【全日本プロレス】三冠王者・宮原、前年覇者・石川が敗戦 波乱続出でチャンピオンカーニバル開幕

高木裕美

菊地と究極龍が夢のシングル戦 「新・悪役商会」結成も!?

デビュー30周年の菊地(左)がウルティモ・ドラゴンと夢のシングルマッチ 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 地元・宮城県仙台市出身の菊地毅が、デビュー30周年記念試合で“究極龍”ウルティモ・ドラゴンと一騎打ち。ウルティモも認める「20年前なら夢のカード」で互いのテクニックを味わい尽くすと、試合後、ウルティモが「新・悪役商会」の結成を呼びかけた。

 現在53歳の菊地は、1987年に全日本に入門し、翌88年2月にデビュー。小橋建太(健太)とは入門が1カ月違い(小橋の方が遅い)の同期であり、同日にデビューした。90年代には故・三沢光晴さん、川田利明、小橋らと共に超世代軍を結成。そのガムシャラなファイトと豪快なやられっぷりで人気を博し、「火の玉小僧」の異名を取った。世界ジュニアヘビー級王座やアジアタッグ王座を獲得するなど、トップ戦線でも活躍したが、90年代後半からは悪役商会でのコミカル路線にシフト。00年にはプロレスリング・ノアに移籍するも、団体内ではタイトルを獲得できず、09年に退団。その後はインディー団体などにも参戦し、顔芸を駆使した“怪奇派レスラー”的なポジションで、強烈なインパクトを残している。

 菊地の印象的な試合といえば、93年2.28東京・日本武道館大会での渕正信戦を挙げる人は多いのではないだろうか。“赤鬼”渕正信のバックドロップ10連発に沈んだ壮絶な一戦は、わずか10分程度ながら、強烈なインパクトを残した。その後、菊地は96年7.24武道館で8度目の同王座挑戦にして、ついに悲願の初戴冠。因縁の相手・渕からの勝利に、ファンも歓喜に包まれた。

 この日、記念試合の相手を務めたウルティモも、87年デビューの51歳とほぼ同世代。メキシコでキャリアをスタートし、ユニバーサルプロレスリング、WAR、米WCWと実績を残しており、特に96年の10.11WAR大阪では、ザ・グレート・サスケを破ってジュニア8冠(新日本プロレスのIWGPジュニアヘビー級王座も含む、各プロレス団体の8タイトル統一王座)を獲得。両者は共に96年の下半期にビッグタイトルを手に入れており、もし、21年半前にこの一戦が実現していれば、まさに歴史的な事件となっていただろう。

 トレードマークである日の丸タイツを着用し、試合前には秋山社長から記念の花束を贈呈された菊地だが、リング上では破天荒っぷりが爆発。ウルティモの攻撃に「効かない」とアピールしてみせたり、場外へのトペ・スイシーダをウルティモに受けてもらえるよう説得し、ロープの近くで待ち構えさせるも、プランチャを試して失敗し、自爆。見ている者を不安にさせるが、5分過ぎにはブレーンバスター、ゼロ戦キック、スパイダージャーマンといった得意技を連発し、こだわりのダイビングヘッドバットを繰り出すも、これはかわされて不発。直後にウルティモがラ・マヒストラルで3カウントを奪い取るも、試合後は互いに向かい合って礼をかわし、和田京平レフェリーも2人の手を挙げてたたえた。

 マイクを握ったウルティモは「菊地さん、おめでとうございます。20年前だったら夢のカードですよ。でも、お互い全盛期ではないけれど、満足のいく試合でした。どうもありがとうございました」と、時を超えて実現した夢対決に感謝。その上で「菊地さん、オレ、渕さんで新・悪役商会結成しますか。ただし、仙台限定で」と呼びかけると、仙台のファンからは爆笑&歓声。これに対し、菊地は「まだまだ35周年、40周年、一生やり続ける。これからも頑張りますので、よろしくお願いします」と、生涯現役を誓った。

野村が大森からフォール奪いCC公式戦に弾み

この日公式戦がなかった野村は、大森からフォールを奪いCCへ弾みをつけた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 今年のCCにエントリーされた7選手が参加した8人タッグ戦では、ジョー・ドーリング&野村直矢&ヨシタツ&KAI組vs.大森隆男&崔領二&ボディガー&吉江豊組という顔合わせが実現。若き精鋭・野村が、3.25さいたまで復帰したばかりの大森からピンフォール勝ちをもぎ取り、CCへと弾みをつけた。

 CC前哨戦とばかりに各選手がアピール合戦を繰り広げる中、唯一、CCにエントリーされなかった大森が、ドーリングにニールキック、野村にフルネルソンバスターを炸裂。野村もこれに呼応し、激しいエルボー合戦を繰り広げると、スピアーで大森を倒し、そのまま3カウントを奪った。

 過去に世界タッグ(パートナーはジェイク・リー)、アジアタッグ(パートナーは青柳優馬)を獲得しながら、いずれもパートナーの負傷で王座返上となっている野村にとって、このCCはシングルプレーヤーとしての正念場。豪華メンバーの中でも、その意気込みが十分に伝わる1勝であった。

仙台出身・蝦名和紀が地元でデビュー

宮城県仙台市出身の27歳、蝦名和紀が地元でデビュー。ジュニア王者・青木を相手に奮闘も逆エビ固めで敗れた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 宮城県仙台市出身の27歳、蝦名和紀が地元でデビュー。世界ジュニアヘビー級王者の青木篤志を相手に奮闘し、夢を実現させるための第一歩を踏み出した。

 蝦名は仙台二高、早稲田大を卒業し、15年に全日本に入門するも練習についていけず、わずか1カ月で退団。しかし、夢をあきらめきれず、昨年7月に再入門し、9カ月でデビューへとこぎつけた。

 177センチ、95キロの体躯を赤いタイツに包んだ蝦名は、和田京平レフェリーが裁く中、ドロップキック、ストンピング、ミサイルキックを繰り出すと、青木のボディースラム3連発に対抗し、お返しのボディースラム。しかし、ミサイルキックをかわされ、逆エビ固めでとらえられると、さらにショルダースルー、ボディースラムから再度逆エビ固めで捕獲され、万事休す。和田レフェリーが試合を止め、黒星を喫するも、地元ファンからは大きな拍手が送られた。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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