無謀は承知でW杯の結果を予想してみた 3月の親善試合を踏まえた優勝国は?

沢田啓明

両エースの得点でウルグアイが連勝

中国で開催された国際トーナメントを制したウルグアイ 【Getty Images】

 中堅国では、ウルグアイがルイス・スアレスとエディンソン・カバーニの両エースの得点でチェコとウェールズに連勝。ベルギーは、ロメル・ルカク、エデン・アザール、ケビン・デ・ブライネらが力の差を見せつけてサウジアラビアに完勝した。ポルトガルはクリスティアーノ・ロナウドの2得点でエジプトを下したが、W杯出場を逃したオランダに0−3で敗れた。

 グループリーグで日本と対戦するポーランドはナイジェリアの身体能力の高さに苦しんで敗戦を喫したが、“仮想日本”の韓国にはロベルト・レバンドフスキの得点などで3−2で勝利。イングランドは、オランダを下したがイタリアとはドロー。ギャレス・サウスゲイト監督が「3−4−1−2」の布陣でポゼッション・スタイルを植え付けつつある。

 16年のユーロ(欧州選手権)ではラウンド16でイングランドを下し、激戦の欧州予選を勝ち抜いたアイスランドは、メキシコとペルーに完敗。守備のミスが多く、力不足を感じさせた。

ロシア大会は北中米、アフリカ、アジアは厳しい?

W杯初出場となるパナマは、スイスに大敗するなど力不足は否めない 【Getty Images】

 北中米勢は、14年のブラジル大会で出場4カ国中メキシコ、コスタリカ、米国の3カ国がグループリーグを突破して大躍進を果たした。しかし、南米開催で気候、風土が似ているアドバンテージがあり、多くのサポーターが応援に駆け付けたこともあって、どう考えても出来過ぎだった。前回大会ではグループリーグでウルグアイとイタリアを倒し、準々決勝まで勝ち進んで旋風を巻き起こしたコスタリカは、中堅国以下に対して1勝1敗と平凡な出来。初出場のパナマは、スイスに0−6と大敗するなど力不足は否めない。

 アフリカ勢は、グループリーグで日本と対戦するセネガルがW杯予選敗退のウズベキスタン、ボスニア・ヘルツェゴビナと引き分け。チュニジアがイランとコスタリカに、モロッコはセルビアとウズベキスタンに連勝したが、各国とも対戦相手が中堅国以下ばかりで、各国協会のマッチメーキングの拙さは明らか。どの国も傑出した個の力はあれど、協会のサポート態勢を含めた総合力はなかなか高まらない。前回大会ではブラジルの高温多湿の気候を味方に付け、出場5カ国中2カ国(アルジェリアとナイジェリア)がグループリーグを突破したが、夏でも涼しいロシアでは相対的に不利で、苦戦するのではないか。

 アジア勢は、日本がマリと引き分け、ウクライナには敗戦。韓国はポーランドに加えてW杯に出場しない北アイルランドにも敗れた。前回大会は出場4カ国がいずれもグループ最下位。FIFAがW杯の成績によって大陸別の出場枠を増減させないのが災いしてか、常連国はW杯に出場するだけで満足している感がある。

優勝予想はブラジル!

沢田氏の予想。ブラジルが決勝でドイツを破って6度目の優勝を果たすとみる 【スポーツナビ】

 これらの情報を踏まえ、グループリーグの成績、さらには無謀を承知の上で決勝トーナメント以降の結果予想も試みた。

 ブラジル大会で圧倒的な強さを示した南米勢は今大会は地の利がないが、南米予選と3月末の強化試合を見るとレベルはむしろ上がっていると考える。欧州勢は、相対的な実力は横ばいと考えているが、地の利がある分、成績は多少上がるだろう。前回大会ではグループリーグでスペイン、イングランド、ポルトガルといった強国が敗退したが、再び同じようなことが起きるとは考えにくい。

 北中米勢については前回大会が出来過ぎだったと考えていたし、大躍進したコスタリカ、健闘したメキシコは伸び悩んでいると判断した。アフリカ勢、アジア勢は平均レベルが上がっておらず、大陸内で突出して強い国も見当たらない。

