左腕王国DeNAで期待の右腕が開花間近 飯塚悟史「全力で腕を振るだけ」
インコースを突くことに怖さはない
──阪神戦とのオープン戦は文句のつけようのない内容でした。
阪神には練習試合(2月11日、宜野座)でも投げていて、3回で3失点。同じ相手だったのでミスは繰り返さないという気持ちでした。僕の置かれているのは、開幕1軍、開幕ローテを争うという状況です。今までに経験したことのない立場での登板だったので強い気持ちで臨んだ試合でした。
──練習試合で3失点した試合と比べて、どこが良かったのでしょうか。
真っすぐ、変化球ともにカウント球、ボールにする球をしっかり投げ切ることができた点です。
──右打者へのスライダーが効果的だった印象です。
そうですね。ストライクゾーン、ボールゾーンへ意図したコースへ投げられましたし、右打者の外に加えて左打者への外にもカット気味にストライクゾーンに決まってくれたので投球の幅を広げることができましたね。自信になりました。
──昨年までの勝負球であるフォークと、このスライダーが投球の軸となる?
はい。昨年はフォークに頼りがちな面があったので、スライダーがカウント球、空振りを取れる球になれば打者は絞りづらくなると思います。
──右打者へのインコースの制球も素晴らしかったです。
打者の右左にかかわらず、インコースを突くことに“怖さ”は感じていません。阪神戦ではしっかり攻められたので投球に余裕が出ました。でも、ボールが先行する場面があり、5回86球を投げたので、長いイニングを投げるためにも球数を減らしていくことが課題ですね。
──今春のキャンプで特に意識して取り組んだことは何ですか。
クイックです。昨年まで走者を背負ってクイックで投げたときに球威が落ちる傾向にあったので、その修正に重点を置きました。オープン戦ではセットでも球速が変わらなかったので手応えは感じています。
三浦大輔さんのような投手は憧れ
1年目は手術の影響もあり、リハビリに時間を費やしました。2年目はプロの試合で投げること、プロの打者を相手に「どうやったらアウトが取れるか」を考えながら投げていました。その中で一つのアウトを取ることの難しさをすごく感じられました。当たり前ですが、高校とは別世界。2年目まではとても1軍デビューを考えられるレベルではなかったです。
──3年目の昨年、初勝利を飾る一方で勝ち星は「1勝」どまり。1軍で勝つことの難しさを感じているようでした。
初勝利する過程で投球テンポについて学ぶことが多かったです。投手のリズムが良ければ野手の攻撃につながります。自分の球数が多いときは、0点に抑えていても味方はなかなか得点できないことが多かったんです。昨年、初勝利した中日戦(8月30日、ナゴヤドーム)は、ポンポンとアウトが取れ、リズムを作っていけたので結果的に勝ちが舞い込んだのかなと。
──勝てなかった時期に、コーチや先輩からどんなアドバイスがありましたか。
昨年は1軍に帯同するときは今永(昇太)さん、浜口(遥大)さんと一緒に移動していましたので、そのときにいろいろ助言をいただきました。「野手が気持ちよく打席に立てるテンポを投手が意識する。でも、投げ急いではダメ。時間をかけるべき場面は焦らないこと」と言っていただきました。ほかには「試合の主導権はボールを握っている投手にある。勝ちは自分でつかみにいく」などです。なるほどな、と思える言葉が多かったです。
──自分はどんなタイプの投手だと思いますか。
僕は150キロのスピードボールを投げるわけではないので、コントロールが生命線です。両サイドにしっかりと投げ切れる投手でなければならないと思っています。ボールが先行するとリズムがつかめなくなるので、制球力が投球のベースとなります。真っすぐをインコースのボール球で速く見せたりするような投球術で勝負していきたいです。
──2016年限りで引退された三浦大輔さんのような投球が理想ですか。
三浦さんのような投手になっていきたいですね。2年間一緒にプレーさせてもらって、憧れはあります。
──飯塚投手の場合、真っすぐも変化球もほとんどが140キロ前後。球種によってあまり速度差がないというのも特徴のように感じます。
打者からすれば、「真っすぐが来た!」と打ちにいって、わずかに曲がったりしたらイヤでしょうからそれが武器になるときもありますし、逆に弱点となるときもあります。緩急をつけられるボールがもう一つ、例えばカーブをもっと機能させていくことも課題だと思っています。
──投球における気持ちの面ではどうですか。
僕はあまり気持ちを前面に出すタイプではないので、マウンドではほとんど動揺したりしません。打者が誰だとか、あまり気にせずに淡々と投げられることは強みだと思っています。
──確かに試合を外から見ているとマウンド上で表情がまったく変わりませんね。
もちろん僕なりに感じることや、思うことはいろいろありますが、極力平静を保つように心掛けています。マウンドでは打者の顔をほとんど見ずに、「この打者は……」という先入観を消すようにしています。投げる前の駆け引きの段階で、勝負をつけたくないからです。