平昌パラは村岡桃佳の大会だった 目の当たりにした覚醒の瞬間

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 日本のパラリンピック史をひもとく機会があったら、2018年の平昌パラリンピックにはこう記されるのではないか。

 村岡桃佳の大会だった、と。

 大会最終日の18日に行われたアルペンスキー女子回転・座位で、村岡桃佳(早稲田大)は2位に入り、銀メダルを手にした。村岡はこれまでに出場した4種目(滑降、スーパー大回転、複合、大回転)でいずれも表彰台に立っており、日本パラアルペンスキー史上初の全種目メダル獲得。一度の冬季大会で5個のメダル獲得は、日本勢全体における新記録となった。

自身初の表彰台から金メダルへ

大会最終日のアルペンスキー回転・座位で銀メダルを獲得した村岡桃佳。今大会では金1、銀2、銅2と、5つのメダルを獲得した 【写真は共同】

 村岡は今回が2度目のパラ出場。その快進撃は開会式翌日の10日、滑降から始まった。

 滑降は時速100キロに迫るスピードで駆け下りる種目で、さらにこの日は「結構バンピーな(でこぼこな)」コース。転倒者が続く展開に「私自身、何度コースからいなくなると思ったか」と恐怖の中のレースを強いられるも、攻めの気持ちと自分のベストの滑りをすることを心に誓い、銀メダルを勝ち取った。自身初の表彰台入りは、今大会の日本勢メダル第1号でもあった。

 続くスーパー大回転(11日)、複合(13日)で、村岡はともに銅メダルを獲得。そして、14日の大回転を迎える。

 2本の合計タイムで競われるこの種目、1本目は持ち味とする攻めの滑りが前面に出て、全体トップの1分13秒47をマーク。過去、1本目で1位だと2本目で他の選手に抜かれることが多かったが、「2本目で抜かれるのは絶対に嫌だった」と自らを奮い立たせ、2本目も同2位の1分13秒06でまとめた。結果、金メダルをものにし、“金・銀・銅コンプリート”を達成。21歳での金メダルは日本選手団の冬季パラ最年少記録だった。

「苦手」の回転で銀メダル締め

「回転は苦手」と話す村岡だが、銀メダルをつかみ取った 【写真は共同】

 中3日が空けた18日、村岡はラスト5種目めの回転に臨んだ。回転は旗門数が最も多く、技術力が試される種目。選手は旗なしのポールをなぎ倒しながら滑走していく。

 村岡はもともと「回転は苦手」と話していたが、「ワンターンを丁寧に、自分のできる限りはしよう」と決意し、5つ目のメダルを狙いにいった。

 1番滑走として挑んだ1本目、その心掛けが効いたか、全体2位の57秒22で折り返す。村岡は「結構いい滑りだ」と手応えを得ていた。トップのアナレナ・フォルスター(ドイツ)とは1秒86差。攻めるポイントや板の使い方によりよく滑れる点を見つけ、自分の中で「まだいけるぞ」と、逆転の金メダルも視野に入れていた。

 しかし、そのシナリオは上手くいかなかった。2本目の前半から中盤に差し掛かるあたりで、村岡はバランスを崩して転倒。振り幅の多いコース設定に苦戦し、ターンがわずかに遅れたことと、板を踏み込み過ぎたことが原因だった。

「そのあとは何も考えていなくて、ただただゴールを目指して滑っていました。滑り出した瞬間に何かが吹っ切れていた」

 このコメントのとおり、転倒後はすぐに立て直し、全体3位の1分03秒97でフィニッシュ。2本合計で2分01秒19とし、銀メダルをものにした。今大会の5種目すべてで表彰台に立ったのは村岡のみ。持ち前の安定感が世界屈指であることを証明してみせた。

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