 結果的に、南米、欧州偏重の保守的な予想になってしまった。実際にはおそらくいくつかのサプライズがあるのだろうが、それは真っ当な予想を外すからサプライズなのであり、この2大陸以外の国に関しては強い根拠をもって躍進を予想できる国が見当たらなかったということだ。

 優勝候補は、ブラジル、ドイツ、スペイン、フランスか。いずれも個人能力の高い選手が各ポジションにそろっている。組織力も高く、戦術的なベースも既にできており、どこが勝ってもおかしくない。

 あえて本命を予想すると、破壊的な攻撃力を備え、守備力がおそらく歴代最強で、チッチ監督が選手たちを掌握しているブラジルか。決勝での対戦を予想しているドイツには前大会準決勝で1−7という歴史的大敗を喫したが、通算対戦成績は5勝2分け3敗と勝ち越している。

 ドイツは、ヨアヒム・レーブ監督が06年から指揮を執っており、戦術的な継続性があり、勝負強さでは世界一だが、突出したスーパースターがいない。ブラジルには前回大会で大勝した印象が強烈だが、戦術面、体格で優位にある反面、技術面では少なからぬハンデがある。

 スペインも攻守両面でハイレベルで、特に攻撃面は世界で1度、欧州で2度頂点を極めた08〜12年の黄金時代に匹敵するのではないか。ただ、ワールドクラスのセンターFWがいないのが弱点で、34歳を迎えたイニエスタが大会後半に蓄積疲労からパフォーマンスが落ちるのではないかという懸念がある。 

 フランスは、W杯を制した98年大会以降では最強だろう。準決勝での対戦が予想されるブラジルには98年大会の決勝で倒してから一時は相性が良かったが、直近は2連敗。チームとしての完成度で及ばないのではないか。

 スペインとフランスの3位決定戦なら、実力はほぼ互角。ただ、チームとしてのまとまりで勝り、通算対戦成績も16勝7分け12敗と勝ち越しているスペインに分があるのではないか。

W杯が予想通りになることは絶対にない

 ダークホースは、コロンビア、ウルグアイ、ベルギー、アルゼンチンあたりか。

 コロンビアはW杯での最高成績が前回のベスト8という新参者だが、攻撃陣はタレントがそろい、爆発力がある。

 ウルグアイは世界的ストライカーが2人おり、主将のCBディエゴ・ゴディンが軸となる守備も堅い。人口350万人足らずの小国ゆえ選手層が薄いのが泣きどころだが、伝統の力と根性で超大国に挑む。

 ベルギーは欧州ビッグクラブで活躍するタレントが目白押しで、この大会で最も魅力的なチームの1つだろう。16年のユーロ準々決勝でウェールズに大逆転負けを喫したような勝負弱さを克服できるか。

 アルゼンチンは伝統的に堅守だが、現在の守備力は史上最低レベル。今後2カ月で守備を再建し、エースのメッシが超人的な働きをしないと苦しい。とはいえ、伝統の力と勝負強さは侮れない。

 外れたときの言い訳をするわけではない、と言えばうそになるが、W杯が予想通りになることは絶対にない。必ずサプライズが起こり、各国、悲喜こもごもの結果となる。だからこそサッカーは世界中の人々を熱狂させるのだ、と言っておこう。

2/2ページ

著者プロフィール

1955年山口県生まれ。上智大学外国語学部仏語学科卒。3年間の会社勤めの後、サハラ砂漠の天然ガス・パイプライン敷設現場で仏語通訳に従事。その資金で1986年W杯メキシコ大会を現地観戦し、人生観が変わる。「日々、フットボールを呼吸し、咀嚼したい」と考え、同年末、ブラジル・サンパウロへ。フットボール・ジャーナリストとして日本の専門誌、新聞などへ寄稿。著書に「マラカナンの悲劇」(新潮社)、「情熱のブラジルサッカー」(平凡社新書)などがある。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント