【全日本プロレス】三冠王者・宮原、前年覇者・石川が敗戦 波乱続出でチャンピオンカーニバル開幕

高木裕美

10年ぶりV目指す諏訪魔はゼウスに敗れる

10年ぶりのVを目指す諏訪魔だからゼウスに敗戦。苦しいスタートとなった 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 全日本プロレスの春の祭典「2018 チャンピオン・カーニバル(CC)」が7日、宮城・仙台サンプラザホールで開幕し、初戦から波乱が続出した。今年は16選手が2ブロックに分かれて総当りリーグ戦で激突。4.30東京・後楽園ホールで優勝決定戦が行われる。この日は公式戦4試合が行われたが、三冠ヘビー級王者や前年度優勝者が次々と敗れる展開に客席も騒然。また、初出場組の奮闘も光った。

 メインイベントでは、Bブロック公式戦で諏訪魔がゼウスに敗れ黒星発進。10年ぶりの優勝を目指す諏訪魔が、手負いのゼウスに痛恨の1敗を喫した。

 諏訪魔はこれまで三冠ヘビー級王座を6度(歴代最多記録)戴冠している、全日本の看板エース。CCは08年にデビューからわずか3年5カ月の史上最短記録で優勝を果たしているが、12年、15年は準優勝止まりと、10年間も春の栄冠から遠ざかっている。

 一方、ゼウスは16年のCCで関本大介に敗れ準優勝。16年秋の「王道トーナメント」でも、諏訪魔に負けて準優勝となっている。全日本ではボディガーとのコンビで世界タッグ王座を4度戴冠しているが、3.25さいたまでベルトを失ったばかりである。

 ゼウスは左足の太ももとヒザをテーピングとサポーターでガチガチに固めた状態でリングイン。当然、諏訪魔が見逃すはずはなく、左ヒザへの低空ドロップキック、ストンピング、鉄柵やロープを使ったヒザ攻めなどで集中砲火を浴びせると、さらにダブルチョップ、起き上がりこぼしラリアット、逆片エビ固め、串刺しラリアット、スロイダー。ゼウスもスパインバスターからブレーンバスター3連発、ラリアットを繰り出すも、諏訪魔に雪崩式ブレーンバスターで投げ捨てられて悶絶。アンクルホールドの応酬から諏訪魔がバックドロップ2発、ラリアットとたたみかけるも、ラストライドはゼウスが切り返してチョークスラム。ラリアットの相打ちで互いのライフを削り合うと、ゼウスがショートレンジラリアットからのジャックハマーで3カウントを奪取。仙台のファンとワッショイ三唱で大会を締めた。

 肉弾戦必至のAブロックに対し、クセ者ぞろいのBブロックでは、一瞬のスキが命取り。徹底的にゼウスのヒザを攻め立て、ほぼ8割方勝利を手中に収めておきながらの痛恨の1敗は、諏訪魔の心に重くのしかかっているはず。初戦での黒星からメンタルを立て直し、10年ぶりVへと復調を遂げられるか。

鷹木が宮原に勝利で「どっちが最高だった?」

ドラゲー鷹木が三冠王者・宮原を開幕戦で破る大金星 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 セミファイナルのAブロック公式戦では、三冠ヘビー級王者・宮原健斗がDRAGON GATEからの刺客・鷹木信悟に敗れる衝撃的な結末となった。

 宮原はこれまで3度、三冠王座を戴冠しており、16年&17年は第55代王者としてCCに臨むも、いずれも決勝進出すらできず。今年は3.25さいたまでジョー・ドーリングから王座を奪取し、「三度目の正直」で、今年こそ、史上6人目となる三冠王者としてのCC優勝を公言していた。

 対する鷹木は、所属団体のDRAGON GATEの至宝であるオープン・ザ・ドリームゲート王座を史上最多タイ記録となる4度戴冠。また、現在はオープン・ザ・お笑いゲートのチャンピオンでもある。“邪道”大仁田厚の信者としても知られ、ルチャリブレ色の濃いDRAGON GATEの中では異色の存在として、他団体でも積極的に活動を行っている。

 両者は14年12月10日に東京・後楽園ホールで行われた、小橋建太プロデュース興行「Fortune Dream」でタッグで対戦(ジョー・ドーリング&鷹木組vs.火野裕士&宮原組)。今回が初シングルとなる。

 取り戻したばかりの三冠王座を仙台のファンに“ご開帳”し、ノリノリで登場した宮原は、開始早々、ビッグブーツ、フェンスへのフェースクラッシャーを繰り出すと、鷹木も宮原の右足を鉄柵に引っ掛けてイスで殴打。さらにエプロンへのデスバレーボム、エルボーの乱れ打ちなど、まったく遠慮のないファイトを展開。エルボー合戦から宮原がジャーマンで投げれば、鷹木もスライディングラリアット。宮原のヘッドバットには鷹木が張り手で応戦。さらに鷹木はパンピングボンバー、MADE IN JAPANを繰り出すと、宮原の後頭部へのブラックアウト、二段式ジャーマンスープレックスをカウント2でクリアし、ラストファルコンリーでフィニッシュ。3カウントがたたかれた瞬間、場内はどよめきと悲鳴に包まれた。

