 今年はアジア大会(8月=インドネシア・ジャカルタ)をはじめとする大きな大会で、しっかり戦って優勝したいという思いがあります。
 織田記念国際(4月28日、29日=広島・エディオンスタジアム広島)だったり、セイコーゴールデングランプリ(5月20日=大阪・ヤンマースタジアム長居)だったり、もし出場できるのであればダイヤモンドリーグにも出たいと思っています。どの試合も大事ですので、1試合1試合、内容を良くしていきたいです。

 特にセイコーゴールデングランプリは自分が所属している会社の冠大会ですし、海外から強い選手も来ます。しかも1発勝負で結果を出さないといけない特殊なレースでもあります。五輪や世界選手権を考えたときに、1本目からしっかりパフォーマンスを高めていかないと次のラウンドに進めないので、そういった意味でも世界を見据えた大事な試合だと思っています。そこで特に結果を出すことを意識して臨みたいです。

――セイコーゴールデングランプリには昨年の世界選手権金メダリストのジャスティン・ガトリン選手(米国)の参戦も決まっていますね。

 海外のトップ選手や国内のライバルも集まります。正直、「日本人1位」というのでは格好良くないので、しっかり「1位」を取りたいです。

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