 マイクを握った鷹木は「最高の三冠王者・宮原にオレが勝っちまった。全日本プロレスファンのおまえらにとっては最低かもしれないが、オレにとっては最高。今の試合見たら分かるだろ。どっちが最高だった? 満場一致で鷹木信悟だ。おまえら楽しみにしとけよ」と、完全に宮原を意識したマイクアピールで挑発。これまで2年連続、三冠王者でありながら外敵にCC優勝をさらわれ続けた宮原にとって、傷口に塩を塗りこまれるような「最低」なスタートに、無言で控室へと直行した。

CC復帰の秋山が見事な逆転劇

秋山は見事な切り替えしで逆転勝利。ノア丸藤戦まで優勝戦線に残れるか 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 一度は「卒業」を宣言しながら、2年ぶりのCC参戦を決意した秋山準は、Bブロック公式戦でディラン・ジェイムスに快勝。アジアタッグ王者が世界タッグ王者を破る、わずか3分57秒での逆転Vに観客もあっけに取られた。

 全日本の社長として、フロント業や若手の育成にも努めている秋山だが、選手としても2度の三冠王座戴冠、13年のCC優勝など、25年のキャリアの中で、ほぼ第一線で活躍。現在は永田裕志と共にアジアタッグ王座を保持するほか、GAORA TV王者でもある。

 対するジェイムスは、過去にジェームス・ライディーンの名でZERO1マットで活躍し、世界ヘビー級王座を戴冠したほか、13年の「火祭り」にも優勝。現在は崔と共に世界タッグ王座を保持している。

 開始早々、秋山が場外戦で鉄柵に振ると、ジェイムスも反撃。リングに戻し、秋山がエクスプロイダー2連発からヒザ蹴り、フロントネックロックを仕掛けると、ジェイムスがアバランシュホールド、ラリアット。さらにチョークスラムを狙ったところを秋山が鮮やかに切り返し、丸め込んで3カウントを奪い取った。

 4分に満たない試合終了のゴングに、観客も当のジェイムスも呆然。秋山にとっては、終盤戦の3.25後楽園で実現する因縁の丸藤正道戦を「雌雄を決する戦いにする」ためにも、そこまで優勝争いに踏み留まらなければいけないという、絶対的な使命がある。48歳・秋山が、30歳のジェイムスを手玉に取ったように、今後も順調に勝ち星を積み重ねていけるか。

3年連続外敵優勝へ火野が快勝

石川と火野の肉弾戦は火野に軍配。CC前年覇者が開幕戦で敗れる波乱となった 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 昨年度優勝者の石川修司はAブロック公式戦で火野裕士とド迫力の肉弾戦を展開。だが、ファッキンボムに撃沈し、史上4人目の連覇達成に黄色信号が灯った。

 石川は03年にDDTプロレスリングでデビューし、その後、さまざまな団体で活躍。全日本には15年から参戦し、昨年はCC初参加で初優勝。三冠王座、世界タッグ王座も獲得し、一躍全日本マットの中心人物となった。

 対する火野は03年にKAIENTAI−DOJOでデビュー。団体の至宝であるCHAMPION OF STRONGEST−K王座を4度戴冠するも15年に退団。現在は田中将斗と共にZERO1のNWAインターコンチネンタルタッグ王座を保持している。

 両者は序盤からチャックルでぶつかり合うと、石川が鉄柵に振ってフットスタンプ。しかし、火野も串刺しラリアット、火野スープレックス、セントーンを繰り出すと、石川も破壊力抜群の雪崩式ブレーンバスター、ランニングニー、ファイヤーサンダー。ラリアットの相打ちでも互いに一歩も引かず、ヒザをついてのエルボー合戦に。ここで火野は後ろ手に組んで、あえて石川のエルボーを受け切り、倒されても何度も立ち上がって向かっていくと、ひるんだスキにパワーボムを発射。石川はこれをカウント1で返すも、ラリアットからのファッキンボムに力尽きた。

 外敵同士という顔合わせとなったが、理屈抜きで圧倒される両者のぶつかり合いに客席も熱狂。15年には「王道トーナメント」でベスト4という戦績を残している火野が、3年連続の外敵優勝へ好発進した一方、故ジャイアント馬場さん、スタン・ハンセン、鈴木みのるに並ぶ、史上4人目のCC連覇を目指す石川にとっては、大きな1敗となった。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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